協同組合は弱者切捨ての競争を否定する2014年3月24日
協同組合は弱者切捨ての競争を否定する思想を、その根本にもっている。それに対峙するのが協同の思想である。
14日、産業競争力会議の農業分科会で主査の新浪剛史氏(ローソン社長)が「競争関係が農協を強くする」と発言し、強権的に弱者切捨ての競争を押し付けようとしている。
論理的にいえば、氏は農協の思想に無知なのか、それとも知っていて、その上で否定するのか、そのどちらかになる。
どちらにしても、協同組合人は、氏の考えを受け入れない。
協同組合は、古今東西で周知のように「1人は万人のために、万人は1人のために」という思想を、その根本にもっている。1人でも脱落者が出ることを容認しない。お互いに励まし合い、助け合って生きていこう、という崇高な思想をもっている。
これに対して、弱者切捨ての競争の思想は、弱者を競争によって淘汰し、切り捨て、放逐することがいいことだ、というものである。血も涙もない。
この2つの思想は、互いに相容れない。
◇
もしも、氏が農協の思想を知らないとすれば、そのような人物を議員にした産業競争力会議とは、いったい、どういう会議なのか。
この会議は「特に優れた識見を有する者」を議員にした、という。だから、まさか知らないことはないだろう。
だから、十分に知っていて、こうした発言をした、と思うしかない。これは、協同組合の根本思想を否定する発言であり、したがって、農協の存在そのものを否定する発言である。
◇
誰が、どのような思想を持っていても自由である。だが、氏はこの会議の農業分科会の主査である。農協を否定する思想を持った人物が、主導して農業を論じていることになる。
しかも、この会議はアベノミクスの第3の矢といわれる成長戦略の「具現化と推進について調査審議する」ことを目的にしている。
だから、農協を否定する人物が主導して、農業の成長戦略の具現化と推進を審議していることになる。
ここから出てくる成長戦略は、農業・農村の中枢部にある農協を破壊することになるだろう。その結果、農業を成長させるどころか農業を、そして農村を、その中心部から腐朽させるだろう。
このようなことを許してはならない。任命権者である同会議議長の安倍晋三首相の見識が、厳しく問われている。
◇
競争の思想について、もうすこし考えよう。競争を肯定する論者はつぎのように考える。
彼らは、私的な利益を追求するための競争は、経済を活性化させ、社会全体の生産力を高め、文明の発展の原動力になる、と信じている。競争こそが文明の源泉だ、というわけだ。こうして私的利益のあくなき追求を正当化する。
物質文明をみると、たしかに発展している。IT技術の発展などは、目を見張るばかりだ。
だが、その反面で精神文明は破壊されつつある。人々の心は蝕まれつつある。それは、卑しい私的欲望の追求という大罪を正当化してきたことの必然的な帰結である。新聞は、毎日のように殺人事件を報じているし、経済的弱者の苦悩を伝えている。
精神文明は、競争によって発展するどころか、いまやジャングルの掟が支配する世界にまで退化している。
◇
協同組合は、このような性質をその本質として持っている競争を否定する。そして、他者への配慮に至高の価値をおく。
しかし、切磋琢磨は否定しない。否定しないどころか、切磋琢磨は、協同組合が陥りやすい組織としての官僚的非効率を是正するため、日常的に欠かせない。それは競争とは違って、非効率な部分を切り捨てて排除するのではなく、非効率的な1人が立ち直ってもらうために、万人の仲間たちが協力して励まし高める。
競争は、この切磋琢磨とは似て非なるものである。
(前回 東アジア稲作構造の展望)
(前々回 TPPには無理がある)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2024年7月16日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2024年7月16日
-
30年目を迎えたパルシステムの予約登録米【熊野孝文・米マーケット情報】2024年7月16日
-
JA全農、ジェトロ、JFOODOが連携協定 日本産農畜産物の輸出拡大を推進2024年7月16日
-
「雨にも負けず塩にも負けず」環境変動に強いイネを開発 島根大学・赤間一仁教授インタビュー2024年7月16日
-
藤原紀香がMC 新番組「紀香とゆる飲み」YouTubeで配信開始 JAタウン2024年7月16日
-
身の回りの国産大豆商品に注目「国産大豆商品発見コンクール」開催 JA全農2024年7月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島県で黒酢料理を堪能 JAタウン2024年7月16日
-
【役員人事】ジェイエイフーズおおいた(6月25日付)2024年7月16日
-
【人事異動】ジェイエイフーズおおいた(4月1日付)2024年7月16日
-
日清食品とJA全農「サプライチェーンイノベーション大賞」で優秀賞2024年7月16日
-
自然派Style ミルクの味わいがひろがる「にくきゅうアイスバー」新登場 コープ自然派2024年7月16日
-
熊本県にコメリパワー「山鹿店」28日に新規開店2024年7月16日
-
「いわて農業未来プロジェクト」岩手県産ブランドキャベツ「いわて春みどり」を支援開始2024年7月16日
-
北海道で農業×アルバイト×観光「農WORK(ノウワク)トリップ」開設2024年7月16日
-
水田用除草ロボット「SV01-2025」受注開始 ソルトフラッツ2024年7月16日
-
元気な地域づくりを目指す団体を資金面で応援 助成総額400万円 パルシステム神奈川2024年7月16日
-
環境と未来を学べる体験型イベント 小平と池袋で開催 生活クラブ2024年7月16日
-
ポーランドからの家きん肉等の一時輸入停止を解除 農水省2024年7月16日
-
JAタウンのショップ「ホクレン」北海道産メロンが当たる「野菜BOX」発売2024年7月16日