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規制改革会議の支離滅裂な中央会攻撃2014年11月17日

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【森島 賢】

 先週の12日、規制改革会議が、農協攻撃の意見(本文下のリンク参照、以下「意見」と略称)を発表した。またしても、全中と県中の法律的な否認を主張している。
 この主張は、農協の否定にとどまらず、協同組合の全否定であり、しかも事実に基づかない主張である。
 どんな主張をしても自由だ。しかし、協同組合の全否定は、近代国家の「優れた識見を有する者」(規制改革会議令第2条)として首相から任命された委員の主張とは思えない。
 また、事実に基づかない主張は、「専門の事項に関して学識経験のある者」(規制改革会議令第2条の2)として首相から任命された専門委員の主張とは思えない。支離滅裂というしかない。
 任命権者である安倍晋三首相の責任は重い。首相は、この法令を無視して、独裁者的に委員や専門委員を任命したのではないか。法治国家の首相とは、とうてい思えない。

 「意見」では、「…中央会は単協の自由な経営を尊重し、これを制約せず…」といっている。
 ここには、中央会が単協の自由な経営を尊重せず、制約している、という認識がある。だが、そうした事実はない。
 もしも、そうした事実があるというのなら、学識経験者の筈だから、そうした事実を示さねばならない。
 だが、事実がないのだから、事実は示せない。つまり、これは事実に基づかない、ウソで固めた主張になる。

 「ウソも100回いえばホントになる」といったのは、ナチスの宣伝相だったゲッペルスの迷言だという。ヒットラーは「ウソを言うなら大きなウソを言え」といった。
 戦前、戦中の日本軍はナチスを研究し、彼らの宣伝作戦を教訓にしたという。
 規制改革会議もナチスを教訓にして、こんどの「意見」を発表したのだろうか。もしも、そうだとすれば、ナチスが世界中の人びとに甚大な犠牲を強いたうえで、結局、滅んだように、この「意見」も農政を混乱させるだけで、結局、雲散霧消するだろう。そうさせねばならぬ。

 「意見」では次のようにいっている。「全中によれば、前述の諸機能(経営相談・監査機能、代表機能、総合調整機能)は組合員・単協から求められているとのことであるが、それなら…中略…法的裏付けは必要ない」(カッコ内は筆者)と断じている。
 「組合員・単協から求められている」ことは否定していない。しぶしぶと認めている。さすがに、組合員・単協から求められていないのに、全中が組合員・単協を法的に縛りつけ、自由を制約している、とはいわない。
 しかし、だからといって、「法的裏付けは必要ない」と主張するのは、論理の飛躍である。

 「意見」では次のようにもいっている。「中央会は単協が自主的に組織する純粋な民間組織として、自からの実力で組織を束ねればよい。…中略…全中・県中とも…法的裏付けは必要ない」といっている。
 この中の「中央会」を「単協」におき代え、「単協」を「農業者」におき代えると、つぎのようになる。「単協は農業者が自主的に組織する純粋な民間組織として、自からの実力で農業者を束ねればよい。単協は法的裏付けは必要ない」ことになる。一見、なるほど、と思えるが、これは農協法の全面廃止の主張である。ここには前近代的な不見識がある。

 ここで分かることは、この会議の委員や専門委員は、識見や学識経験がある筈なのに、論理的思考に不慣れだ、ということである。
 その上、彼らは農協法を理解していない。

 ここで、あらためて言っておこう。
 農協法は、「農業者の協同組織の発達を促進する」(第1条)ための法律である。
 だから、「報告」がいうように、農協は農業者が勝手につくればいい、とか、中央会は単協が勝手につくればいい、とか、法的に傍観していればいい、のではない。中央会は「協同組織の発達」のための組織だから、法的に「促進」する義務がある。
 それなのに「報告」は、この義務を放棄することを主張している。つまり、中央会に法的裏付けは必要ない、といっている。
 これは、協同組織の発達の法的な促進の否定であり、農協法の否定である。委員や専門委員は、そこまで考えて「報告」したとは思えない。ご粗末というしかない。

 もう1つ、あらためて言っておこう。
 農協法は、経済的弱者である農業者が経済的強者に立ち向かう協同活動を法的に傍観するのではなく、法的に擁護するために、あらためて作った法律である。
 「報告」は、農協の否定だけでなく、協同組合の全面否定という前近代的な弱肉強食の無法な主張につながる。そんな近代国家はどこにもない。
 この点で、彼らはICA(国際協同組合同盟)や、ILO(国際労働機関)や、多くの国から厳しい非難を浴び、世界中の笑い者になっている。そうして、日本の恥を世界中にさらしている。

 委員や専門委員の名誉を保つために残されている道は何か。
 1つの道は、中央会が農協法に違反して、協同組織の発達を阻害している、と主張することである。だが、そうした事実はない。「報告」でも、前に指摘したように、単協が中央会を求めている事実を認めている。だから、矛盾だらけの、支離滅裂な主張になる。つまり、この道はない。
 もう1つの道は、単協は中央会にだまされている、という子供じみた新しいウソをつくことである。いったんウソをつくと、その後はウソを重ねるしかない。そうして、やがてウソがバレる。つまり、この道もない。
 残された道は、いままで通りに中央会を農協法で裏付けるしかないのである。

【※規制改革会議の「農業協同組合の見直しに関する意見」(2014.11.12)はココから】

 

(前回 政府の強権的な農協改革

(前々回 米価は歴史的な低水準

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