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安倍首相は早期の衆院解散に踏み切れるか?2017年3月30日

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【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

「千丈の堤も蟻穴より崩るる」(韓非子)

◆解散総選挙の時期は?

 最近、現役政治家を含む政界の情報通の集まりに出席しました。現役政治家の最大の関心事は安倍首相がいつ衆院を解散するか、です。まず、この点が話題になりました。全員が安倍首相は早期の衆院解散に踏み切る可能性が高いという見方でした。
 最大の理由は、7月2日の東京都議会議員選挙のあとの衆院選では自民党の単独過半数維持は困難であり、安倍政権が政権を継続するためには7月2日と同日か、またはそれ以前(投票日は6月中)に衆院選を実施しなければならない、ということにあります。
 7月2日に行われる東京都議会議員選で自民党の議席は半減するとの予測があります。政界通もこの予測を信じています。もしも予測通りになれば、その後の国政選挙は自民党にとっては苦しいものになります。安倍首相もこのことはわかっているとみられています。このため解散の時期は4月末から5月初めとなるだろうとの予想をする議員が多いのです。投票日は6月の上旬か中旬になるとみられています。安倍首相が度重なる最近の不祥事による支持率減退を気にして弱気になり、解散を先のばしする可能性はありますが、その時は安倍長期政権は困難になるおそれがあります。しかし、東京都議選前に総選挙を行えば、少なくとも小池百合子東京都知事による新党運動に打撃を与え、小池知事支持勢力の国政進出をつぶすことが可能です。問題は安倍首相が小池都知事に対して断固たる対決姿勢をとることができるか否かにあります。

◆安倍首相の大失言

 安倍首相はあまり失言をしない政治家だとみられていますが、森友学園問題では失言をしました。それは森友学園への政治家の関与について質問された時、感情的になり、「もし私や家内がこの事件に関与していたならば、総理はもちろん議員も辞める」と言いました。その後も安倍首相は何回も「辞める」を繰り返しています。しかし、これは安倍首相の失言です。この失言は、安倍首相の批判者に大きなインパクトを与えました。安倍首相批判者は安倍首相の関与を明らかにすれば、安倍首相を倒すことができる、と考えるようになりました。
 第二次内閣以後の安倍内閣は強力な政権です。第二次政権になってからの国政選挙のすべてで勝利しました。統一地方選挙でも自民党は大勝利しました。野党は手も足も出ない状況です。それが安倍首相の感情的な一言で、反対派は安倍政権を倒すチャンス到来と考え、安倍首相夫妻と森友学園との関係調査に精を出しているのです。
 首相といえども人間です。国会で家族の負の関係を質問されれば不愉快になります。
 かつて小泉純一郎首相も激怒したことがありました。安部首相も夫人のことを質問されて感情的になり、言ってはならないことを言ってしまったのです。
 超安定政権といわれる安倍政権にとって、森友学園問題は小さな問題ですが、しかし「蟻の一穴」になるおそれがあるのです。
 
◆新たな合従連衡
 
 東京の小池都知事と都議会公明党との連携は、東京都政の構図を大きく変えました。都議会自民党は孤立してしまいました。小池都知事には公明党都議会のほか都議会の民進党=東京改革議員団が支持勢力となりました。都議会から民進党の名が消えたのです。共産党も小池知事に近づいています。自民党以外のすべての勢力が小池都知事の側に立ちました。
 自民党と公明党の中央幹部は、国政と都政は別、国政における自公連立は変わらない、と言っていますが、しかし、自民党と公明党との関係は変りつつあります。公明党の自民党離れが進行しているのです。
 大阪府議会では「維新」と公明党が接近しています。「維新」と公明が連携すれば、大阪府議会も大阪市議会も、安定多数となります。自民党は孤立しています。この背後にあるのは公明党支持増の"安倍離れ"です。安倍首相の政治があきられ始めているのです。

◆高まる国民のエリート官僚への不信

 今回の森友学園問題の鍵は、財務省がなぜ森友学園の利益のために無理な、非常識なことをしたのか、および、森友学園との国有地取り引きに関する資料をどうしてすぐに破棄してしまったのかという疑惑です。財務省の行為は、あまりにも不自然であり不健全です。
 しかも、財務省の態度はあまりにも傲慢で強引です。財務省の信用は地に落ちました。
 この背景にあるのは超安定政権の与党とエリート官僚のおごりです。東大エリートの墜落は深刻です。政官財のエリートたちがゆるんできています。
 出直しのためには早期の衆院解散が有効ですが、果して安倍首相は早期解散に踏み切れるでしょうか。議席を10名程度減らしても解散を断行すれば、安倍内閣は長期政権になる可能性は残るでしょう。しかしできなければ長期政権は夢となるでしょう。

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