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悪意に満ちた農協監査論議2015年2月4日

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【森島 賢】

 農協監査問題は、自民党の中で、いよいよ煮詰まってきたようだ。全中から監査権を取り上げる、というのである。ここには大きな思い違いがある。農協監査が分かっていない。
 全中は、農協法(第73条の22)に基づいて、単協を監査する権限をもっていて、その法的権限で強権的に単協を縛り付けている。だから、単協が自由に活動できない、というわけである。
 だが、それは違う。農協法では、別の条文(第37条の2)で、単協に全中の監査を義務付けている。法の主旨は、全中に権限を持たせることではなく、単協に義務を負わせることにある。
 なぜ公認会計士の監査ではなく、全中の監査を義務付けているのか。それが問題の焦点である。だが、それを隠そうとしている。そうして、全中の既得権とか、規制とか言い立てている。悪意というしかない。

 政府は、全中監査が単協の自由な活動を妨げているという。だが、これでは理由の説明になっていない。怠惰な農協理事にとっては、監査の義務などないほうが安易でいい。政府も、さすがに、そこまでは言っていない。だが、監査は公認会計士に任せたいと考えているようだ。
 そうだとすれば、公認会計士監査のほうが全中監査よりも優れていることを示さねばならない。

 全中監査も優れているが、公認会計士監査も優れている、などという話ではない。だから単協が選択すればいい、などという幼稚な話ではない。優劣の基準をどこにおくか、が問題である。
 農協監査の優劣の基準は、破綻しそうな単協を、全国の農協人が叡智を集めて、破綻を未然に食い止められるかどうか、の点にある。まさに「万人は1人のために」である。
 実際に、住専問題のとき、全国の農協が知恵をしぼり、力を出し合った結果、1つの農協も破綻しなかった。これが全中監査の実績である。
 こうしたことを、公認会計士に求めることには、そもそも無理がある。つまり、農協監査は全中監査のほうが優れているのである。

 全中は、もはやその機能が不必要になった、ともいうが、全中監査は農協をよりよくするために行うものである。また、万一の破綻に備えて行うものである。全中監査が不必要になることは今も将来もない。
 では、全中監査を無理矢理に否定する理由は、いったい何か。それは表立って言えないことである。
 それは、全中と単協を離反させることである。そうして、農協全体の力を弱め、農業者をバラバラにすることである。そのほうが財界にとって好都合だからである。当面はTPP交渉を抵抗なく妥結させたいのだろう。
 だが、そうした陰謀を許すことはできない。

 

(前回 神を信じた人も、信じなかった人も

(前々回 問答無用の農協監査論議

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