【コラム・キサクな老話】暖かい藁布団2014年1月16日
待ちに待った正月はあっという間に過ぎてしまう。正月には自家用の甘酒やどぶろく(税務署を恐れて甘酒とした)を日中でも飲めたその楽しみは終わった。七草が終わると仕事が始まる。何といっても藁仕事である。雪に閉ざされる当時は、多くの農家は作業小屋を持っていた。その年の農業や生活に使用する道具の製作である。
俵編み、桟俵(さんだわら)、荷縄綯い(になわない)、草履、足中(あしなか)、藁沓、馬沓、雪踏み俵、かます、堆肥かます、筵(むしろ)、俵編みのみご縄、俵に使う機械縄、鈎縄、束子(たわし)の代用のもだら、箒代用のなで、藁手袋、井戸汲み縄、藁鞄など数えきれないほど道具をつくらねばならない。
朝起きるとまず藁打ちである。10把、20把も打つともう汗だくになり、朝飯も美味い。稲作は米の収穫だけが目的ではなく、藁製品が欠かせないから、それに適合する草丈の長い品種の栽培も忘れてはならない。藁は不思議に柔らかく打つほど、縄にすると強靭になる。
さて問題は、この製作法をどう身に付けるかで、仲間あるいは老農と一緒に仲間の作業小屋に藁を抱えて集まり、若者はその技を伝授(親からの伝授は少なかった)してもらう。毎年のことなので忘れてしまい、皆で思い出すことが多い。四方山話から昨年の反省と新年の農業の夢を語り、極めて大事な塾でもあった。そしてたまにはアミダを引き、出し合いで小豆汁を食べて楽しむ。籤(くじ)で負けた人は店に黒砂糖買いに、もう一人は出し合った自家用小豆を煮て、寒い吹雪の音を聞きながらフーフー食べる美味しさは格別である。
こうした姿を失った第一は、米の俵出荷が麻袋に、数年で紙袋になり、藁仕事は廃れるのみか、貴重な俵代の収入源を失って出稼ぎが冬場の稼ぎ場になった。今日の工業界の基礎をつくり、資本を蓄積、都市の構築があの低賃金の出稼者がなかったらどんな形になっていただろうか。今では年中出稼ぎが、家をたたむ人が後と絶たない状況で限界集落になる。
さて肝心の藁布団だが、秋の脱穀調整が終わったころ、主婦はせっせと藁すぐりを始める。稲の茎に付いている葉鞘をとり、冬の寒さに対する藁布団づくりである。戦後は木綿生地も手に入らず、スフのふすま袋を縫いあわせてそこにこの葉鞘(くず)をたっぷり入れて、その上に綿敷布団を載せ、シーツをかけて寝るのだが、あの柔らかでもない堅くもないふわふわ感は、今のマットレス等では到底及ばず、その暖かさも抜群で、数日すると藁布団は体形に合った窪みができ、自分の巣に入った感じで、本当に熟睡、安眠できたことが忘れられぬ思いとなっている。
しかも寝巻きなどなく、パンツだけの丸裸で寒くてがちがち震えながら布団に滑り込む。その冷たさ、寒さも数分でポカポカになり、眠りに入ることができる。稲があれば生きて行けるのだったナー。
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