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【コラム・森田実の政治評論】この秋は内外情勢激動の期2014年10月6日

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【政治評論家・東日本国際大学客員教授 森田実】

・野党は論客立て政府と論戦を
・日中、日韓関係修復がカギ
・TPPは地方・農業の立場で
・混迷の度を深める国際情勢

 秋の政局の焦点――臨時国会、選挙、外交、景気と消費税、TPP、日米防衛協力の指針改定など課題山積だ。

「好事魔多し」(『晁端礼』)

 

◆野党は論客立て政府と論戦を

 第一は臨時国会です。会期は11月30日までです。安倍首相は「臨時国会を地方創生国会にしたい」との意向を表明しています。政府提出の法案は35本程度とみられていますが、主な法案は次のようなものです(『朝日新聞』9月20日朝刊参照)。
[1]まち・ひと・しごと創生法案 地方の魅力を高め、人口減を克服する理念を定める
[2]女性活躍推進法案 企業に女性登用の目標や計画策定を求める
[3]土砂災害防止法改正案 土砂災害の危険性を都道府県が住民に迅速に周知
[4]労働者派遣法改正案 企業が派遣社員を活用できる期間を見直し
[5]風俗営業法改正案 客にダンスをさせる営業の規制を緩和
[6]カジノ解禁法案 カジノを中心とした統合型のリゾート施設の整備を政府に促す
 以上の重要法案のうち、与野党対決法案は労働者派遣法改正案とカジノ解禁法案の二つですが、主要野党は党内の意見を集約するのが難しい、というのが現状です。カジノを解禁するようなひどいことは許してはならないと私は思います。
 安倍政権下の政界の状況は「一強多弱」と言われているように、野党は鳴かず飛ばずという情けない状況ですが、国民の野党への強い不満を受けてハッスルせざるをえないと思います。大切なことは論争することです。野党は論客を立てて安倍首相と論戦すべきです。臨時国会に提出される法案では労働者派遣法改正案とカジノ解禁法案の成立阻止に力を合わせる必要があります。

 

◆日中、日韓関係修復がカギ

 第二は選挙です。二つの知事選が注目されています。10月26日投開票の福島県知事選は自民党と民主党の選挙協力が成立しました。おそらく自公民三党共同で選挙戦を戦うことになるでしょう。11月16日投開票の沖縄県知事選は対決型です。辺野古基地建設問題が主な争点になりますが、自民党が推す候補の勝利はかなり難しいとみられています。
 第三は外交です。10月16、17日にはイタリアでアジア欧州会議(ASEM)首脳会議、11月10、11日には北京でAPEC首脳会議、11月12、13日にはミャンマーで東アジア首脳会議、 11月15、16日にはオーストラリアでG20首脳会議が開かれます。秋は外交の季節です。安倍政権への風当たりが強まる勢いです。日本政府にとって楽な局面ではありません。
 安倍政権にとってはこの間に日中首脳会談が、日韓首脳会談ができるか否かに関心が集まっています。儀礼的な会談はなされると思いますが、中身のある首脳会談ができるか否かが注目点です。もしも首脳間の和解ができないようであれば、中国、韓国その他の国々で来年に行われる第二次大戦終結70年記念の集いにおいて、厳しい対日批判が行われることになるおそれ大です。
 今年2014年秋に日中、日韓関係の修復できなければ、日本は国際的に孤立するおそれがあります。中長期的にアジア情勢は不安定化するでしょう。
 第四は景気と消費税引き上げです。8%から10%に上げる問題です。景気回復が進まない状況下でも増税を決定するのか、それとも延期するかに注目が集まっていますが、混乱するおそれがあります。急激な円安による物価高も影響します。安倍首相は難しい決断を求められています。「進むも退くも地獄」と言われています。

 

◆TPPは地方・農業の立場で

 第五はTPPです。2014年11月の北京におけるAPEC首脳会議において決着がつくという見方が強まっています。TPPに反対する人々は訴訟に踏み切る構えです。日本経済にとってプラスかマイナスか、国内の見方は真っ向から対立しています。私は、政府は農業者、地方の立場に立って慎重に進めるべきだと思います。大切なのは日本の国益です。

 

◆混迷の度を深める国際情勢

 第六は日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定です。7月1日の「安全保障法制の整備について」の閣議決定では、今の日本国憲法の平和主義を守り、専守防衛、他国に脅威を与えるような軍事大国はならないことにしましたが、しかし、日米協議において閣議決定を超える悪い方向への「見直し」が行われるおそれがあります。限定されない集団的自衛権の行使容認に踏み出せば、東アジア情勢はいっきに緊張し、日中両国の軍拡競争に火がつくおそれ大です。警戒すべきです。
 国際情勢は混迷の度を深めています。世界戦争の危機が囁かれる状況です。国際情勢に大変化が起これば、日本の国内状況にも影響します。国際情勢からは目が離せません。
 2014年9月末現在、安倍内閣は絶好調にみえます。内閣支持率は高く、株価も上がっています。安倍内閣と対決する意思をもった力強い野党は存在していません。しかし、この秋は内外情勢の激動期です。「好事魔多し」。そうならないことを祈りつつ…。

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