人事2024 左バナー 
JA全農人事情報
左カラム_病害虫情報2021
新聞購読申込 230901
左カラム_コラム_正義派の農政論_pc
左カラム_コラム_米マーケット情報_pc
左カラム_コラム_地方の眼力_pc
左カラム_コラム_食料・農業問題 本質と裏側
左カラム_コラム_昔の農村・今の世の中_pc
左カラム_コラム_花づくり_pc
左カラム_コラム_グローバルとローカル_pc
左カラム_コラム_TPPから見える風景_pc
左カラム_コラム_ムラの角から_pc
241029 グレインSP SP
日本曹達 231012 PC
FMCプレバソンSP

日米牛肉交渉の本気度2017年4月24日

一覧へ

【森島 賢】

 日米経済対話の第1回の会合が18日に行われた。日本側は麻生太郎副総理、米国側はペンス副大統領、というトップ級の会合である。
 トランプ大統領は、多額の貿易赤字に苛立っている。対日赤字は、第1位の対中国赤字に次いで第2位の多さである。
 米国側の思惑は、日本への輸出を増やすことで赤字を減らし、その結果、雇用を増やすことである。雇用を増やすことは、トランプ大統領の看板政策である「アメリカ第1主義」の究極的な目的だ、と言っている。対日輸出での主な関心は、自動車と牛肉の輸出増だという。
 日本側の思惑は、米国をTPPに復帰させたいのだが、米国側は、TPPは過去のものだ、といって取り付くしまもない。そこで、自動車と牛肉の輸出増という米国の関心を何とかそらしたい、と考えているようだ。
 だが、米国にとって牛肉は、自動車と並列して協議するほどの重大な関心事なのか。いったい、米国は牛肉の輸出増を本気になって要求するだろうか。

日米牛肉交渉の本気度

 上の表は、自動車と牛肉について、日米間の輸出入の状況を見たものである。
 米国側からみてみよう。自動車は日本から5兆4400億円も輸入しているのに、日本への輸出は僅か1600億円にすぎない。5兆円以上の輸入超過である。ここに米国の重大な不満がある。
 それと比べて、牛肉は日本からほとんど輸入していないのに、1100億円も日本へ輸出している。輸出超過どころか、一方的な輸出である。それでも輸出量を、もっと増やしたい、と考えている。これは、何でもかんでも、無理矢理にでも、少しでも、輸出を増やそうとする米国からみて、当然のことかもしれない。

 米国から日本への輸出を増やすには、どうすればいいか。
 たとえば、米国が日本への輸出額を1000億円増やすことを考えよう。これは、米国が日本からの輸入額を1000億円減らすことと同じ効果がある。貿易赤字は同じ金額だけ減る。その分を米国内で追加して増産できる。だから、雇用はその分だけ増える。
 自動車の場合、このことは、それほど困難ではないだろう。だが、牛肉の場合は、日本への説得を含めて極めて多くの政治的な努力が必要になる。日本への輸出額は1097億円だから1000億円増やすことは、ほぼ倍増することになる。かなり多くの努力が、米国にとって必要になる。絶望的かもしれない。一方、日本からの輸入額を減らすといっても、今の輸入額は21億円しかないのだから、1000億円減らすことは不可能である。
 つまり、牛肉の場合は、自動車の場合と比べ、米国にとって、労多くして功少なし、なのである。若者の言葉でいえば、コスパが悪い。
 だから上の表で分かるように、実際には、牛肉と自動車とでは米国の関心の強さに、格段の差があるのではないか。牛肉には、ほとんど関心がないのではないか。本気で輸出額を増やそうとは考えていないだろう。

 それにもかかわらず、マスコミは牛肉を自動車と同列で論じている。何故か。
 同列で論じているのは、上で否定したように米国への経済的影響と、米国政府の政治的努力が同じ程度だからではない。そうではなくて、米国の牛肉関係者の政治力が強いからである。
 もしも、政治家が牛肉についても自動車と同じ程度の強い関心を示さなければ、強い政治力をもつ牛肉関係者から支持されなくなる。それは、政治家にとって致命的で、次の選挙での当落に直接影響する。だから、牛肉の対日輸出増にも、強い関心を示すことになる。

 これは、米国だけの事情ではない。日本も同じ事情のもとにある。日本の牛肉関係者も政治に対する圧力を強めねばならない。
 われわれが期待することは、日米両国の牛乳関係者が、互いに醜く争うことではない。期待することは、両国の牛肉関係者が、それぞれ自国の政府に対して、自由貿易という美名を悪用して行われる市場原理主義政策に厳しく反対し、抗議運動を強力に展開することである。

 ... 追記 ...
 昨日のフランス大統領選挙で、マクロン候補とルペン候補が来月7日の決戦投票に進出することになった。
 両候補とも既成政党の候補を破っての決戦進出である。これは、トランプ現象のフランス版である。
 主な争点は、反EUか親EUか、つまり、反市場原理主義か市場原理主義か、という点にあった。投票結果は、反市場原理主義のルペン候補とメランション候補への投票数の合計が、市場原理主義のマクロン候補とフィヨン候補への投票数の合計に伯仲した。
 もう1つの争点は、排外主義か反排外主義か、という点だった。開票直後に、第3位のフィヨン候補などが反排外主義のマクロン候補への支持を表明したので、反排外主義が決戦投票で優位になった。
 以上のように、いまフランスは、市場原理主義と排外主義とがねじれあって、フランスの農業者や労働者などの経済的弱者は、その間で揺れている。そうして、反排外主義の基底に市場原理主義があることに、まだ気付いていない。
 決戦投票前の白熱した論戦で、このねじれを解き明かすことを期待しよう。そして、投票結果に注目しよう。
(2017.04.24)

(前回 RCEPとTPPは水と油

(前々回 種子法廃止は消費者問題なのだ

(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)

重要な記事

241029・日本曹達 くん煙:右上長方形SP

最新の記事

DiSC:SP

みどり戦略

Z-GIS 右正方形2 SP 230630

注目のテーマ

注目のテーマ

JA共済連:SP

JA人事

JAバンク:SP

注目のタグ

topへ戻る