定年帰農者を歓迎しよう2014年3月31日
明日から4月に入り、新しい年度が始まる。今月定年になって、4月から新しく農業を始める高齢者が多いだろう。みんなで歓迎しよう。
前途には、ごく少数ではあるが歓迎しない人が待っている。白眼視する人もいる。高齢者は早く農地を手放して農業を止めよ、というのである。こうした考えの人が、政府の近くにいて、農政を動かそうとしている。
だが、落胆することはない。仲間は多い。30才未満の若年の新規就農者は8000人しかいないが、定年帰農者とみられる60才以上の高齢の新規就農者は、その4倍ちかくの2万9000人もいる。
彼らは、食糧自給率の向上のために、また、働きがいを求め、新しい意気込みで農業を始めようとしている。
みんなで熱烈に応援しよう。
食糧自給率など、どうなってもいい、と考える人や、高齢者がこれまで培ってきた経験や知恵を生かして働くことを否定する人は、決して多くはない。
上の表は最近6年間の新規就農者を、年齢別にみたものである。
新規就農者というと、とかく若年者に注目が集まるが、大半は中高齢者なのである。
この6年間に新規就農者は全体として減少傾向にあるが、最近3年間では、ほとんど変わらない。年齢別でみると、その割合も、ほとんど変わらない。若年者は全体の15%以下だが、高齢者は50%を超える。50歳代の定年帰農者を加えると60%程度になるだろう。
この重要な事実は、なかなか世間の注目をあびないが、ここで確認しておこう。
若い新規就農者が減っているから、農業の先行きは暗い、と声高に言う人がいるが、事実はそうではない。もともと少ないのである。そして、定年で退職した高齢者が、つぎつぎと帰農し、日本の農業を力強く支えている。
◇
たしかに若い後継者の数は少ない。楽観はできないし、もっと増やさねばならない。そのために、どうするか。
若い人は農業が嫌いだ、というわけではない。農業が好きで、これから農業を始めたい、という人は多い。だが今後、農業で食っていけるか、という心配がある。だから、農業以外のところに就職する。親たちも同様に考える。
この状況を変えることが、若い後継者を増やす本筋の政策である。若者を農業で食えるようにする政策である。それをなおざりにして、小手先の政策でごまかそうとしてもだめだ。
◇
若者が農業を継がないとなれば、高齢者が継ぐしかない。上の表は、実際にそうなっていることを示している。
60歳の定年をすぎても、まだまだ働ける。この人たちは土曜、日曜の会社の休日に農業をしてきたし、親の農作業をみて育ってきた。だから農業生産の技術をもっている。その上、若者にはない知恵もある。
◇
このような高齢者を歓迎しない人がいる。高齢者は農業を止めて若い人に農業を任せろ、という。農地を若い人に預けて大規模化に協力せよ、という。
だが、それは、高齢者にたいして、技術と知恵を捨てて非生産的な老後を過ごせ、ということになる。そんな政策はいい政策ではない。
たしかに小規模営農の機械利用は非効率だ。だが、高齢者を排除した大規模化は成功しないだろう。大規模化と高齢者の就農を両立させねばならない。大規模化の成功の鍵はここにある。
そうして、その中心になる若い人が、将来も安心して農業で食っていける政策を、しっかりと打ちたてねばならない。
(前回 協同組合は弱者切捨ての競争を否定する)
(前々回 東アジア稲作構造の展望)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日