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地方創生という傲慢2015年6月8日

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【森島 賢】

 地方創生とか地方創成という言葉は傲慢だ。農協の自己改革元年なども傲慢だ。一強政治の驕りが、そういう言葉になるのだろう。
 これは「現実的なるものは合理的」が分かっていない。現実の不合理が何に起因するか、を考えずに現実を無視し、全否定して白紙の上に設計図を書く。これは知性の怠慢でもある。
 東畑精一先生の名言に「時計を止めないで時計をなおすのが農業政策の難しさだ」がある。ここには、人間をみる暖かい眼差しがある。この名言が、まるで分かっていない。食うか食われるか、の野獣の目しかない。

 地方創生、地方創成などというが、地方は大昔から存在していて、多くの人たちが、そこで生きてきたし、生きている。創成と創生との違いも分からない。珍奇な言葉を使った、こけおどし、でしかない。
 農協の自己改革元年もそうだ。自己改革は説教されるまでもなく不断に行っている。そうした農協の努力をみずに全否定し、現実にある農協をつぶし、新しい農協を作る、というのだ。
 地方の人たちが培ってきた歴史や文化、そこに生きてきた農業者たちが築き上げた農協を全て否定し、農業を破壊し、農業者を追い払って、新しい設計図を作り、新しい地方を創り、農業を創り、農協を創るというのだろう。それは、人間の否定である。そんな農協は名ばかりで、協同組合ではない。

 これは、地方で現実に生きる農業者を邪魔者扱いし、排除して、いったん無人の更地にし、その上に新しい農業・農協を設計するという権力者の奢った考えである。
 これは、戦前の植民主義者の傲慢な考えでもある。植民地で生きてきた人たちを放逐し、本国の「余剰」で邪魔な人たちをそこに植えつけ、勝手に生きてゆけ、という考えである。
 こうした考えは、現場で生きている人たちを人間とみていない。地方で生きている農業者を人間としてみていない。そうした傲慢な考えである。

 創成や創生や元年などというと、閉塞した現状を打破する明るい希望に満ちた考えのように聞こえるが、そうではない。不連続な改革などというと、新鮮に聞こえるが、そうではない。ただ現状をぶち壊すだけだ。将来への展望はない。
 こうした内容の空疎な言葉の遊びは聞き飽きた。うんざりしている。それだけではない。地方で懸命に生きている人たち、農業に丹精をこめている人たちを愚弄するものだ。

 そういうと、守旧派というレッテルをはって、悪しざまに罵る。そうして、正義の改革者のように振舞う。
 だが、そんなことを他人様に言われる筋合いはない。友情ある善意の忠告ならともかく、オレの思い通りにしなければ農協をつぶす、などという脅しは全くの筋違いだ。
 いまの政治は安保法制の問題に隠れていて、農政が注目されていない。しかし、農協つぶしの農協法案の審議は陰で進んでいる。見逃すわけにはいかない。

 

(前回 協同組合間の競争

(前々回 民主と維新の合同勉強会に期待

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