米価下落の兆し(増補改訂版)2014年1月9日
自民党の農水族の重鎮が、「新しい米政策で、米価下落を誘引することは全く考えていない」と語ったという。
そのように、2日の日本農業新聞が、第1面のトップで報じた。決意の表明なのだろう。
しかし、来年から減反の奨励金を半分に減らすのだから、減反が順守されず、主食米の供給が増え、米価下落の誘因になるのは確かなことである。誘引しないための保証を、どのような具体的な制度として組み立てるか、を示さなければ、世間を惑わす無責任な発言というしかない。
上の図は、農水省の資料で、最近5年間の、米業者どうしの取引価格の推移をみたものである。それぞれが新米価格である。
9月から新米価格になるが、その価格は、前月の昨年産と比べて1256円安くなった。1万6127円から1万4871円に大幅に下がったのである。翌月の10月は、さらに119円下がって1万4752円になった。11月は115円続落して1万4637円になった。
新しい米政策が誘因になって、米価が下がったのだろう。今後も重大な関心をもって、米価の動きを注視していこう。
◇
いまの米価下落は、需要が急に減ったからではない。8月から9月にかけて需要が急に減るとは考えにくい。毎年、古米と新米の切り替えのときに、米価は大きく変化する。それは、古米と新米との価格差ではない。上がることもあるし、下がることもある。
今年は、図のように下がった。業者が米価は先行き下がる、とみているからである。だから在庫量を減らそうと考える。つまり、実需の減少ではなく、仮需の減退による米価下落だろう。先行き米価が下がる兆しだろう。
◇
では、なぜ米価が先行き下がるとみるのか。その誘因は、言うまでもなく、来年からの減反奨励金の半減である。その結果、反当たりで7500円収入が減る。昨年の反当たりの収入は補助金込みで13万円だったから、5.8%減ることになる。収入を昨年並みに維持するには、5.8%の増反をして増産するしかない。
全国の農家がそのように考えれば、今年の主食米の供給量は791万トンだから、その5.8%の46万トン増える。
◇
政府は、減反をやめて、その代わりに飼料米を増やす、といっている。どれくらい増やすのか。
先日の国会で、政府は来年は飼料米を8万トン増やす、といっている。飼料米の潜在需要は450万トンある、と大風呂敷を広げながら、僅か8万トンしか増やさない、といっている。それでは、増産分の46万トンには、とても追いつかない。
◇
このように、いまの米価下落は、減反奨励金を半減する結果を先取りし、供給量の過剰と、供給先がない結果を先取りしたものだろう。
与党の重鎮が、新しい米政策で米価下落を誘引しない、というのなら、政府は、そのための政策を具体的に示さねばならない。飼料米の振興をはかるというのなら、8万トン増やす、などという矮小な政策ではなく、抜本的な振興策を構築して、早急に示さねばならない。
そして、何よりも肝心なことは、政府が減反に責任を持ち続け、奨励金を半減するのではなく、全額を支払い続けることである。そうして、米価下落を防ぐ岩盤を崩さないことである。
※この記事は「米価下落の兆し(2013.12.09)」を増補改訂した。
(前回 農村の底力を見せつけよう)
(前々回 食糧安保軽視、現場無視の来年度予算)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日