助け合う仕組みを持つ地域をつくる2017年1月24日
人間だれしも老後も「幸せでいたい安心して暮らしたい」と思うのは当たり前のこと。この当たり前のことが現代社会においては実現できていない。介護保険の給付額は2025年には20兆円近くに膨らむと推定されている。2015年の2倍である。老夫婦や単身の世帯が増え家族の介護力は弱まっていく。しかも介護保険料を払う40歳以上の人は2021年をピークに減少に転ずる。財源が限られる中、公助・共助のみならず互助や自助の力をどう引き出すのか誰しもが避けて通れない未来の道である。
団塊の世代がすべて75歳を超える2025年問題は突然やってくるのではない。2018年度には、医療と介護の報酬同時改定が控えている。ここで大きな影響の出る改定がされるのは間違いないであろう。今後、制度改正が繰り返されれば、生活を支えるサービスを失う高齢者が大勢出る可能性がある。その高齢者を地域でどう支えていくのか。地域協同組合を標榜するJAにとっても最優先課題ともいえる。
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少し当組合の取り組みについて触れる。当組合では農村地域の健康管理活動に長い間取り組んできたがその経過の中で、将来を見据えた施設介護の重要性が認識され平成7年にJA長野厚生連による「社会福人ジェイエー長野会」が設立され「特別養護老人ホームうつくしの里」が開設された。開設に際してはJAの健康福祉積立金から3億円が出損され地元JAと極めてかかわりの深い施設として地域のボランティアの皆さん達から支えられてきた。
介護保険法がスタートしたのは平成12年であり、JAには「福祉相談センター」も開所された。そして、地域福祉の更なる充実を望む組合員の要望に応える形で「社会福祉法人松本ハイランド」が翌年設立され、「特別養護老人ホームゆめの里和田」が開設されたのは平成14年のことである。将来にわたって要介護者の支援を通じた農業生産力の維持、福祉を通じた協同活動による地域づくりに貢献したいとの思いを持ち、現在職員数270名余、特養2か所、老人ホーム、グループホーム等施設介護のみならず多くの事業を展開するに至っている。
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その施設介護を支える大きな役割を担っているのは、平成10年に活動が始まった助け合い組織「夢あわせの会」である。
家事援助はもとより施設のシーツ交換、喫茶ボランティア、清拭布の提供等にかかわる会員は約300名。そして財政面でこれを支ええる賛助会員は530名。利用会員は100名に達しようとしている。
それは、「人と人とのネットワークづくり」そのものであり、まさに協同組合が標榜する活動そのものでもある。人間が個人としては実現できないことを、他の人との協働によって達成するという意味でもある。
組合員の今日よりよい明日を実現し、安心して暮らせる豊かな地域社会の実現を基本目標に努力を重ねていく。夢あわせの会の活動を通じて、誰かの役に立とうという志が、自分もまわりも豊かにしていく、そんなお互いが助け合うシステムを創っていくことが大切。
願わくは、地域に戻ってきている男性が、このネットワークにひとりでも多くかかわることができれば、この会の大きな成長につながるものと、期待をしている。
自立した個人が集まった協同組合だからこそできること。やがて人々の助けによって自立し自分よりも弱いものを助ける、こういう良い循環を協同組合として支えていくことが大切。一人ひとりの組合員が「誰かの役に立とう」ということを意識した時、協同組合は質的にも一歩飛躍するのではないか。
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生きている意義だとか、生きがい、働きがいなど人々がともに暮らしていく上で大切な思いを分断し、すべてをバラバラにし、人と人を対立させ果しない競争に追い立てようとしている時代にあって、一服の清涼剤などと呑気なことを言っている場合ではないが、こうした取り組みが地域にしっかり根を張れば「岩盤」を破壊することはできないと思うのだが。
少子超高齢社会が到来し介護保険制度がずっと高齢社会を支え切れるのか全く不透明であり、自分たちで助け合う仕組みを持つ地域を作っていくことが何よりも大切だとアルプスの雪を見ながら思いを新たにしている。
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