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【コラム・ひとこと】文化で農村を元気に2013年7月24日

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【金右衛門】

 昭和30年代、若者が農村を離れ「東京へ行っちっち」と歌謡曲にもなった。その傾向は今でも続いている。佐渡島の高校新卒業生は約600人。島に残る若者は10%程度か。ほとんどの人は進学か就職のため島を離れ、卒業して帰島する若者は限られる。少子高齢化の先進地域を行く。65歳以上の高齢化率は35%を超えている。
 しかし、その真逆を行った人がいる。東京から佐渡へ。プロの篠笛奏者の狩野泰一氏(50歳)だ。

 去る7月7日、東京四ツ谷駅近くのスクワール麹町ホールで「佐渡金銀山を世界遺産へ講演会」の応援として佐渡在住の牧野さんが登場、トークと篠笛の演奏で観客を魅了した。 東京生まれの音楽好きの少年だった。ジャズ、ポップスからクラシックまで音楽なら何でも好きだった。一橋大学を卒業し、アメリカ留学中に佐渡から来た和太鼓集団「鼓動」に出会う。
 西洋音楽に浸かっていた自分が日本の太鼓の音に衝撃を受けた。アメリカ人観客もこの和太鼓の演奏にスタンディングオベーション(起立して拍手)で応えた。若い青年の気持ちが変わった。一流大学から大企業へのエスカレーター人生を振りきり、親の反対も押し切って、佐渡の田舎にある和太鼓集団「鼓動」の研修生になった。 10年してプロの篠笛奏者として独立。奥さんも子どもも佐渡の田舎に住む。毎朝誰もいない森の中をジョギングする。ふと脇道を見ると雪割草の花が咲いている。立ち止まって一輪の花に見入ったらその背後に雪割草が群生していた。
 簡単な竹笛も自分で手づくり。鶯の鳴き声をまねて吹くと鶯のメスが寄ってくるという。都会の小学生たちを毎年自宅に招き、森林へ連れて行く。アリの軍団を見てキャーキャー騒ぐ。夜空を20分も見上げれば流れ星が見られる。子どもたちは自然が好きだ。
 同年代が売れてスターになり、自分は出遅れたとあせったこともあるがひっそりと誰にも知られないで山の麓で美しく咲く雪割草もある。何時か誰か見つけてくれる。そう思い作曲と演奏を続けていた。離島農村に住むハンデイを抱えながら彼の演奏活動は今や世界を駆け巡っている。「地球が好き、佐渡が好き」の著書がある。過疎地の活性化には文化での貢献も役立つ。(金右衛門)

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