TPPの分断政策には乗らない2014年4月21日
「分断して統治せよ」という政策は、古代ローマ以来の統治の要諦だという。TPPでも、そうしようとしている。
マスコミ報道によれば、政府は、TPP交渉で農産品の重要5品目のうち、米の関税は維持するが、牛肉や豚肉や乳製品などの畜産物の関税は段階的な引き下げに応ずるようだ。米農家と畜産農家を分断する政策である。
今週24日の日米首脳会談が、TPP交渉の大きな山場になるだろう。そこで、重要5品目にについて、どんな合意がされるか。あるいは、されないか。
米農家の数は、30アール以上の、いわゆる「販売農家」に限っても103万戸ある。いわゆる「自給農家」など小規模な米農家を含めれば200万戸ちかくになるだろう。それに比べて牛肉農家は、1ケタ以上少ない6.13万戸、豚肉農家は、さらに1ケタ少ない0.557万戸、酪農家は1.94万戸しかない。だから、米だけは関税を維持する、というのだろう。
まさに、米農家と畜産農家を分断しようとしている。畜産農家は少数派だから、多数派の米農家の犠牲になったと思わせ、両者を反目させたいのだろう。そうすれば、反TPPの勢力を弱められる。
だが、そうはいかない。
◇
協同組合の精神は、少数派を犠牲にすることを認めない。それどころか、1人の犠牲者がでることさえも容認しない。それが「……万人は1人のために」という崇高な協同の精神である。
この協同組合の精神を、真っ向から否定するのがTPPの分断政策である。これに対峙するには、全農家のねばり強い協同しかない。経済的弱者である99%の国民は支持するだろう。この99%の国民の連帯が分断政策を断念させるだろう。
◇
もう1つの問題点は、関税の段階的な引き下げである。
畜産物の関税は、一気に下げるのではなく、段階的に引き下げるという。だが、段階的だからいい、というものではない。
かりに、20年かけて切り下げるとしても、20年は決して長い期間ではない。いま20才の農業者が40才の働き盛りになるまでの期間である。その期間、関税を下げ続けることになる。これでは今後、若い農業後継者が、ますます減り続けるだろう。
◇
だから国会では、1年前の衆参両院の農林水産委員会で「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」と決議した(資料は本文の下)。関税を一気に下げることはもちろん、段階的な切り下げにも反対、という決議でクギをさしたのである。
政府は、この国会決議を尊重する、と何度もいってきた。これは虚言だったことになる。国権の最高機関である国会にウソをついたことになる。これを政府は、どのように釈明するのだろうか。
「ウソはドロボウの始まり」として、道徳の基本を教えてきた純真な子供たちに、どう説明するのだろうか。小・中学校で道徳の教科を正式に復活したいようだが、いったい、なにを教えたいのか。「政治は最高の道徳」ではないのか。
衆議院農林水産委員会の2013年4月19日の決議は ココ
参議院農林水産委員会の2013年4月18日の決議は ココ
(前回 TPPで半失業社会がやってくる?)
(前々回 日豪EPAで崖っぷちに立つ牛肉)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。【コチラのお問い合わせフォーム】より、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日