米価は歴史的な低水準2014年11月4日
先週、農水省が発表した9月の米価は、ついに1万3000円を大きく割り込んで1万2481円になった。消費増税を含む物価全体の上昇を考慮すると、実質米価は、底なし沼のように下げつづけ、いまや戦後の歴史的な低水準にある。
こうした事態になったのに、政府には危機感がない。いわゆるナラシ対策で充分だといって、他人事のように傍観している。むしろ、米価の暴落を歓迎しているようだ。米価を下げて家族農業をつぶし、株式会社に農業を任せ、国際競争力をつけるというのだろう。
だが、農業者は黙ってつぶされるほど、お人好しではないし、非力でもない。また、株式会社に稲作ができる筈がない。
上の図は、1951年以後の64年間の実質米価指数の推移を示したものである。実質米価にしたのは、この期間の一般物価の上昇を考慮したからである。
この図から分かるように、実質米価指数は、1968年の244.3を最大値にして一貫して下がった。いったん、昨年、一昨年と回復したが、今年の9月には暴落し、戦後最低の89.2にまで下がった。1968年と比べ、実に3分の1近くにまで下がった。
◇
米価が一貫して下がり続け、最近になって暴落した原因はなにか。
政府は、農協が有利販売の努力を怠ったことが原因だ、といいたいのだろう。だが、勿論そうではない。各地の農協は、有利販売のために懸命の努力を重ねている。だが、米価下落を傍観し、歓迎する農政の圧倒的な力に阻まれて、努力が報いられずに無念な思いをしている。
また、小売店が不当な値下げを要求することが原因だ、といいたいのだろう。だが、それが主要な原因ではない。小売店が仕入れ値を下げたいと考えるのは、市場経済の必然である。
そうではなくて、米価下落の原因は、これまでの農政にある。米価を下げて、大規模化という、いわゆる構造改革をすすめよう、とする農政に原因がある。また、米価を下げて、国際競争に耐えられるようにする、という農政に原因がある。
こうした農政が続けば、構造改革の前に、また、国際競争の前に、日本の稲作は全面崩壊してしまうだろう。
◇
政府は、アべノミクスの成否を占う物価の下落には神経質だが、米価の下落は気にしない。また、所得増加による最終消費の底上げがアベノミクスの成否を決めるのだが、米価の下落による農家の最終消費の落ち込みは気にしない。円高による農業生産資材の価格高騰も気にしない。
いま、政府は地方創生を看板にしているし、農業は成長産業だともいっている。若者を地方に呼び込んで、高齢化した農業を蘇らせるともいう。
だが、米価の下落を放置すれば、農村は疲弊するだけで、地方創生などできはしない。
米政策に対する根本的な反省を求めたい。
(前回 農協批判にみるマスコミの戦前回帰)
(前々回 農協を全面否定する中央会監査の廃止案)
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