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協同組合は弱者切捨ての競争を否定する2014年3月24日

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【森島 賢】

 協同組合は弱者切捨ての競争を否定する思想を、その根本にもっている。それに対峙するのが協同の思想である。
 14日、産業競争力会議の農業分科会で主査の新浪剛史氏(ローソン社長)が「競争関係が農協を強くする」と発言し、強権的に弱者切捨ての競争を押し付けようとしている。
 論理的にいえば、氏は農協の思想に無知なのか、それとも知っていて、その上で否定するのか、そのどちらかになる。
 どちらにしても、協同組合人は、氏の考えを受け入れない。

 協同組合は、古今東西で周知のように「1人は万人のために、万人は1人のために」という思想を、その根本にもっている。1人でも脱落者が出ることを容認しない。お互いに励まし合い、助け合って生きていこう、という崇高な思想をもっている。
 これに対して、弱者切捨ての競争の思想は、弱者を競争によって淘汰し、切り捨て、放逐することがいいことだ、というものである。血も涙もない。
 この2つの思想は、互いに相容れない。

 もしも、氏が農協の思想を知らないとすれば、そのような人物を議員にした産業競争力会議とは、いったい、どういう会議なのか。
 この会議は「特に優れた識見を有する者」を議員にした、という。だから、まさか知らないことはないだろう。
 だから、十分に知っていて、こうした発言をした、と思うしかない。これは、協同組合の根本思想を否定する発言であり、したがって、農協の存在そのものを否定する発言である。

 誰が、どのような思想を持っていても自由である。だが、氏はこの会議の農業分科会の主査である。農協を否定する思想を持った人物が、主導して農業を論じていることになる。
 しかも、この会議はアベノミクスの第3の矢といわれる成長戦略の「具現化と推進について調査審議する」ことを目的にしている。
 だから、農協を否定する人物が主導して、農業の成長戦略の具現化と推進を審議していることになる。
 ここから出てくる成長戦略は、農業・農村の中枢部にある農協を破壊することになるだろう。その結果、農業を成長させるどころか農業を、そして農村を、その中心部から腐朽させるだろう。
 このようなことを許してはならない。任命権者である同会議議長の安倍晋三首相の見識が、厳しく問われている。

 競争の思想について、もうすこし考えよう。競争を肯定する論者はつぎのように考える。
 彼らは、私的な利益を追求するための競争は、経済を活性化させ、社会全体の生産力を高め、文明の発展の原動力になる、と信じている。競争こそが文明の源泉だ、というわけだ。こうして私的利益のあくなき追求を正当化する。
 物質文明をみると、たしかに発展している。IT技術の発展などは、目を見張るばかりだ。
 だが、その反面で精神文明は破壊されつつある。人々の心は蝕まれつつある。それは、卑しい私的欲望の追求という大罪を正当化してきたことの必然的な帰結である。新聞は、毎日のように殺人事件を報じているし、経済的弱者の苦悩を伝えている。
 精神文明は、競争によって発展するどころか、いまやジャングルの掟が支配する世界にまで退化している。

 協同組合は、このような性質をその本質として持っている競争を否定する。そして、他者への配慮に至高の価値をおく。
 しかし、切磋琢磨は否定しない。否定しないどころか、切磋琢磨は、協同組合が陥りやすい組織としての官僚的非効率を是正するため、日常的に欠かせない。それは競争とは違って、非効率な部分を切り捨てて排除するのではなく、非効率的な1人が立ち直ってもらうために、万人の仲間たちが協力して励まし高める。
 競争は、この切磋琢磨とは似て非なるものである。


(前回 東アジア稲作構造の展望

(前々回 TPPには無理がある

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