人事2024 左バナー 
JA全農人事情報
左カラム_病害虫情報2021
新聞購読申込 230901
左カラム_コラム_正義派の農政論_pc
左カラム_コラム_米マーケット情報_pc
左カラム_コラム_地方の眼力_pc
左カラム_コラム_食料・農業問題 本質と裏側
左カラム_コラム_昔の農村・今の世の中_pc
左カラム_コラム_花づくり_pc
左カラム_コラム_グローバルとローカル_pc
左カラム_コラム_TPPから見える風景_pc
左カラム_コラム_ムラの角から_pc
ヘッダー:FMC221007SP
FMCセンターPC:ベネビア®OD
日本曹達 231012 SP

1俵2200円の米がやってくる Dさんへの回答2013年11月1日

一覧へ

【森島 賢】

 本欄の9月30日の論説にたいして、Dさんから本紙編集部あてにコメントをいただいた。まずはじめに、コメントをいただいたことに感謝したい。それとともに、Dさんの日頃の反TPP活動に深く敬意を表したい。
 コメントの主な内容は、「ベトナム米は、関税が撤廃された場合、現地価格1764円+輸送費=2200円で日本で販売されることはあり得ない」というものである。
 本稿では、この論点について、筆者の考えを述べたい。Dさんに指摘されたように、前稿は舌足らずだったかもしれない。

 「2200円で販売されることはあり得ない」というが、では何円で販売されるのか。Dさんの回答は、9676円近くの価格だ、という。
 では、何故9676円か。それは、国産米の平均コスト1万6127円の4割減だという。この4割削減という政府の目標については、Dさんも疑問を呈しているので、この点は論点にしない。
 問題は、なぜ2200円の米が9676円で売れるか、という点にある。差額の7476円は、どうなるか、という点にある。
 この超過利潤は、長期的にみた競争市場のもとでは、限りなくゼロに近づく、というのが筆者の考えである。つまり2200円の米は2200円以上では売れない、との考えである。

 Dさんは、日本の米市場では、まず国産米の価格が決まり、その価格に応じて輸入米の価格は商社などが、販売価格×規程の手数料率で決める、という。
 もしも、そうだとすれば、商社は独占禁止法を犯すことになる。違法な談合や入札妨害の罪に問われる。だが、実際には手数料率の規程はない。
 Dさんが言いたかったことは、そのことではなく、商社などが、品質などを考慮して、国産米と競争できる範囲内でなるべく高い価格で売る、ということだろう。
 これは、短期的な視点である。短期的には、供給量は限られているから、市場は供給独占の状態にあって、だから、価格は供給側の主導権で決められる。つまり、独占による超過利潤が得られる状況にある。
 しかし、問題は短期の問題ではない。関税をゼロにしたばあい、長期的にみて、どんな影響があるか、の問題である。

 はじめに、短期的にみてみよう。
 当初は、超過利潤、つまり2200円で仕入れて、9676円で売る、つまり差額の7476円を儲けることができるだろう。このボロ儲けは誰のものになるか。
 それは、日本向けの輸出米を確保した商社の先見の明と、それにともなうリスクを負ったことに対する市場からの報奨金である。だが、市場はそれほど太っ腹ではない。
 この報奨金は長くは続かない。追随者がでてきて報奨金の分け前を奪うからである。追随者がでてきて供給量を増やす。その結果、価格は下がり、その分だけ超過利潤は少なくなる。
 価格は、超過利潤がゼロになり、正常利潤、つまり、社会的平均的な利潤だけになるまで下がる。いまのばあい、その価格が2200円である。これが「利潤率平準化の法則」である。

 つぎに、長期的にみてみよう。
 米のばあい、超過利潤が得られるからといって、すぐに供給量を増やすことはできない。米は1年で1度しか作れないから、供給量を増やすには、最低1年かかる。通常は数年かかる。その間は超過利潤が得られる。だが、数年後には、超過利潤はなくなる。つまり、価格は2200円になる。
 ちなみに、第2次大戦後の緑の革命で、優良品種を生み出してから、実際に農村に普及するまでには、約10年かかった。どの国でも、農業者は、いつもこうした旨い話にだまされた、という長くて苦い歴史を記憶から消せない。
 輸出国の農村へ行って、日本向けの米を作れば、どんどん売れるから増産するように、と言われても、眉に唾をつける。実際に増産するまでには、数年かかるだろう。
 その数年の間、安い米の輸入量は、それほど多くは増えないし、輸入米価格が国産米価格と比べて、それほど安く売られることもない。だからといって、関税をゼロにしもいい、というわけではない。その後、輸入米価格が大幅に安くなり、大量に輸入されて、日本の米は壊滅する、というのが筆者の論説である。

 問題は、短期の視点ではなく、長期の視点でみるべきだろう。日本の米生産が数年間だけ続けられればいい、のではなく、十年も百年も続けられねばならない。
 短期的には、市場は供給独占の状態で、超過利潤が得られるが、長期的にみれば、超過利潤を得ようとして商社などが、大量に輸入するようになる。新しく米輸入を始める商社もでてくるだろう。そこでは激しい競争が始まる。輸出国の農村でも日本米の増産が始まる。市場は競争状態に入る。激しい競争はTPPの哲学でもある。
 激しい競争がつづき、超過利潤がゼロになるまでには数年間かかるだろう。つまり、輸入米の価格が2200円になるまでには数年間かかるだろう。そして、数年後には2200円になるのである。その結果、日本の米は壊滅し、農村が崩壊する。それでいいのか、それが問題である。


9月30日付 TPPで1俵2200円の米がやってくる


(前回 新浪ローソン社長の減反廃止論は先祖返り

(前々回 TPPをアジアの社会思想は受け入れない

(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)

重要な記事

ヤンマーSP

最新の記事

クミアイ化学右カラムSP

みどり戦略

Z-GIS 右正方形2 SP 230630

注目のテーマ

注目のテーマ

JA共済連:SP

JA人事

JAバンク:SP

注目のタグ

topへ戻る