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【コラム・キサクな老話】巻竜に思う生活の知恵2013年9月6日

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【一般社団法人・農協協会会長 佐藤喜作】

 農家にとって最大の鬼門と言えるのが「二百十日」で、今年は台風15号が列島を襲うかと心配したが、たち消えでホッとする暇もなく、2日には千葉県と埼玉県に竜巻が発生し120棟の住宅破壊と67人が負傷してしまった。完全な電気生活には3万軒の停電で大変な打撃を受けてしまった。

 近年は自然災害のオンパレードで油断のならない世紀になった。
戦後この二百十日対策で、秋田県では稲の早播き、早植え、早刈りの“三早”栽培が台風被害を避けるために奨励され、その名残が今も続き、除草対策等に問題を抱えている。
 竜巻といえば、わが地域では秋の彼岸頃を中心によく発生したものである。北西に広がる日本海の沖合いに「竜下がった」と言い、黒い龍のような柱が海面と雲に繋がり、海岸に近づいて上陸する。それが1本であったり3~4本であったりする。だから竜巻は海で生まれるものと思っていたが、今回は陸地で発生し、しかも強大である。
 彼岸の頃は稲刈りの最盛期で多忙な時期である。秋の天候に恵まれないことが東北の泣き所で、稲の乾燥は湿田で田面に東立てが主体であった(穂発芽する事がある)のを明治の中頃から乾田にし「ハサ」掛けや「棒クエ」に稲束を掛けて乾燥し、それまでの腐れ米と言われた汚名を返上した。内陸部はハサがけ、海岸部は海風が強いのでクエ1本に6束(1束10把)を掛けてある。
 海から上陸した竜巻はこのクエ掛けした「ニオ」を直撃する。クエを田面に立てても、風まわりが悪く乾燥が鈍る。最善が水路に沿った畦に立てたもの、次が中畦に立てたものである。これらが竜巻で飛ばされ水路に入ったり、田に飛散したりする。そして隣家の稲束と混じって見分けがつかなくなり、よく揉めごとになるが、1本50把であるから按分する事も出来た。
 さて問題は建物類である。海岸に沿って建物が建っているが、塩風は鉄を侵蝕するので、可能な限り、釘類は使用しない。そして土台も建物も低くして、風対策をしていたし、多くは屋根板を杉皮で覆い、それを石で押さえた石上げ屋根であった。もちろん旦那衆の家は、太い大黒柱に重厚な梁をめぐらし、屋根は瓦か萱ぶき屋根もあったが、萱屋根は大風などの時は筵とロープで押さえねばならなかった。
 そんな事を思い出し、この度の家屋被害を聞くにつけ、昔は自然に備えた生活の知恵の凝縮された時代であったナーと感心する今回の事件であった。

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