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農地にもっと「絡む」農協へ2017年3月7日

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【前田憲成 JA兵庫六甲常務理事】

 農業・農村の現場では、急速に世代交代が進んでいる。第二次大戦後、農協発足時からの正組合員第一世代は既に80歳を大きく超え、第二世代も65歳の第二定年前後を迎えるような時代となった。

 また、近郷産地の趨勢をみると、家業の農家を専業で継いだ世代は第二世代までで、次の30代から40代前半の第三世代ではサラリーマンとして勤めにでている者が多いのが実態だ。
 特に、重量野菜の産地や花の産地は、重労働がつきものであったし、家族経営が成り立ち財産を残すぐらいに成功しようとすれば、感覚的にみて、しっかり働ける家族が3人から4人揃う期間が10年から15年必要であるから、なかなかそのように恵まれる農家は少なく、正組合員農家が安定兼業にシフトしていったのは自然の流れでもある。
 一方で、20代から30代の正組合員後継者をみると、近年の景気や産業構造の変化を反映して、サービス産業に従事していたり、派遣や時間パートで働いている者も多い。

  ※  ※  ※

 そのような中、農村における基礎的装置である「集落農会」(ここら辺りでは「農会」と言うが、農事組合や生産組合などの呼称を使うところもある。)の劣化が激しい。
 農会は、農村集落の利害調整機関であり、意思決定機関、執行機関でもある。米の生産調整が導入されてからは、生産調整執行機関の性格が強く、これが農会機能の多くを占めていたが、水稲生産目標数量の配分がなくなれば、農会の機能はより低下していく。
 さらにここへ来て、米の生産調整補助金・交付金を活用した水田農業の維持装置である「集落営農組織」に新たな現象が生じている。
 田植機やコンバインなど大型農機を、その季節に集中的に乗りこなすには、40代から60代の働き盛りのオペレーターが必要だ。
 これも高齢化よるリタイアが近づいており、若い者は、先ほど述べた就労環境から、兼業農家が集中的に農作業をする、土・日曜日に休めず、集落営農組織内での労力不足で存続の危機を迎えているところがでてきている。

  ※  ※  ※

 その意味では、JA出資型農業生産法人による田植えや稲刈りから乾燥調整に至るまでの農作業受託はありがたいが、会社の採算性を考えると、借りた田んぼを集積後に集約し、各種交付金を絡め、反当たり収益性の高い作目で自ら農業経営をしない限りは、事業の採算性はおぼつかない。
 また、集落営農組織を中学校区(農村における町単位)程度に広域化し法人化して、農地を借り受けて自ら生産活動をしたり、担い手に農地を出していく機能を持つ組織も、近年徐々に組成しつつあるが、これも農地の集積から集約にどの程度近づけるかが「成功の鍵」となる。
 一方で、集落営農の組織化が様々な理由により進まないところでは、農会を農地の「出し手組合」として性格付け、集落自治会と農会、それに「多面的機能協議会」が結束して機能を発揮し、「集落の農地は、担い手に使ってもらうことで集落を守ろう」とする事例もでてきている。

  ※  ※  ※

 今、農協には、産業政策として「農業生産の拡大による農業所得の増大、そのための農協の販売力強化、生産資材価格の低減」が求められているが、一方では地域政策としての「集落組織」の機能維持・強化が必要であり、農協にとって「車の両輪」でもある。
 農地の出し手(貸し手)と使い手(借り手)を仲介する機能は、農地中間管理機構や農協の農地利用集積円滑化事業など複数あるが、この辺りに戦略性と主体性を持って「絡もう」とする農協がどれほどあるだろうか。
 もう手遅れかもしれないが、この先、ここに強力に「絡む」機能を持つ農協こそが、農地の「出し手」としての正組合員農家からも、農地の「使い手」として規模拡大をめざす専業農家や企業的農業法人からも支持される存在となり得るだろうことを確信している。

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