極めて重要な都市型JAの組合員支持率2017年6月6日
この6月に入ると、政府の規制改革会議が「農協改革集中推進期間」の期限とする2019年5月末まで2年を切ったという。
これは、2014年6月の農協改革に関する与党とりまとめで「5年間を農協改革集中期間」としたことを根拠としているらしい。
この間、改正農協法の成立、施行によるJA全中の一般社団法人化決定と引き換えに准組合員利用規制の導入は先送りとなり、2021年3月末までが経過期間と設定された。
これには、JAグループ役職員は胸をなでおろしたというのが実感であったが、今は規制改革会議を使った政府の進捗状況フォローアップが、じわじわと進行しているというのが実態だ。
さらには、全農は2017年3月に、「事業改革年次別計画」を決定・公表したが、規制改革会議からは、数値目標やスケジュール感に厳しい注文がついている。
一方、農林中央金庫には、全国のJAに対して2019年5月末までに、「信用事業を分離・譲渡するのか」、「信用事業を自ら行う場合は、信金・信組並みの内部管理態勢が整備・運用できるのか」を問うことを要求されており、各JAに選択するよう促している。
また、2019年度には、公認会計士または監査法人監査が導入されることにより、単位JAに監査証明が受けられない事態となれば、「信用事業から即退場」ということも想定され、正に「前門の虎、後門の狼」という状況と言えよう。
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その中で、JAグループは、どのような方向性・スタンスで取り組んでいこうとしているのか。連合会や単位JAの「自己改革の方針や計画」は出揃ったが、進捗状況や危機意識にはJAによって開きがあると、日本農業新聞の記事にある。
このような情勢下において、JAグループとして、「変わってきたなー」と感じることは、金融・共済事業を専門とする法人、連合会を含め、全ての役職員が「農に絡む」ことを意識し始めたことにあると言えよう。
端的には、農林中央金庫や全共連などの単体でも、融資や基金を通した資金供給、コンサルティングやマッチング機能の発揮による担い手や企業体の育成、これらの成長に資する商品の開発などで、自らが産業政策としての農業の振興に役割を果たそうとしていることが挙げられる。
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翻って、単位JAの現場はどうか。これは、総合事業であるが故に、「農業振興は営農経済部門の仕事。しっかりやってもらわないと困るよ!」というところが多かったが、ここの意識も相当変わりつつあるのが実感だ。
ここでも、農業融資の開発・掘り起し、認定農業者や法人、新規就農者など担い手農業者への積極的アプローチなど、オールJA挙げた取り組みが進みつつある。
これまでは、「組合員農家の稼ぎを挙げるところは営農経済事業の仕事だが、これだけでは、農家もJAもメシが食えないから、信用・共済事業は正組合員農家以外の利用拡大でメシを食っていきましょう」という路線が、「正組合員農家が農業でもメシが食えるように、オールJAでしっかり応援していきましょう」といった方向に転換しつつあることは、外圧や外部環境の力とはいえ、「望むべき方向」であると言えよう。
さらに一歩進んで、単位JAの中で、信用・共済事業のチャネルとしての支店が、周辺農家の農産物を「自らの手」で販売し、「作り手としての正組合員農家」と「買い手としての准組合員や地域住民」を結びつける役割を果たしていくことができれば、准組合員や地域住民にとって「信用・共済事業がJAになくてはならない」ものとなっていく可能性があるのではないか。
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純農村部ではない都市部と都市近郊部において、総合JAの中の信用事業が、「あって良かった」から「なくてはならない」と言ってもらえる状況に、どうしたら持っていくことができるのか。ここを、突き抜けて確固たる「道筋」を開拓していくことは、都市型JAの存続と発展の「鍵」と考える。
全中は、2018年度中に「第28回JA全国大会」を開催し、2019年4月には全JA組合員の大半を対象にした「組合員アンケート調査」を行う方針と聞く。
この調査の後に「農協改革集中推進期間」が終了することから、このアンケート調査で高い評価を得ることができるかどうかが、農水省の「認定農業者向けアンケート」結果と対峙できるかどうかの分水嶺となる。
単位JAにおいて「組合員との関係希薄化」が言われる中で、組合員数の上でもウェイトを高く占める「都市型JAでの高評価」が、この先の総合JAの「すう勢」を左右すると言っても過言ではないと考える。
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