支店を「農と食の協同組合」の入り口に2017年5月9日
最近、農水省より「組合員資格別の事業利用量に関する調査実施マニュアル」が公表された。マニュアルの作成受託は三菱総研。平成28年度に100JAほどで試行調査が実施されたと聞く。
この調査の目的は、改正農協法施行後5年以内に准組合員利用規制の是非を判断するために実施するものであろう。
その内容は、
(1)農協の子会社は調査対象から除外する、
(2)直売(所)事業は、販売事業として本調査の対象としない、
(3)全組合員対象の総合ポイント制度を導入し、正・准・員外の資格を識別していることは有効(奨励するという意味か...)、
(4)専門農協は本調査の対象外とする、
(5)組合員資格を把握する仕組みがない農協は「利用者アンケート」を実施させる、
とのことである。
※ ※ ※
協同組合は、常に員外利用の是非や組合員実態の把握を監督官庁から指導される。戦後の協同組合史をみても、ある大規模生協に対して厳しい指導があり、組合員数が何十万人単位で減少したことを思い出す。
この度の農協に対する、この種の話の持って行き方をみると、株式会社は消費者・利用者に対して、あまねく自社事業や商品・サービスを提供することは当たり前に認められるが、本来、協同組合の本質は、法にも規定しているとおり「クローズドな組織」なのだから、組合員資格の管理を厳格に行い、利用も組合員に限定すべきだ、という考えに立っているものと理解する。
確かに、株式会社と協同組合の、法律上の立て付けは「そのとおり」であろうが、株式会社がエクセレントで、協同組合は「場末のもの」「補完的なもの」との着想から来ているように思えるのだが、これはある種「拗ねたモノの見方」なのであろうか。
さらには、「農協の直売(所)事業が本調査の対象外」とされたことは、農協による農畜産物販売力強化の一環として当該事業を認知している政策の流れと一致するものとして評価するが、直売所には生活購買品を多く並べているところもあるから、現場実態の中では判断に迷う事案もでてこよう。
※ ※ ※
いずれにしても、生協や農協の監督官庁がこれまで行ってきた指導・監督経過からみて、「協同組合は、組合員資格の実態と組合員人格の実在性、利用の態様を常に把握している仕組みがあり、それが機能しているのかどうか」を問うているのだが、この辺りが「農協の現場」では弱いのが実態だ。
その点では、全組合員を対象にした「総合ポイント」制度を導入し、当該カードの使用により、先に述べた組合員資格や利用の態様などを把握する仕組みを単位農協や都道府県域で運用していくことは有効な手段である。
この仕組みを基礎に、
(1)直売所利用者には総合ポイント会員になってもらう。正組合員資格のある人は正組合員に、それ以外は准組合員に。
(2)組合員になることを望まない直売所利用者には「直売所利用応援カード」(ポイントカードのようなもの)を発行し、これで員外資格を管理し、総合ポイント会員への移行(つまりは准組合員化)を促進する。
(3)では、(1)と(2)を併せて准組合員や員外利用者(地域住民)を、地元の「農と食」の応援団としていく。
※ ※ ※
一方では、農協の支店(特に都市部)における貯金や住宅ローン、共済の利用者としての准組合員や員外利用者が、「総合ポイント」を入り口として、支店や併設・隣接直売所(これにはイベントとしての支店での直売や常設直売所など様々な「かたち」があるが...)で地元農畜産物を購入できる仕組みを構築することで、地元の「農と食の応援団化」を促進する。
この延長線上には、都市部の支店が、単に貯金や住宅ローン、共済の提供など「金融機関的機能」として存在するだけではなく、地元農畜産物の「供給拠点」として、更には、准組合員や地域住民が地元の「農畜産物を買い支える関係づくり」の「拠点」として「新たな存在価値」を創出することが可能となる。
貯金、住宅ローンや共済の利用から入った組合員と直売(所)事業の利用から入った組合員を、「総合ポイントシステム」を介してクロスセルしたところ、「相互的・複合的利用者」が大宗占めていたという状態を創り出すことが、「准組合員は農と食の応援団」を形として創り出したことになると考える。
この取り組みが、新たな農協像としての「産消混合協同組合」、「農と食の協同組合」、「たべもの協同組合」作りの第一歩となることを確信している。
重要な記事
最新の記事
-
JA熊本経済連が1000トン落札 政府備蓄米 「価格下がっても500円前後か」2025年3月12日
-
JAさがは2回目も入札 政府備蓄米放出 「今年は米騒動起こさぬため」2025年3月12日
-
政府備蓄米、入札量の9割落札 JA福井県 価格低下は限定的か2025年3月12日
-
意思決定と女性参画【小松泰信・地方の眼力】2025年3月12日
-
シロアリ防除剤「メタミサルト」、蛍光性能で薬剤の存在を可視化 最速で業界トップシェア目指す ZMクロッププロテクション2025年3月12日
-
こども食堂で富山県産牛乳の体験ミルク教室を開催 JA全農とやま2025年3月12日
-
岐阜県産イチゴのイベント「ぎふのいちごおやつマルシェ」を開催 県内17の菓子店が集結 JA全農岐阜2025年3月12日
-
農協シリーズからモナカアイス「北海道ミルク」「京都宇治抹茶」新登場 JA全農2025年3月12日
-
「いわて純情米」アンバサダーにエンゼルス菊池雄星 投手が就任 JA全農いわて2025年3月12日
-
黄金の郷のこだわり りんごとトマト、丸搾りのジュースに JAいわて平泉(岩手県)2025年3月12日
-
特産のゆずがドロップに 鼻に抜ける甘酸っぱい香り JA神奈川つくい(神奈川県)2025年3月12日
-
ハマササゲの耐塩性機構が明らかに 作物の耐塩性開発に期待 農研機構2025年3月12日
-
青りんごが赤くなる不思議 眠りから覚めた遺伝子が果皮の色を変えるメカニズム判明 千葉大学2025年3月12日
-
植物栽培の生理生態情報定量的を可視化 高知大学IoP共創センターと共同研究開始 welzo2025年3月12日
-
家庭用油脂製品7%~15%の値上げ 油脂製品を価格改定 J-オイルミルズ2025年3月12日
-
グリーンコープ生協みやざき「笑顔つながるこだわりマルシェ」都城で15日に開催2025年3月12日
-
三重県カンキツ生産者研修会開く 高品質安定生産、日焼け対策などを報告 三重県園芸振興協会2025年3月12日
-
「健康経営銘柄」3年連続選定「健康経営優良法人~ホワイト500~」は9年連続認定 明治HD2025年3月12日
-
「健康経営優良法人2025」認定を取得 ヤンマー2025年3月12日
-
令和6年度省エネ月間四国地区表彰にて「四国経済産業局長表彰」受賞 井関農機2025年3月12日