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【コラム・森田実の政治評論】安倍首相に問います―臨時国会を開かなくてよいのですか?!2015年10月21日

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【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

国民から遊離した観念主導の政策打ち上げを急ぐ安倍政権

 安倍首相は、2015年秋の臨時国会を開く気がないようですが、日本の政治に非常に多くの課題が山積しているのに、臨時国会を開かなくてよいのでしょうか。国会と政府のサボタージュを許してよいのですか。あまりにも無責任ではないでしょうか?! 日本外交のあり方、TPP、沖縄問題、災害対策、経済政策、経営モラルの低下など、国会できちんと議論すべきです。

「君子は言に訥にして行いに敏ならんと欲す」(孔子)

 安倍首相は「言葉」先行、「実行」後回しの政治家です。安倍内閣は手練手管を多用する政権です。有言不実行内閣です。安倍内閣は国民の人気ばかり気にしています。マスコミ報道を異常に気にする政権です。めまぐるしく新しい言葉を打ち出し、サプライズを狙い、マスコミを動かして大宣伝し、国民の目をくらませています。このような政府は、平時では国民の批判を受けて、安定しませんが、独裁政権のもとであれば、安定可能です。いまの日本の政界は安倍首相独裁の状況です。
 安倍内閣は通常国会でかなり無理をして強引に安保法制を成立させました。ところが通常国会が終了すると、すぐさま一転して、掌を返すように、あたかも安保法制の大混乱を忘れてしまったかのように、突然、「経済第一」の政策を打ち出しました。新しいスローガンは「1億総活躍社会」です。具体的手段のない意味不明のスローガンです。
 安倍首相は「アベノミクスは第二ステージに入った」と宣言しましたが、今までの「アベノミクスの第一ステージ」についての何らの総括も反省もありません。第一ステージの評価もなく、軽すぎる方向転換です。あまりにも無責任です。その上で新しい3本の矢を打ち出しました。第一の矢は「GDPを600兆円にする」、第二の矢は「希望出生率1.8の実現」、第三の矢は「介護離職ゼロをめざす」です。いずれも主観的・観念的なもので、具体策もなく、一般国民にはほとんど理解ができない政策です。しかも実行の時期は、安倍首相の自民党総裁の任期の終了時よりもずっと先です。絵に画いた餅ばかり並べています。安倍内閣は宣伝ばかりの内閣です。
 TPP大筋合意を受けての国内対策は無責任と言ってよいほど具体的な対策はなく、泥縄的です。安倍首相は「TPP交渉にあたっての国会決議は守った」と大見得を切っていますが、農業関係者のほとんどは納得していません。農業者は政治に裏切られているばかりで、政府を信ずることができなくなっています。いままでの「守りの農業」から「攻めの農業」へ、と叫んでいますが、空理空論にすぎません。
 それに安倍首相は米国のオバマ大統領に追従して国際緊張を激化させています。日中関係の悪化は深刻です。安倍首相とオバマ米政権が推進してきた日米安保法制整備と米国主導のTPP推進の狙いは、中国を包囲し孤立化させ、最終的には1980年代にレーガン米政権がやったソ連邦解体のような中国共産主義体制解体にあるようです。しかし、柳の下に2匹目のどじょうを期待するのはナンセンスです。いまは平和共存政策をとるべきです。
 安倍政権とオバマ政権が行っている、この中国包囲網形成・中国封じ込め政策には、戦争の危険が伴っています。まず直接的な軍事面での危険性があります。東アジアで日米軍事同盟対中国の戦争が起こるおそれがあるのです。オバマ大統領と安倍首相がさかんに中国軍部と政府を挑発しています。これは直ちにやめるべきです。
 もう一つは、経済面での大混乱が起きる危険性が大きいのです。世界経済が混乱状態になったら世界経済に責任をもつ国の政府が協調しなければなりません。しかし、米国政府と日本政府は中国政府との平和的協議を行う意思はありません。無責任です。
 日本政府と米国政府の中国包囲網による抑え込み政策が展開され続ける限り、東アジアにおける軍事的、経済的危機は不可避です。こんな状況では経済成長は困難です。安倍政権とオバマ政権の中国抑え込み政策を止める必要があります。日本にできることは、安倍政治批判の世論を高め次の国政選挙(2016年参院選)において安倍政治を止めることです。
 日本の政治は難問山積です。直ちに臨時国会を開く必要があります。安倍首相は、臨時国会開催に消極的ですが、これは政府としての責任放棄です。
 外交・防衛政策とくに安保法制、TPP、沖縄問題、経済状況と対策、災害対策など、国会で議論すべき問題が非常に多いのです。
 安倍首相が国会を逃げているとすれば、その責任は重大です。安倍首相は国民のことを真剣に考えるべきです。いま、日本は危機です。全国民が力を合わせる必要があります。政治家も力を合わせるべきです。臨時国会の開催を強く要求します。

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