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【コラム・目明き千人】ブータンの幸福論2014年4月24日

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【原田 康】

 ブータンという国はGDP(国民総生産)は豊かさや幸福の尺度とはならずしかもいずれ行きづまるとして、これに代わりGNH(国民総幸福度)を国の目指す指標としているユニークな国である。

 このような発想をするブータンが何処にあるかを地図で確かめると、インドと中国に囲まれてネパールと並んでいる。両国とも北側はヒマラヤ山脈が屏風のように立ちはだかりその先が中国で、しかもチベットである。ネパールとブータンもよく見ると国境は接しておらず、インドのシッキム州が割り込んでいるので両国とも南だけはなく東も西も三方をインドに囲まれている。
 面積は九州と同じくらいで、人口は約72万人である。このような国が独立と社会の安定を保つのにはよほどの努力としたたかさが必要であろう。
 幸福がすべての国民が目指すべき最も重要なものであるならば、国の主たる役割はそのニーズに応えること、として2005年に国王がそれまで持っていたすべての権限を選挙で選ばれた議会と首相に譲って退位された。国王も首相も国民投票で罷免が出来ることとした。
 地下資源もなく、観光といってもヒマラヤの大自然とチベット仏教のお寺という国が経済成長を目指せば“グローバル化”で大国の草刈り場となる。観光立国とすれば、秘境としてヒマラヤ登山やお寺が目玉になるが、その結果は自然の破壊と宗教の俗化という姿が見えるために、ブータンはあえて“山岳環境の保護、現在の姿を維持する”ことと“お寺は聖なる場所であって観光資源ではない”とした。
 「武士は喰わねど高楊枝」では国として態をなさないので国の税収の不足分は外国からの支援が必要となる。そのためには支援側がブータンの努力を評価して喜んで支援をすることが必要で、先進国がもう後戻りが出来ず真似の出来ないGNH(国民総幸福度)をGDPに代わる指標として持ってきた。
 日本とブータンの違う例を挙げれば「富士山が世界遺産に登録」で登山道、交通の整備、入山料といった観光開発ではなく、富士山の姿を維持するのが最も大切で観光客に荒らされるのを防ぐために入山を制限する。都や市が「公営のカジノ」を持ってきてギャンブルのてら銭で税収の落ち込みをカバーするというのは論外である。
 ブータン流の幸福論ではGDPを最優先するという発想はしない。

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