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農協に3つの危機【普天間朝重・JAおきなわ専務】2016年10月25日

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【普天間朝重 JAおきなわ代表理事専務】

 農協に3つの危機が迫っている。1つはTPP,2つは農協改革(農協解体)、3つはマイナス金利。TPP問題は農業の危機、農協改革は組織の危機、マイナス金利は経営の危機だ。

 まずTPP問題。これは要するに農業面からすると(TPPは工業製品や医療・保険分野など多岐にわたっている)輸入自由化の問題。政府は「TPPで輸入農産物が大量に入ってきても国内対策をしっかりやるので農家への影響はない」と言っているが、本当にそうなのか。
 日本人の胃袋を一定とすると(実際には人口減と高齢化で胃袋は小さくなっている)、輸入農産物が大量に入ってくれば国産農産物には余剰が発生する。結果として農産物価格は低下する。
 だから政府は農産物輸出に力を入れ(国内余剰を外に吐き出す)、価格低下による農家所得の減少を補うため全農に生産資材価格の低減を迫っている。

  ☆  ☆  ☆

 農協改革もTPPにからんでいる。政府は「全国の8割の農地を2割の担い手に集積する」と言っている。TPPで安い農産物が入ってくるので、国内農業も合理化が必要。そのため小さい農家にはリタイアしてもらってその農地を担い手に集積するということ。
 これまで農協は規模の大小にかかわらずすべての農家を守ってきたので、農地集積を促進(小規模農家の離農促進)するためには農協を解体する必要がある。
 まず農協組織の頭である全中の一般社団法人化、次に全農の株式会社化、そして単協に対しては信用・共済事業の分離(県連、全国連への事業譲渡・代理店化)と准組合員の利用規制などを行うとしている。
 こうしたことが起きると沖縄県のように離島の多い地域は大変だ。人口減少が著しい離島で離農を促進する形で農地集積を進めるとますます人口は減少し、地域の存続すら危うくなってくるのではないか。離農した農家はどこに行けばいいのか。また小さな離島では金融機関は郵便局と農協(支店)しかない。スーパーやコンビニもないので農協の購買店舗が頼り。ガソリンスタンドもそうだ。そうした地域で「准組合員は"これだけしか"農協を利用できませんよ(利用規制)」となればそれこそ島の人たちの生活はどうなるのか。

  ☆  ☆  ☆

 マイナス金利は農協だけでなく金融機関全体に影響を与えている。金融機関は預貯金を集め、これを運用して成り立っている。運用は貸出金が中心で余剰部分は有価証券などに投資する。その運用がマイナス金利で非常に困難になっていて、全体として利幅が縮小し、収益が悪化している。

  ☆  ☆  ☆

 さて、こうした3つの危機をどう乗り越えればいいのか。
 江戸時代の米沢藩主上杉鷹山は、深刻な財政危機で日本一貧乏な藩と言われた米沢藩を改革し、豊かな藩に生まれ変わらせたとして今なお多くの書物に登場するなど危機突破で最も参考になる人物だが、鷹山が改革するにあたって師と仰いだ細井平洲から受けた助言は、
(1)異常時には"異常な手段"が必要なこと、
(2)異常な手段は、まず藩主自らが実行し、家臣と藩民に範を示すこと、
(3)藩財政回復の資源は人と土以外にないこと、
というもの。
 では異常時の資源としての"人"とはどういう人材か。薩摩藩主島津斉彬の言葉を借りれば「付和雷同で意見を持たぬ者、10人が10人とも好む人材、彼らは非常事態に対応できない。偏屈な男(西郷隆盛のことを言っている)こそ国の宝である」。
 これを参考に役員自らの率先垂範はもとより(異常な手段とは?)、人材を育て・発掘し(偏屈な男はどこだ?)、迫りくる3つの危機を乗り越えていきたい。

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