選挙の上手な自公2014年12月22日
先週の総選挙の結果を、やや詳しくみてみよう。
与党の自民党と公明党の獲得議席は、合わせて全議席の3分の2を超えて圧勝した。しかし、党派別の支持率を比較的忠実に表す比例区の得票数でみると、両党を合わせて全体の半分以下である。自公は上手な選挙をした、というべきだろう。
ここで言いたいことは、自公の上手さを賞賛することではない。しかし、ホメゴロシをすることでもない。自公の慢心を戒めることである。自公の政策が過半数の投票者の支持を得たわけではない。絶対支持率でみると、僅か24%でしかない。つまり、全有権者の4分の1以下の支持しか得ていない。
一方、非自民は過半数の支持を得たのに、3分の1以下の議席しか得られなかった。小選挙区制の妖術にハマッタのである。覚醒を促したい。
こうした歪んだ結果をもたらす小選挙区制のもとで、農協は、いったい、どうすればいいのか。
下の図は、過去3回の総選挙で、自公と非自公がどれほどの支持を得たか、そうして、どれほどの議席を得たか、を示したものである。
自公の状況を古い順序でみてみよう。
2009年の結果をみると、支持率は38%で、議席獲得率は支持率よりも少なく29%だった。その結果、政権を失った。
2012年の結果をみると、支持率は39%で、前回とほとんど同じだったが、議席獲得率は68%と、大きく躍進し、3分の2を超えた。そして政権に復帰した。
今度の2014年は、支持率は47%で、前回よりも大幅に増えた。しかし、議席獲得率は68%%で前回と同じだった。支持率が大幅に増えた、とはいうものの、得票数は5%増えただけである。
これらから分かることは、いまの選挙制度が、国民の意志を忠実に反映していないことである。そのうえ不安定である。そのことは、2009年の結果と2012年の結果を比べれば歴然としている。支持率はほとんど同じなのに議席獲得率は大きく違った。
◇
以上のことを、非自民の側からみると、どうなるか。
2009年には支持率が62%で、議席獲得率は71%だった。そして、政権を奪った。
2012年の支持率は61%で、前回とほとんど同じだったが、議席獲得率は32%に激減した。そして、政権を失った。この主な原因は、非自公が四分五裂したからである。
このことは、非自公が1つにまとまれば、今後、2009年と同じ結果を再現できる可能性があることを示している。もういちど政権を奪還できるかもしれない。
◇
これらのことを、農政分野からみるとどうなるか。
いま、農政には2つの根本的な対立がある。市場原理主義を基調とする市場型農政と協同組合社会を目指す協同型農政である。
だが、この2つの対立が、自公と非自公の対立と一致していない。両方に市場派と協同派が入り混じっている。
自公には市場派が多く、いわゆる構造改革を強引に進めようとしている。また、TPPへの参加を主張している。そして、農協を「抵抗勢力」に仕立て上げて、潰そうとしている。だが、その一方で協同派も多く、強権的な構造改革に反対し、TPPでの妥協に反対している。
非自公には協同派が多い。民主党などは、協同型農政である戸別所得補償制度の法制化を主張している。だが、その一方で市場派も少なくない。TPPへの参加を提案したのは民主党である。
◇
農協は、協同派の中心に位置しているが、こうしうた状況では、1つの政党に偏った支持はできない。各政党のなかに協同派を増やすしかない。TPPに反対し、強権的な構造改革に反対し、農協攻撃に反対する勢力を増やすしかない。
農協の新しい年の課題は、ここにあるだろう。統一地方選挙は、4か月後に迫っている。
(前回 絶対支持率24%の市場型農政の嵐)
(前々回 玉虫色の自民・民主TPP公約)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日