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林新農水相の正念場2015年3月2日

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【森島 賢】

 林 芳正氏が、先週、新しい農水相に就任した。再登板である。
 先日の記者会見で、新農水相は、「現場とのキャッチボール...を絶やさず...」といっていた。ここには、現場が投げるボールを真摯に受け止める姿勢がある。そして、論理的に投げ返す。
 それとは対照的に、前農水相は辞任直後の発言で、「いくら説明しても、分からない人には分からない」といっていた。献金問題だけでなく、農政問題でも、こうした無責任で投げやりな姿勢があった。
 ここには、政府が投げるボールを黙って受け止めろ、という問答無用の強権的な姿勢が見える。論理はない。

 この姿勢は、民主的な討論の拒否であり、したがって、民主主義の否定である。そしてこれは、安倍晋三首相が、ある会合で「あなたたちとは考えが違う」といって席を蹴ったのと同じ姿勢である。
 新農水相は、それとは対照的なだけに、期待は大きい。また、それだけに、現場と首相官邸との間で板ばさみになる事態をどのようにさばいていくのか、力量が試される。
 現場とは、農村の現場であり、首相官邸とは、その背後にいる財界であり、アメリカである。省内にも潜んでいる。
 そうした修羅場を経て、今後、林氏は大政治家に変身するかどうか。その正念場に立っている。

 新農水相には、当面する重大な課題が、いくつもある。
 まず、今月中に国会へ提出するという農協法改正案がある。その骨格は、先月の9日に農協との間で合意した。さっそく、翌日の10日には、政府に従順な規制改革会議は、不満そうな素振りも見せずに、この骨格を評価する見解を発表した。そうして、12日には、首相が国会で「農協改革を断行します」と大見得を切った。翌13日には、政府がこの骨格を「農林水産業・地域の活力創造本部」で公式に了承した。
 この根回しは、農水相になる前の林氏が、自民党農林族の中心になって行ったものである。

 農協との間で合意したとは言うものの、細部まで詰めきった訳ではない。たとえば、全中の法的な位置づけは、細部までは決まっていない。玉虫色である。だから、法案化の途中で、財界の代理人である規制改革会議などが、したたかに、またぞろ異論をくり返すかもしれない。
 その背後には、農協と農業を乗っ取ろうとする財界の、無謀な企みがある。農協の信用・共済事業の乗っ取りを、しつこく狙うアメリカの影も見える。

 秘密裡に行われているTPPも、いよいよ大詰めを迎えるようだ。
 政府は、農協改革という名目で、反TPP運動の中枢部にいた全中を法的否認という脅しで縛りつけ、運動不能にした。
 そして、来月の統一地方選挙で、また、来年の参議院選挙で、全国の農協から手ごわい反撃があることを予知できないまま、TPP交渉を思う存分に進めている。

 マスコミ報道によれば、政府は、農産物の重要5品目の関税について、すでに大幅な譲歩をしているという。もしも、そうだとすれば、TPPの交渉妥結は日本農業の壊滅に直結する。農村社会は崩壊する。だから、交渉の無期限な延期しかない。
 このことを、日本農業の発展に責任をもつ新農水相は、どう説明するか。TPPの主役であるアメリカと、その主役を盛り立てる脇役の財界を、どう納得させるか。そこが見せ場である。まかり間違えば、また自民党は政権から、引きずり落とされるだろう。
 こうした中で、新農水相の力量が試される。自民党政権の命運を握っている、といってもいい。

 農政を推進するとき、自然に滲みでるのは、農政観である。
 新農水相がこだわっているのは、農業・農村全体の所得を10年間で倍増させるという、一昨年12月に首相官邸が作った「農林水産業・地域の活力創造プラン」である。これを今後の農政の基本目的にする、という。
 所得を倍増することに反対するわけではないが、しかし、これは農政の基本目的にはならない。何のための所得倍増か、を考えない浅薄なものである。ここが問題である。
 単純な所得倍増なら、それは守銭奴の目的でもある。農政をそれと同列に扱うことはできない。

 農政の基本目的は、基本法を持ち出すまでもなく、食糧の安定供給である。この目的のために、食糧生産に励む農業者の生活を安定させる政策が農業所得政策である。そうして、農業者に対して、この崇高な目的のために働く喜びを味わってもらう。
 新農水相に望みたいことは、この点をあらためて再認識することである。食糧の安定供給という、農政の基本目的に照らしながら、政策体系の中で、農業・農協・農村振興、TPP交渉、所得・価格政策などを位置づけることである。そして、現場とのキャッチボールを絶やさぬことである。そうした農政の力強い舵とりを期待したい。
 前途多難ではあるが、こうした研鑽を積み重ねれば、やがて並み居る大御所の農林族の中で、54歳という若くて清新な、押しも押されもせぬ大立者に成長するだろう。その予兆を、こんどの全中つぶし未遂騒動の中で見せた。

(前回 農協と農業を外資へ売るな

(前々回 農協改革騒動にみる民主主義の劣化

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