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【コラム・ここがカンジん】次なる「王手飛車取り」2015年6月3日

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【福間莞爾 / 総合JA研究会主宰】

 今次農協法改正の骨格は、2月12日の安倍首相の所信表明演説に合わせて行われた8日のJAグループと政府・自民党の間の折衝で決まった。ここで、JAは政府から極め付きの「王手飛車取り」の手を打たれ、万事休した。

◆准組合員問題

 通常、この場合、その将棋は負け将棋である。「王手飛車取り」とは言うまでもなく、中央会制度の廃止か、准組合員の事業利用制限かの二者択一であり、全中会長は前者を飲まざるを得なかった。
 国会審議も始まっていないのになぜこのような決断をしなければならなかったのか、ここに、これまでJA全中が主導したJA改編反対運動の結果がすべて凝縮されているといってよい。
 その意味するところは、農水省とJAグループとの間で職能組合と地域組合の方向で大きな亀裂があるにもかかわらず、JAは相変わらず旧来の内向きの政府・与党(自民党)・団体のトライアングルの中で事態の収拾を図ろうとしてきたということに尽きる。
 今やこのトライアングルは崩れ、政府の意向はJAと違い、与党もこれに同調している。こうした教訓からは、今後のJA運動は、組合員に依拠し、地域住民の理解を得た開かれたものでなければならないということになる。
 ところで、政府が考える「王手飛車取り」の次の一手は何が考えられるのか。それはズバリ、JA出資の信用・共済事業の(協同)会社化をとるか、准組合員の事業利用制限をとるかの二者択一ではないか。信用・共済事業が会社になれば、准組合員利用はおろか員外利用規制の問題もクリアできる。こんなよい抜け道はない。
 ただし、この選択肢をとればJAは信用・共済事業の分離のみならず、この分野でJAは協同組合をやめるという取り返しのつかない代償を払うことになる。今のところJA出資の株式会社はJAが支配する会社として株式の譲渡制限などをかけることが想定されているが、JA全額出資の会社だからといって将来的に准組合員の利用や員外利用が無制限に許されるはずもなく、いずれJA以外の者が出資できる会社への改編が強要されるだろう。
 一方、准組合員問題を解決できる方策にもなるJA出資の信用・共済事業の会社化をとるか、准組合員の事業利用制限をとるかの二者択一を出された場合、JAは自信をもって二つとも拒否できるだろうか。
 准組合員問題は、JA組織の性格づけとも絡んで、農水省・JAグループともこれまでタブー視してきた厄介な問題だが、それにしても、今回「王手飛車取り」の一手として繰り出した准組合員問題の効き目に驚いているのは、他ならぬ当の農水省ではなかったのか。
 今回の農協法改正後に残されているのは、信用・共済事業の組織再編(分離)と准組合員の利用規制の問題である。言うまでもなく、准組合員の利用が多いのは信用・共済事業であり、両者は極めて密接に関連している。JAはこの問題をどのように解決していくのか。従来通りの運営を続け、准組合員についても引き続きパートナーとして位置付けるなどという、よいとこ取りの安易な方策では、到底事態を切り抜けることはできないだろう。
 いま試されているのは、JAの協同組合運動の本気度と真価である。准組合員からJA運営への意思反映への意向は強くないなどといって無視するようではJAの思い上がりというものだろう。准組合員とひざを交え、農業振興のためには、准組合員の理解と協力が必要で、意思反映にも積極的に加わってほしいと訴えていくことに何のためらいがあろうか。
 准組合員への制限つきの、二分の一・三分の一共益権(議決権)もしくは正組合員の拒否権付きの共益権の存在さえも議論せず、観念的に共益権そのものを頭から否定することなどは論外である。「王手飛車取り」の手を打たれた場合、勝負はそこで終わる。今からそうした状況をつくらないための取り組みが求められている。その意味で、JAの総合調整・代表機能を持つJA全中の責任と役割はとてつもなく大きい。

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