市場原理主義派が描く地獄絵2014年9月22日
先週は、週初の16日に規制改革会議が再開された。農協攻撃が再び始まるだろう。そして、週末の19日には安倍晋三首相が「農協改革」の決意を改めて言明した。
財界の代理人として規制改革会議にいる市場原理主義者たちは、農協をどうしようとしているのだろうか。
彼らが目ざしているのは、財界にとっては天国かもしれない。しかし、農業者にとっては地獄である。
彼らは、その方向へ向かって、ひた走りに走っている。
農協の事業部門の分割、つまり信用・共済事業の切り離しは、両事業の丸ごと売り渡しである。当面の売り渡し先は農林中金だが、その先には財界が待っている。
彼らは、信用・共済部門を売り渡して、販売・購買の経済部門に全力投球せよ、という。だが、信用・共済部門を失った経済部門は、農業者から見放され、やがて採算を悪化させるだろう。これには、かつて、青果などの専門農協が経験した苦い思い出がある。
そうした間隙をぬって、財界が経済部門にも忍び込んでくる。そして、利益をむさぼる。
◇
それに拍車をかけるのが、経済部門の株式会社化である。当面は全農の株式会社化の要求である。だが、それにとどまらない。彼らが目ざしているのは、すべての農協の解体であり、その後の株式会社化である。
農協と株式会社とのイコールフッティングと言いたいのだろう。カタカナでいうときは、胡散臭いと考えて間違いない。
彼らは、農協の共販を止めさせたいのだ。
◇
だが、共販は農協の生命線だ。その否定は、協同組合としての農協の全面否定である。
彼らは、それに挑戦している。農協を株式会社にして共販を禁止しようとしている。
株式会社にすれば、共販は独禁法違反になる。農産物は、個々の農業者が売ることになる。協同して売ることは、談合だとして禁止される。だから、業者に買い叩かれても泣き寝入りするしかない。
◇
こうした悪政に抗議し、是正を要求しようとしても、その道を閉ざされる。それが全中の解体である。安倍首相は、19日にも全中の廃止を明言した。
いまは、中央会は農協法に基づいて、行政に対する建議権を持っている。だが、この権利を剥奪しようとしている。そうなれば、全中会長が農水大臣に門前払いを食わされても、泣き寝入りするしかない。県中会長が県知事に門前払いを食わされても、泣き寝入りするしかない。
これは、財界が推進するTPPに対する農協の反対運動への、不当な見せしめの懲罰でもある。
財界にとって、農協をひるませ、力を削げば、TPPを推進しやすくなって都合がいいのだ。
◇
以上のように、財界と政界の強欲な市場原理主義者たちは、農業者の経済的社会的地位の向上などは、つゆほども考えていない。それどころか、農業者の困窮を冷笑している。抗議の道さえ閉ざして、さらなる困窮に向かわせようとしている。
そうして得ようとすものは何か。それは、農業への資本の乱入であり、失業者や半失業者を増やして賃金を下げ、目先の利益を増やすことだろう。財界にとって天国かもしれない。
失うものは何か。それは、農村から農協がなくなることによる、農業生産と消費生活の劣化であり、生きる環境の劣化である。さらに、財界による農業の一部のつまみ食いと大部分の崩壊である。それがもたらすものは、食糧自給率のさらなる低下による食糧安保の危機である。それに加えて、社会の不安定化である。
◇
共販は、経済的強者の買い叩きに対抗して、経済的弱者がもっている当然の権利である。先人たちが、長い年月をかけて闘い取った輝かしい成果である。共同購入も当然の権利である。おいそれと捨てるわけにはいかない。
農協の建議権は、労組の団体交渉権と同じように、経済的強者の横暴に対して、経済的弱者がもっている当然の権利である。捨てるわけにはいかない。
これらを失えば、経済的弱者である農業者と農協は、そして農村は、地獄へ堕ちるしかない。そうはさせない。
(前回 幻想の准組合員問題)
(前々回 農政の潮目が変わる)
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