【リレー談話室・JAの現場から】改革をチャンスに2015年7月14日
物事を大きく変えようとすると、大抵一方的で片寄ってしまう。
国が示す「農業の成長産業化」、然りである。中身は、農地の集積、農産物の海外輸出、農業の6次産業化だ。方向性には異論はないが、収益第一主義の企業参入や企業的大規模農家だけへの思い入れには、賛成し兼ねる。これらによって地域が席巻され過ぎると、地域バランスが崩れる。
長年地域を支えてきたのは多くの零細兼業農家であり、大規模農家だけではない。こうした人々に関係し続けてきたJAは、形態が相反する農家対応へのバランス感覚を問われる。「地域の活性化」と口で言うのは簡単だが、地域の土台を長く維持していくのは難しい。
ところで、この政策の中には「規制改革」の名のもとに、「JA改革」がある。言い過ぎかもしれないが、端的に言うと「農政で農業が成長しないのはJAのせい。だから、総合事業を営むJAは改革(解体)する必要がある」である。
これは多くの人たちが言っているように「協同組織の否定」として受け止めるしかない。たとえJAが職能組合であったとしても、国内農業が成長していなければ同じことを言われたであろうが、片寄り過ぎている。
これは、一部の事業(農業以外)成功者たちだけの考え方に傾いたことによるもので、甚だ残念なことである。しかし、私は彼らの言っていることがすべて拙いとは思っていない。むしろ彼らの言っていることを参考にして、自JAを見詰め直すチャンスにしなければと思っている。時代の流れの見方、事業展開の見極め等々。
顧みて、JAの事業展開は総じて「相互扶助の精神」に基づく「運動体」先行ではなかったか。だから、「個々の事業の安定」よりも「事業を実施する」ことに重点があったように思う。
もちろん、経営体の基本となる考え方は大事だと思うが、事業展開では将来に亘って必要性が維持されるかよくよく吟味しておくべきと思う。自分のJAの足元をよく見詰め、事業展開の意識バランスが崩れないよう注意が必要だ。
さて、JAグループの自己改革。その目的は農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化だ。いわゆる「地域協同組合」の方向性だ。今までと変わりはない。果たして、この内容で改革として判断してもらえるのだろうかと不安が残る。
事業の中では、営農経済事業改革が中心。示されたメニューは幾つもあるが、どのJAでも前述の目的に向かってさまざまな取り組みはされていると思う。示された方法に取り組むのも良いが、今やっていることで成果が上がるのであれば、変える必要はない。
JAを利用し活動する人々の意向が反映され、将来的にも必要と認知されていることが大事だ。
けれども「変えた方が良い」と認識されていることは、この改革を「チャンス」として変える道筋を付けることだ。私のJAでもよくあることだが、今までどおりを繰り返したがる。組織全体がこうなったら、物事の実施スピードは極端に遅くなるだけで、組織は気づかないうちに衰退していく。
組織の中では、いつも「変革」を意識する者が居なくなったら、終わりだ。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日