地方衰退、首都圏隆盛でいいのか2014年2月17日
各県の間の人口移動の資料が、総務庁から発表された。
この資料で、首都圏への人口の集中の様相が明らかになった。首都圏へ全国の3分の1の人口が集中する勢いである。それだけ地方の人口が減少する。それでいいのか。
人口の増減は、そこに住む人が多くなったり、少なくなったりする、というだけではない。そこに住む人は、労働者であり、消費者である。物の供給力の強さであり、市場の大きさである。そして、平和国家である日本以外の多くの国にとっては、兵力の大きさであり、軍事力の強さである。だから、日本では5年ごとの全国の人口調査を国勢調査と言いつがれている。
こんどの資料で、首都圏の勢力の隆盛と、地方の勢力の衰退が明らかになったのである。
総務庁の「住民基本台帳人口移動報告(2013年)」によれば、他の都道府県(以下、県と省略)へ移り住んだ人の数は、230万1895人だった。
総人口の1.8%だから、僅かな割合ともみえるが、そうではない。住所の移動は、その人の生活全体の劇的な変化である。ご近所との強い絆を断ち切り、一生の間に何度もない重大な決断をした結果である。230万1895人の1人ひとりに人生のドラマがあっただろう。
この貴重な資料を使って、県勢の変化をみてみよう。
◇
47県の間の相互の移動人数だから、47×47=2209個という膨大な数字がある。この数字が、人口の県間分布を変換し、県勢を変換しようとしているのである。
こうした膨大な数字による人口変換の特徴を、初めて抽出したのは、神谷慶治先生である。その方法を使って考えてみよう。
下の表が、その結果である。
(表をクリックすると大きな画像が表示されます)
表の中で究極値とあるのは、この変換を無限回くり返したばあいの分布である。つまり、この人口変換が目ざしている究極の人口分布である。数学的には、変換マトリックスの最大固有値に対応した固有ベクトルである。それを現状と比較した。
この人口移動の特徴を図にしたものが、下の図である。
図の中で、赤色の県は人口割合が増える県である。濃い赤色ほど多く増える。緑色の県は人口割合が減る県である。濃い緑色ほど多く減る。
この表と図から、次のことが分かる。
(1)東京、埼玉、神奈川、千葉、つまり、首都圏へ人口が集中する。現在の28%から33%にまで増える。
(2)首都圏以外で人口が増えるのは、宮城、愛知、沖縄、福岡だけで、その他の39県は、全て人口が減る。
◇
これは、神谷先生がいうように、将来を見通すための予測ではない。これでいいのか、という覚悟の問題である。
地方を住みにくくする政治を、このまま続けることがいいことか、地方をこういう状況に変えて後世に残すことがいいことか、という政治に突きつけられた問題である。
(前回 在庫圧力で米価続落)
(前々回 新農政は政府の責任放棄)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日