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【コラム・キサクな老話】稲刈りと農離れ2013年9月26日

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【一般社団法人・農協協会会長 佐藤喜作】

 大雪と春の低温、かと思えば衣類どころか皮(皮膚)まで脱ぎたくなる馬鹿暑さ、赤道が日本に来たのかと錯覚するほどの暑さ。そしてスポット豪雨の土石流、片照り(晴れた日ばかり続くこと)、長雨、旱魃と竜巻など異変気象で秋が心配だった。畑は散々であるが、どうにか水田は平年作の御宣託。ところが早場米は値下がりしている。稲作農家は値上がりよりも安定米価で、平年作以上であるのが最大の望みであり、楽しみであったものだ。

 彼岸が近付くと農事組合の刈試し(坪刈)は年中行事で、毎年の記録と比較し、早くも来年の作業管理に備えたものだ。現在これを継承している地域は皆無であろう。稲の手刈り時代は早稲、中、晩生を栽培し、労働の分散を図った。
 一枚の田圃でも、入り水口と尻水口や水の流れで登熱が違う。色付きでもう良いだろうと鎌を入れる。刈り取り時に、豊作年は刈束の頭が重く、刈った束を持つ左手がぐらりと横に倒される。今年は良いぞと頬(ほお)が崩れる。ところが、立ち毛では色も手ごろと見えたのに刈ってみるとまだ青く感じるもので、天気が良ければ稲刈りを伸ばして、少しでも増収を望んだものだ。
 米どころ東北、特に日本海側の秋の天候は長雨が続くことが多く、天高く馬肥える候となる日は数えるほどしかなく、稲刈りはピッチを上げねばならなかった。お盆すぎには概ね穂も出揃い、蜘蛛(くも)が葉を三角にまいて巣を作り、畦草を刈り、用排水路の掃除と泥上げして杭を畦に立て、稲刈り準備である。
 稲刈り鎌は鋸鎌(のこがま)。普通鎌は茎が滑って危ないからである。一束3~4株を一手でつかみ、田面に置き、再度刈ってちがえて置き、藁(わら)すべか、稲3~4本で束ねる、これを10束ごとに集め、一本の杭に60把を運び、十字交互に掛けて乾燥する。数日で杭返しで、上下を交換して仕上げる。
 その頃には蝗(いなご)か飛び交い、上は赤とんぼだらけになる。好天で田面が乾いていれば、仕事もはかどるが、濡れていたり、田が柔らかったりすると、とやたらに手間を食う。家中が田園での作業になる。最近問題のカメムシなどの被害は見たことがなかった。
 しかし今は、この穫り入れまでの苦労の結果の最高の収穫の喜びを感じる機会を失った。機械刈りのコンバインは今年の作の良し悪しを教えてくれないし、身体での実感は無く、カントリーから一枚の伝票で稲作のフイナーレである。これでは当然、農の楽しさは失われ現金収入の多過だけになってしまう。
 だから管理も田一枚ごとの管理も疎かになり、今年の管理の良し悪しが来年に生かされず、諦めてしまうのである。そして私の米ではない一律の平均米になってしまう。これが農離れの元凶であろう。
 こうなると、外米が幾らでも入る余地ができるわけで、価格でまた圧迫されてしまうであろう、身土不二を思うとき、差別化をTPP問題と併せて検討する時期になったと思うがナー。

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