(001)世界の人口:「横、縦、そして・・・」2016年10月7日
食料問題は関心が高いテーマの1つである。その理由は、入りやすいだけでなく、多くの人にとって「食べること」は生存の絶対条件であると同時に生きる楽しみでもあるからだ。目の前の食べ物の一つ一つにグローバルな世界とローカルな世界が抱えている様々な問題が凝縮されている。人は毎日の食事を通して直接的にも間接的にも「“世界の今“を見ているのである。
そのため、このコラムは人口に関する話から始めることとしたい。食料問題の根幹は人口であり、人口に関する基本的な動向と数値を押さえておくことは食料問題を理解するためには極めて重要であるからだ。
さて、最新の国際連合の資料(World Population Prospects:The 2015 Edition)によると、2015年時点で73億人の世界人口は、2030年には85億人、2050年には97億人に達し、2100年には112億人に達する見込みである(いずれも中位推計の値)。これをどのように見るか、ここでは「横と縦」の2つのアプローチをしてみたい。
最初に「横」からの視点である。これはある特定時点での割合を見て、物事を判断する方法である。2015年の世界は、アジアの人口が世界の67%を占め、次いでアフリカが16%と、この両地域だけで83%を占めている。これは経営における業界シェアの分析に似ている。経営ではシェア67%といえば、ほぼ安定的な独走状態に近い。企業経営者の立場から見れば十分に喜ばしいことであるが、食料や人口、そして生活水準や環境などに関する限り、ここには多くの課題が存在している点は言うまでもない。
次に「縦」からの視点で見てみよう。これは物事を時系列で見る方法である。ある時点の業界シェアを見る方法が「横」の視点とすれば、シェアが時間の流れとともにどのように推移してきたか、そして今後、どうなるかという角度から見る方法である。
比較を簡単にするために2015年から2050年までの35年間で試算すると、世界人口の年平均成長率は概ね0.8%となる。地域別には、アフリカが2.1%、アジアが0.2%、ヨーロッパが▲0.1%、ラテン・アメリカおよびカリブ海諸国が0.6%、北米が0.5%、オセアニアが1.1%である。
35年間の年平均成長率0.8%は一見少なく感じるかもしれないが、これを企業の売上高として考えてみると、その着実な成長性がよくわかる。売上高73億円の企業が毎年0.8%、つまり約6,000万円の売上増を35年間継続することと同じである。急成長する企業には多くの人が注目するが、着実な成長をしている企業にはなかなか目がいかない。気が付いた段階では極めて大きな規模に到達しているということと同じである。
国連の推計が正しいとすると、2015年の世界と2035年の世界は人口総数だけでなく、その地域別構成、つまり市場と需要が大きく異なる点が見てとれる。2100年になればその違いは一層大きくなる。これが「横」と「縦」の分析から見えてくる世界の大枠である。
さらに正確に将来の姿をつかむためには「横」「縦」に加え「高さ/深さ」の分析が必要である。これは人口推計で言えば、例えば、年齢別の人口割合などである。そこで世界人口の年齢別推移(0-14歳、15-64歳、65歳以上)を見ると、112億人が生きる22世紀とは、14歳以下が現在と同じ約20億人であるのに対し、65歳以上は1950年当時の総人口と同じ25億人という世界になることがわかる。
* * *
さて、将来の世界をどのように想像するかはもちろん、個々人の自由である。ただし、楽観的すぎても、逆に悲観的過ぎても無理がある。一定の前提を置いた上で、客観的に物事を捉え、論理的な対応策を検討していくしかないと考えられる。そこで、食料問題と人口については、同じデータを用いてもう少し検討してみたい。
重要な記事
最新の記事
-
3月の野菜生育状況と価格見通し きゅうり、なす、ピーマンは平年並みへ 農水省2025年3月5日
-
【機構改革】JA全農(4月1日付)2025年3月5日
-
民のかまど【小松泰信・地方の眼力】2025年3月5日
-
一括入札で単価抑える 学校給食への有機野菜導入で 一部報道が波紋2025年3月5日
-
ハウスキンカン出荷本格化 JA熊本うき2025年3月5日
-
「令和7年岩手県大船渡市における大規模火災」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年3月5日
-
JAタウン「ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」21日まで開催中2025年3月5日
-
医療研究に役立つ免疫不全ブタを小型化 広範な研究利用に期待 農研機構2025年3月5日
-
埼玉県育成品種米「彩のきずな」食味ランキングで5年連続6度目「特A」評価2025年3月5日
-
日本酒の未来語るシンポ 3月21日に開催 AgVenture Lab2025年3月5日
-
北海道十勝産ポップコーン TOHOシネマズ日本橋・六本木ヒルズで限定販売2025年3月5日
-
学生ビジネスプランコンテスト「JUMPVol.4」受賞チーム決定 AgVenture Lab2025年3月5日
-
常陸那珂事業所 新倉庫に着工 東洋埠頭2025年3月5日
-
直進アシスト機能搭載 乗用全自動野菜移植機「PW200Rシリーズ」発売 ヤンマーアグリ2025年3月5日
-
鳥インフル 米インディアナ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月5日
-
窒素に頼らず肥料コストを削減 青森県でセミナー開催 農機具王2025年3月5日
-
大阪で食を支える先進企業が集結「あぐりナビ就活FES.」新卒・中途同時開催2025年3月5日
-
子育て、農業、福祉など35団体へ2000万円を助成 パルシステムグループ2025年3月5日
-
高温ストレス下で植物の発芽を調節 タンパク質の活性化機構を解明 明治大2025年3月5日
-
ミルクチョコ柿の種やアーモンドなど5種「亀田の柿の種 トレイルミックス」発売2025年3月5日