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【コラム・目明き千人】"聖域"はどこに行ったか2013年9月26日

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【原田 康】

 安倍総理はオバマさんとの首脳会談で「TPPでは聖域なき関税撤廃は前提ではない」ことが明確となった、聖域は守るとの約束が出来たとしてTPPへの交渉参加を決めた。 従ってTPPの農業分野の評価の基準は聖域が守られたか、であり極めて簡単明瞭である。さらに、交渉は各国の主席交渉官だけが交渉のテーブルに付き、交渉の途中経過は一切外部には出さないという方式である。このような交渉方式を承知で参加をし、主席交渉官を任命したのは安倍総理であるからどのような結果が出るかおおよその予測は出来るが、ハッキリしているのはすべての責任は安倍総理にあるということである。

 日本からブルネイの交渉の会場へは政府のスタッフの他に業界、団体から大勢行っているが、交渉の場はもとより意見さえも入れられない状況で、なぜ現地に大勢がいるのかも首をかしげる。妥結の内容が業界にとってプラスであれば応援の成果があったとなるし、マイナスであれば出来るだけの運動をしたというアリバイとなる。
 各国の利害が複雑に絡む貿易のルールづくりに農業という分野を他の産業とセットで交渉をすること自体が間違っている。多くの分野をセットで議論をすれば弱い分野が妥協を強いられることになる。農業は、土地、気候の自然条件の上に成り立っており、技術が進歩をしても各国の置かれた自然条件を変えることはできない。農場の規模や企業的な経営方法、先端技術を入れるなどの改善の努力をしても自然条件を変えることはできない。土地、気候が不利な条件におかれた国が、自国の農業と食糧を守るために国境措置で対抗するのは当然であるが、貿易の自由化のために関税などわかりやすい数字の一覧表を作るとここを叩きやすい。
 アベノミクスの第3の矢、成長政策の中で農業の体質強化策が出されている。これを国際競争力を持った農業というキャッチフレーズと合わせて議論をすると聖域の論点がボケて農業という遅れた産業を6次産業化、輸出のできる先端的産業に改革をする、というマスコミ受けをする問題にすり変えられる。
 TPP参加は国益を守るという大義名分である。この場合の国益とはマスコミを抱き込むことが出来、世論を有利にリードのできる産業と政府与党の利益である。よくあることだが、交渉の結果を先読みして落としどころを探るようなことはしてはならない。

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