経営資源は「私たちの地域」2017年4月11日
このコラムが読まれる頃はこの松本地方も桜の話題で華やかだろう。当組合でも35名の新採用職員が夢と希望に満ちたスタートを切った。次々と辞令交付を受けている姿を見ている間中、彼らが定年を迎えるころに農協はどんな姿でいるのだろうかと考えていた。自分が学校を卒業したころは算盤が全員の机の上にあった。机と椅子とキャビネットだけがある職場の風景が当たり前であった。その当時、今の職場の姿を想像した人はいただろうか。もちろん誰もいない。同様にこの先の社会がどのように変化を遂げていくのかなお一層読めない時代になったとも言える。
実は変化したのは仕事をすすめる上でのツールであり協同組合の本質が変貌を遂げているわけではない。この辺が勘違いする向きのあるところで、事業が時代遅れとも揶揄される所以であろう。明治維新という大転換を遂げたが故か、どうも舶来が優れているという観念が遺伝子となって私達の皮膚に刷り込まれてしまっているような気がする。たとえ舶来の思想であっても、日本人は自らのオリジナルにとけ込ませて活用してきたのであって、日本らしい協同組合、とりわけ農業協同組合の在り方についていまこそ、国民理解を得る取り組みが求められていると痛切に思う。
※ ※ ※
今日の政策的な方向を見ているとまさに、わが国の隅々までしみこんでいる「総合農協」という仕組みをもっともらしい理屈をつけて、違う仕組みに作り変えようとしていると思わざるを得ない状況にある。このことは、一般論としての農協事業における農業・経済部門の弱体化と信用共済部門の拡大という現実と関連していることは言うまでもないが、本質論のすり替えが巧みに行われていることに気づかなければならない。
※ ※ ※
我々が陥ってはならないのは「総合」ということにこだわりすぎて、何でもかんでも事業として、活動として取り入れなければという呪縛に陥ることではなかろうか。そのことをもってして農協解体論への対抗軸とすべきではないと認識すべきと思うがいかがだろうか。
※ ※ ※
農業協同組合は「地域協同組合としての役割発揮」というフレーズが使われ、何をするかは盛んに論議されてきたが、何をしないかについてはほとんど論議されてこなかったと感じている。それは消極的とか後ろ向きとかという評価につながることを恐れて踏み込めなかったからとも言える。自分たちの組織に足りないものばかりが気になりそこに価値を見出してきた結果、全国どこのJAをとっても同じフレーズ、競争相手に負けてはならぬとばかりに、次々、「これもあります、これもやります」となる。金太郎飴八方美人的事業方式といっても良い。ま、地域に密着しているが故の宿命とも言えなくはないが...。
みんなで目を凝らして、人が持っていないものつまり自分の足元にあるものに気づく必要がある。あれもこれもと取り組めば、なんとなく安心するだけであり、組織の持続的な発展につながらないのではないか。業務を拡げて成長を遂げてきたという一般的な成功体験にとらわれすぎているとも言える。
※ ※ ※
アジアの小国ブータンが『幸せの国』と話題になったことがあった。働く人の9割が農民で、国の大半が自給自足に近い暮らしを行なっていて、その中で、ほとんどの野菜は無農薬で栽培され、人々は民族衣装を身にまとい、伝統建築の家屋に住み、今も伝統的な生活を続けているとのこと。国家が幸福であるためには、国民それぞれの家庭が幸福であることが基本と考え、国民の幸せのために国家がまず豊かになるとは考えない。現実には否応なしに進む近代化に伴って、様々な課題が生じてはいるのだろうが、示唆に富む考え方と言える。
※ ※ ※
全国のJAが金太郎飴かつ八方美人的でない足下重視型創造的自己改革にいかに取り組むか、もう、隣の芝生の色のみならず枝振りばかり気にすることはやめたほうが良い。経営資源は「私たちの地域」。ここで生きようとしている組合員と手を携えて足下作戦をすぐに始めよう。人質となっている「准組合員」を規制の犠牲にしないためにも。まだ時間は残っている。
重要な記事
最新の記事
-
新春特別講演会 伊那食品工業最高顧問 塚越寛氏 社員の幸せを追求する「年輪経営」2025年2月5日
-
新春の集い 農業・農政から国のあり方まで活発な議論交わす 農協協会2025年2月5日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】通商政策を武器化したトランプ大統領2025年2月5日
-
「2024年の農林水産物・食品の輸出実績」輸出額は初めて1.5兆円を超え 農水省2025年2月5日
-
農林中金が短期プライムレートを引き上げ2025年2月5日
-
トラクターデモにエールを送る【小松泰信・地方の眼力】2025年2月5日
-
時短・節約、家計にやさしい「栃木の無洗米」料理教室開催 JA全農とちぎ2025年2月5日
-
規格外の丹波黒大豆枝豆使い 学校給食にコロッケ提供 JA兵庫六甲2025年2月5日
-
サプライチェーン構築で農畜水産物を高付加価値化「ukka」へ出資 アグリビジネス投資育成2025年2月5日
-
「Gomez IRサイトランキング2024」銀賞を受賞 日本化薬2025年2月5日
-
NISA対象「おおぶね」シリーズ 純資産総額が1000億円を突破 農林中金バリューインベストメンツ2025年2月5日
-
ベトナムにおけるアイガモロボ実証を加速へ JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択 NEWGREEN2025年2月5日
-
鳥インフル 米オハイオ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年2月5日
-
鳥インフル ベルギーからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年2月5日
-
JA全農と共同取組 群馬県産こんにゃく原料100%使用 2商品を発売 ファミリーマート2025年2月5日
-
「食べチョクいちごグランプリ2025」総合大賞はコードファーム175「ほしうらら」2025年2月5日
-
新潟アルビレックスBC ユニフォームスポンサーで契約更新 コメリ2025年2月5日
-
農業分野「ソーシャルファームセミナー&交流会」開催 東京都2025年2月5日
-
長野県産フルーツトマト「さやまる」販売開始 日本郵便2025年2月5日
-
佐賀「いちごさん」表参道カフェなどとコラボ「いちごさんどう2025 」開催中2025年2月5日