【コラム・森田実の政治評論】アベノミクスに立ち塞がる増税と世界経済不況 ―安倍政権の矛盾動揺の背景2016年4月6日
今の日本政府の経済政策は、2012年に前民主党野田政権のもとで為された「民主・自民・公明三党合意」(二段階での10%への消費増税)と2013年に安倍政権が打ち出したデフレ脱却をめざすアベノミクス―この二つの政策の間の矛盾に揺れ続けています。
「広く会議を興し万機公論に決すべし」(五箇条誓文)
◆増税に足をすくわれたアベノミクス
前民主党政権は異常な政権でした。とくに二代目と三代目は消費増税を懇願する財務省のカイライ政権と化し、公約にもない10%への消費増税を推進しました。野田政権は、自民、公明両党と合意し、法律案を成立させ、衆議院を解散し、総選挙を実施し、自滅しました。 前野田民主党政権は、とくに重大な三つの負の遺産を遺しました。一つは日中平和友好関係を破壊し、日中対立・アジア分裂をつくり出したことです。第二は、自民党に対抗する唯一の政党である民主党を破壊し、小選挙区選挙制度下で自民一極体制を創ったことです。第三は、不況下での大増税によりデフレの恒久化をはかったことです。
この三大歴史的罪悪は、日本の歴史に深い傷を残しました。民主党という政党はもはやこの世に存在していませんが、いまだ民進党の中に、野田政権時代の幹部はいます。明確な自己批判だけはすべきです。
安倍政権は、前野田民主党内閣の日本国民にとっての負の遺産を、自民党に正の遺産としてフル活用してきました。安倍政権は幸運すぎるほど幸運な政権です。
しかし、一つだけ安倍政権の足を引っ張っているものがあります。三党合意による消費増税です。第一段階の8%への引き上げは安倍政権のもとで実行されました。これが安倍政権の足を引っ張っています。
安倍政権は、三党合意による大増税を継承しながら、デフレ脱却のためのアベノミクスを推進しました。しかし、アベノミクスは所期の成果を上げることはできません。国民の間にはアベノミクス失敗論が広がり始めているほどです。
◆安倍政権のジレンマ
安倍政権のデフレ脱却のための金融・財政・成長政策は効果を上げることできません。三党合意による大増税に足をすくわれたのです。
安倍政権は、最近ようやく、一方で三党合意による大増税を実施しながらデフレ脱却を実践することは困難であることに気づきました。その結果、第二段階の10%への引上げの時期を延期しました。このために安倍総理は衆院解散・衆院選を断行しました。
しかし、時間が過ぎるのははやい。延ばした期限が再び迫ってきています。安倍首相の心はハムレットのようにみえます。 はっきり言いましょう。「三党合意による大増税」とデフレ脱却をめざすアベノミクスは両立しないことが明らかになったのです。アベノミクスが成功するためには、三党合意による第二段階の増税を大幅に延期する以外の手段はなくなっているのです。安倍内閣は重大な岐路に立たされているのです。
◆衆参同日選か秋の解散か
いまの国内政局は、伊勢志摩サミット直後の衆院解散、7月10日の衆参同日選挙が行われるとの想定を前提にして動いています。安倍総理の衆議院解散の大義名分は「三党合意の見直し」すなわち増税先送りです。
不況下の大増税は経済を破壊します。深刻な不況下で大増税を考えること自体が異常です。12年当時の政権リーダーたちは異常思考のとりこになっていました。
いま政党内には二つの見方があります。第一はいまの安倍政権がとっている両立路線です。増税もアベノミクスも同時並行的に実行するという考え方です。第二は、三党合意を停止し、アベノミクス一本に純化するというものです。第二の方向をとるには、衆議院解散総選挙などの劇的手段を経なければなりません。2016年政権のポイントは衆院解散の時期です。
◆幅広い経済大論争を!
アベノミクスは明らかに行き詰まっています。世界経済情勢もきびしさを増しています。このまま第二段階の10%への増税を実施すればアベノミクスが失敗することは明らかです。アベノミクス崩壊は安倍政権の挫折に連なります。長期政権への強い願望をもつ総理は自らの延命のためにはあえて非常手段もいとわないでしょう。
これから本格的な経済政策論争が始まりますが、この機会に、より根本的な問題を議論すべきです。 第一は、新自由主義・競争至上主義グローバリズムの限界についてです。1970年代の石油危機時のサッチャー・レーガン革命を出発点とする新自由主義グローバリズムは人類社会に甚大な被害をもたらしました。見直すべきです。
第二は、新自由主義グローバリズム下の農業政策の根本的見直しです。新修正資本主義下での農業のあり方を模索すべきです。
幅広い議論が、新たな可能性を作り出すでしょう。
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