【コラム・森田実の政治評論】日米同盟vs中国を中心とするユーラシア連合の対立軸の中で孤立化を深める日本の行方2015年4月24日
中国が提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に60カ国近くが参加したことは、世界の変化を象徴するものでした。AIIBの発足は、世界の空気を変えました。大げさな言い方になりますが、米国一極時代の終焉を印象づけました。少し気が早いと思われるかもしれませんが、私は、これによって、日米同盟対中国を中心とするユーラシア連合の対抗時代が始まったとみています。世界は、新しい時代に入りました。
「世の中は三日見ぬ間の桜かな」(大島蓼太)
◆世界は新時代へ――世界の成長拠点めざすユーラシア連合
もちろん日米両国とも依然として大きな力をもっていますから、どの国も日米を無視はできません。なかでも米国の力は軍事面でも経済面でも依然として世界一です。日本も経済的には第3位です。一体化した日米同盟の力は巨大です。安倍内閣によって安保法制が整備され、自衛隊が地球上のすべての地域に出動できるようになれば、軍事的にも強大化します。米軍と自衛隊が一体化すれば、日米同盟は軍事同盟化し強力な力をもちます。
しかし、これによって中国を中心とするユーラシア連合が後退することはないと思います。中国などのユーラシア連合は、強大な軍事力を誇る日米同盟との衝突を巧みに回避しながら、ユーラシア大陸を世界の成長の最大拠点にする方向への前進を続けるでしょう。衰退過程に入った米国に対して、中国は発展途上にあります。
日本には中国を否定的に見る傾向が強いのですが、中国を一面的に見るのは危険です。北京と上海だけを見ていては中国を正確に理解することはできません。公平な判断が必要です。
◆歴史修正主義の安倍政権を許容するのは政略的な米国政府のみ
安倍首相が狙う「戦後レジームからの脱却」の最終目標は、日本国憲法を改正し戦争放棄を規定した憲法第9条を廃棄して、日本を、第二次大戦の戦勝国と同じような「戦争ができる国」にすることにあります。しかし、これによって第二次大戦前の大日本帝国に戻ることはできません。第二次大戦後の日本は、唯一の占領軍となった米国政府の支配下におかれています。日本を「戦争を放棄した国」から「戦争できる国」に変革したとしても、それは、あくまで米国に追従している状況においてです。
1970年代後半から使われ始めた「日米同盟」の実態は「米国が日本を支配し続ける従属関係」です。同盟とは、日本が米国の支配下におかれている真実を隠すための言葉のトリックにすぎないのです。米軍基地下の日本が独立国というのはフィクションにすぎません。
◆2015年4月の安倍首相訪米の意味
安倍首相の訪米前に行われる日米防衛協力指針改定によって、日本の自衛隊は地理的制約も、憲法第9条との整合性を保つための「専守防衛」という制約も、ともに除去します。これによって自衛隊は米軍とともに全世界で活動することになります。米軍とともに戦争する危険の中に身をおくことになります。日本の自衛隊は米軍の補完部隊となります。どこかで自衛隊員が犠牲になるような悲劇が起これば、安倍首相の広報機関と化したマスコミは過激なナショナリズムを煽り立てるでしょう。危うい状況になります。
安倍首相を支持する国は、米国と米国に従うごく少数の国になるでしょう。そのとき、安倍首相は米国政府の要求を拒否できなくなります。集団的自衛権行使のための日本の安保法制整備もTPP交渉も、米国政府ペースで進められることになるでしょう。安倍首相の「中国嫌い」と「歴史修正主義」は、日本を国際的に孤立に導くでしょう。日本の世論は安倍首相を支持するマスコミに誘導されていますが、この代償は高いものにつくでしょう。
◆米国に弄ばれる日本
安倍政権のもとで中国との政府間関係は冷え切っています。中国は経済面での主たるパートナーをドイツにすることにしています。東北アジアにおける日米同盟との対立を緩和しつつ、経済拡大の方向をシルクロードに求めています。世界から孤立化を深める安倍政権は、米国に縋りつくでしょう。TPP交渉において日本の国益は損なわれるでしょう。
日本にとって最も大切な農業と農業者を、日本政府が守ろうとしないという事態が現出するでしょう。この現実に、日本国民は気づかなければなりません。目を覚ますべきです。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】野菜類、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 愛知県2025年10月20日
-
シンとんぼ(164)-食料・農業・農村基本計画(6)-2025年10月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(81)【防除学習帖】第320回2025年10月18日
-
農薬の正しい使い方(54)【今さら聞けない営農情報】第320回2025年10月18日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第114回2025年10月18日
-
【注意報】カンキツ類に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(1)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(2)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(3)2025年10月17日
-
25年度上期販売乳量 生産1.3%増も、受託戸数9500割れ2025年10月17日
-
(457)「人間は『入力する』葦か?」という教育現場からの問い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月17日
-
みのりカフェ 元気市広島店「季節野菜のグリーンスムージー」特別価格で提供 JA全農2025年10月17日
-
JA全農主催「WCBF少年野球教室」群馬県太田市で25日に開催2025年10月17日
-
【地域を診る】統計調査はどこまで地域の姿を明らかにできるのか 国勢調査と農林業センサス 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年10月17日
-
岐阜の飛騨牛や柿・栗など「飛騨・美濃うまいもん広場」で販売 JAタウン2025年10月17日
-
JA佐渡と連携したツアー「おけさ柿 収穫体験プラン」発売 佐渡汽船2025年10月17日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」 クイズキャンペーン開始 JAグループ2025年10月17日
-
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へバトンタッチ 「次の万博は、横浜で」 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月17日
-
農薬出荷数量は0.5%増、農薬出荷金額は3.5%増 2025年農薬年度8月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年10月17日
-
鳥取県で一緒に農業をしよう!「第3回とっとり農業人フェア」開催2025年10月17日