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【コラム・森田実の政治評論】橋下の挫折・米国のアジア分断の野望に踊らされる安倍政権2015年5月29日

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【政治評論家・東日本国際大学客員教授 森田実】

 5月17日の大阪市民の投票の結果、大阪都構想は否決されました。これにともない橋本徹市長は、2015年12月の大阪市長任期終了とともに政界からの引退を表明しました。過去8年間にわたって大阪府民・市民だけでなく日本中を騒がしてきた橋下劇場政治が終わることになります。このこと自体は大変によいことだと私は思います。

「人間には他のあらゆる罪悪がそこから出てくる二つの主な罪悪がある。すなわち短気と怠惰」  (カフカ)

◆「橋下徹」挫折の政治的意味

 5月17日の大阪市民の投票で橋下市長が勝利したら、大阪都構想をめぐる紛争は果てしなく続くことになったでしょう。それだけではありません。安倍首相、橋下市長の連携によって国民世論を憲法改正の方向へ引っ張ることになり、日本国内における国民を二分する紛争は果てしなく続くことになったでしょう。しかし、橋下政治の衰退によって大阪は無限紛争の危機を回避することができました。同時に、日本を無用に混乱させてきた攪乱要因の一つが消えます。大阪の復活のためには全市民の協力が必要です。分裂していては復活は困難です。大阪は協力の時代に入ります。日本全体も調和の時代をめざすべきです。


◆安倍首相がめざす従米軍国主義への道

 橋下徹氏が国政への影響力を失ったからといって、安倍首相の、平和憲法を否定し日本の自衛隊が米軍とともに全世界で軍事行動を展開する方向への安保法制整備の動きが弱まるわけではありません。安倍首相の憲法改正への熱意が衰退するわけではありません。
 安倍首相の、平和憲法を否定し日本を「戦争する国」への方向転換を行うための安保法制整備は、米国政府の強い要請にもとづくものです。安倍首相が弱気になれば、米国政府から見捨てられるおそれがあるのです。安倍首相は、米国政府にネジを巻かれて突っ走るしか日本の政治権力者としての自らの地位を守る道はないのです。しかも安倍首相が執念を燃やしている憲法改正を米国政府は黙認しているのです。米国政府が安倍首相に求めているのは、日本の自衛隊を米国政府の指示に従って戦争をする軍隊にすることです。


◆首相の暴走を止める抵抗力は虚弱

 米国政府の全面的支持を取りつけた安倍政権は強大な政権になりました。安倍政権の強みは、第一に自民党内に批判勢力が存在しないことです。自民党は昔のソ連共産党的な一枚岩の政党になっています。第二に、公明党がブレーキ政党としての役割を果たすことができなくなりました。米国政府の安倍首相への積極的支持と無関係ではないと思います。第三に、野党の中に安倍政権支持者が少なくないことです。安倍政権との全面的対決に燃えている国会議員は、全国会議員の一割にも達していないのです。抵抗勢力は虚弱です。
 さらに大きいのはマスコミの安倍支持です。最も影響力の大きい中央のテレビはすべて安倍内閣にコントロールされてしまっています。新聞も、中央紙は安倍首相支持が主流となっています。一部中立系新聞はありますが、ほとんどが及び腰です。安倍政権側から圧力があればおとなしくなります。マスコミは安倍政権の広報機関化しています。
 官界も経済界も安倍政権支持です。批判勢力らしい批判勢力はいません。
 国民世論は反中国ナショナリズムに引きずられています。大多数の日本国民の意識が、マスコミの「反中・嫌中報道」にマインドコントロールされ、反中国ナショナリズムの虜になってしまっているのです。国民の多くが米国政府にマインドコントロールされてしまっていると言って過言ではありません。「米国は善、中国は悪」を信じ込まされてしまっているのです。ただし、「米国は善、中国は悪」は大きな間違いです。正されるべきです。
 このような状況からすると、安倍首相による性急な日本の従米軍国主義化が達成される確率はきわめて高いと考えざるをえないのです。これは戦争への道です。
 日本は大きな歴史の曲がり角を曲がろうとしているのです。危険な方向に、です。


◆8月安倍談話をめぐる中韓との対立

 安倍首相は「村山談話」の中心を占めている「謝罪」を撤回してしまおうとしています。安倍首相は「反省」の強調だけで乗り切ろうとしていますが、いったん日本政府が公式に表明した「謝罪」を取り消すことは、中国、韓国の強い抵抗を生むことになるでしょう。米国政府が黙認しても中韓両国は許さないでしょう。ここに安倍政権が陥る「罠」があります。2015年8月15日以後、日本と中韓両国との友好関係は崩れる危険があります。

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