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【コラム・目明き千人】農地は信用の出来る人にしか預けない2015年3月6日

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【原田 康】

 日本の農業よりもアメリカの農業を大切にする人には農地は貸せない。安倍内閣が農地バンク(農地中間管理機構)をつくり、会社方式の大規模経営のために農家の分散した農地や耕作放棄地を借り上げて国際競争力のある農業へという構想を出している。安倍内閣の農業政策の目玉である。農地バンクの目標は14年度からの10年間で14万haの農地をまとめて大規模生産者に集約をする計画であるが、14年8月時点での実績は552ha、計画の0.4%である。コメどころの宮城県でも目標の1700haに対して12月の時点で170haである。(日本経済新聞2015年1月8日)

 田んぼや畑が農家にとってどれくらい大切なものか、先祖から受け継いだ農地をいろいろな事情で耕作が出来ずに雑草に覆われたままにしておく、まして自分の代で農業が出来なくなることの心労は大変なものである。

◇    ◇

 日本の農村の原風景としてカレンダーには欠かせない棚田は、都会の人の癒しのためにコメを作っているのではない。ご先祖が、家族や村の人達がヒエやアワでなくコメを食べられるように山肌を削り、溜池を作りコメの出来る田んぼにした。全部手作業だ。これを代々受け継いでいるのである。棚田を作る費用よりもコメを買った方がはるかに安いが、農家はそのような計算でやっているのではない。棚田を観光資源としか見ないのは農家に失礼である。
 耕作が出来ていない土地を“耕作放棄地”で値上がりを待っているとして、土地転がしで一儲けを狙っている不動業者と同列にしか見られない人には農地を貸すわけにはいかない。

◇    ◇

 農地バンクは、借り上げの期間を10年としているが、コメつくりであれば大型機械が使えるように耕地の整理などの準備で最高でも9回しか収穫が出来ない。新たに資本を投下してコストをかけた会社方式の経営で累積の赤字を消して黒字とすることは困難である。
 そんなに儲かるのであれば農家が農業を続けている。耕作放棄地などは出ない。
 更に、農地バンクは10年前の持ち主に返すのに元の姿に畦や水路を戻すことも出来ない。
 日本の気候、土地、社会、政治経済の条件のもとで農地を守り、食糧を供給してきている農家の苦労を知ろうともせずGDP、経済成長だけを最優先する政府には農業を語る資格はない。 このような農地バンクを信用して貴重な財産を預けることは出来ない。

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