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【コラム・森田実の政治評論】攻める「民共」、守りの「自公」2016年6月23日

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【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

7.10参院選、7.31都知事選の底流

「水は舟を載せ、亦、舟を覆す」(荀子)


◆世界政治の混迷の中で
 
 水は国民、舟は政権のことです。政権は民によって養われるが同時に民によって滅ぼされます。民の心が安定していれば政権は安泰ですが、民の心が離れると政権の基盤は崩壊します。最近「水」が動き始めています。
 世界秩序が崩壊し始めています。到るところで対立と紛争が起きています。民族間の対立だけでなく民族内部の対立が激化しています。人民大衆の既存の政権に対する不信は増しています。
 このような荒れ模様の世界政治のなかで、目下の安倍政権は国政選挙において勝利をつづけています。2012年12月の衆院選、2013年7月の参院選、2014年12月の衆院選、と三連勝しています。安倍政権はこの7月10日の参院選で国政選挙4連勝を狙っていますが、この安倍政権の前に立ち塞がっているのが「民共連携」です。岡田民進党代表と志位共産党委員長を結合させ「自公」対「民共」対立軸を演出しているのは小沢一郎氏だと言われています。
 「民共連携」の主導権をとっているのは共産党です。共産党の勢いが急激に強くなってきているからです。
  

◆共産党伸長の背景
  
 共産主義を生み出したのは資本主義の成長による国民社会の少数の富裕層と大多数の貧困層への分裂でした。富裕層は支配階級になり貧困層は被支配階級にされました。共産主義の思想は貧困層・被支配階級の解放の思想として生まれたのです。
 共産主義が急速に拡大したのは戦争と戦争直後の混乱期でした。第一次大戦中にロシア革命が起き、革命政権が成立しました。第一次大戦直後に各国に共産党が結成され、資本主義打倒をめざす共産主義革命運動は全世界に広がりました。
 第二次大戦直後に東欧諸国に共産党政権が次々と成立しました。さらに共産主義革命はベトナム、キューバに広がりました。
 こうして共産主義圏が確立し、資本主義に対抗する政権勢力に成長しました。
 対抗する政権勢力に成長しました。
 しかし1970年代後半におきたイギリスにおけるサッチャー革命と1980年代に起きたアメリカにおけるレーガン革命を契機に、攻守が逆転しました。米国を先頭とする先進資本主義国は共産主義を圧倒したのです。一時は共産主義の時代は終ったといわれるほど共産主義は弱体化しました。
 だが先進資本主義絶対的優位の時代に限界がおとずれました。米国もEUも混迷期に入りました。米国の力の衰えとともに、世界各地で先進資本主義国の支配への抵抗と反乱が始まりました。全世界が混乱期に突入しました。新興国、途上国中心にテロリストが勢力を広げています。
 先進資本主義国では経済的格差の拡大が顕著になり、貧困層の不満が高まっています。世界中の若い学生、知識層が革命思想に傾倒し始めています。
 日本における共産党の勢力拡大は、経済的社会的格差拡大が背景にあります。日本共産党は国会における議席数では、民進党に次ぐ野党第二党ですが、2016年7月10日の参院選の野党協力においては、主導権を握りました。
 参院選は守りの「自公」に対して攻めの共産党主導の民共連携、という構図になっています。
 舛添東京都知事を辞任させたのは都議会第一党の共産党でした。7月31日投票の東京都地事選の真の主役は共産党と言って過言ではないと思います。
 日本共産党が急速に伸長してきた主な背景の第一は、若年層の失業増です。若い失業者の一部が共産党に入党し、共産党が若返りました。第二は、弱体化した民進党が共産党との連携に踏み切ったこと。第三は世界中が紛争の時代に入り世論が過激化し戦う政治勢力に親近感をもち始めたことです。極端な考えをもった過激な政治勢力の時代がきているのです。


◆「平和の危機」「道徳の危機」の克服が課題

 過激な紛争を抑止するためには、対話の政治を確立する必要があります。日本の政治の原点は「和を以って尊しと為す」です。
 時代が大きく変化する時期は、同時に危機の時代です。危機のなかでとくに注意すべきは「平和の危機」と「道徳の危機」です。選挙において、私たちは真の平和主義者と倫理面で卓越した政治家と農業を大切にする候補者を支持したいと思います。

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