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【リレー談話室・JAの現場から】職域含む地域組合へ2015年7月7日

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【前田 憲成 / 兵庫県・JA兵庫六甲常務理事】

 改正農協法の衆議院審議が大詰めを迎えているとの報道があった。(6月25日現在)。農業・農協系の新聞では、「中央会改革が農業者の所得向上にどう結びつくのか未だに不明」で、国会審議の過程で農協の「職能組合化」としての色合いが鮮明になり、併せて「准組合員の利用規制導入の余地を十分に残している」ことなどを懸念する。

これに対して、農協に理解を寄せる識者や農協界のリーダーには、「総合農協の解体をもくろむものであり、到底受け入れられない」との主張はあるものの、身近で平均的な農家にあっては、これに憤る声は決して大きくはない。まして一般市民、大勢としての国民世論も同様ではないだろうか。
 現実には、総合農協が組合員や地域社会、国民経済の中で、十分に評価される存在にはなり得ていないと感じる。「いやいや、そんなことはない、農協はよくやっている」というのは、われわれ農協人の自己満足ではないか。
 では、なぜ十分に評価されていないのか。何が農家にとってもの足りないのか。それは、農家が「稼ぐ、メシが食える」ところで、圧倒的に世話をする力が足りないからではないか。
 これには時代的な背景があり、農協の力ではどうしようもない日本経済の流れはある。農家の大宗が「米」を作りメシが食えた時代は遠くに去り、今では、普通に農家をやっていてはメシが食えない。
 その中でも、メシが食える先進的な取り組みを進める「個体」も多くあることは間違いないが、「生業」としての農業が成り立たなくなったことが大きい。
 一方で、現在の総合農協は、JAにとって稼げる事業が、貯金・共済など、家計の「消費」分野に偏っている。「稼いだ上がりで貯金をして再生産と将来に備え、共済でリスクに備えてもらう」というビジネスモデルが、「稼ぐところは十分な世話ができず」、農業以外で農家が稼いだものを「貯金や共済で利用してもらう」状態が一般的であり、ここに現在の総合農協が評価されない本質がある。
 確かに、全国的には農畜産物販売事業で量・質ともに大きな力を発揮している農協は少なからずある。しかし、あくまで一般的・平均的にみてである。そこに、産業政策として「職能組合」への純化を求める意見に一定の賛同があるのではないか。
 とはいえ、「職能組合」がこれからの農協なのかというと、そうとは言えない。この組合形態が企業・組織として発展する可能性はあるとしても、「農業でメシを食う者」を力一杯支援し、地域住民との利害を調整し、地域とつながっていく装置としての役割を果たせるのかというと、機能と力量が「専門的」「限定的」となるため、大いに疑問符がつく。
 大規模農家や農業法人を含むオール地域住民をステークホルダー(利害関係者)とし、構成員とする「地域協同組合」の必要性も大いに議論し認知されるべきである。「職能組合」と「地域協同組合」とは、二者択一をせまるものではなく、「地域協同組合の中に職能組合は包含(内包)される」ものなのではないか。

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