求められる「自営農業者」を創り出す力2017年7月13日
農協の自己改革が、まずは外から、そして内側から、その必要性が叫ばれて久しいが、その根源的な課題は何なのか。そこを、突き詰めておかないと、所詮、対処療法に陥らざるを得ない。
その根源的な課題は何か。現場は、総合農協であるが故に、議論すれば、あれもこれもと立場たち場で、様ざまな意見が飛び交うのが実情だ。
農協の経営管理や収支に重きを置く者は、内部統制の確立や営農経済部門の赤字体質を問題にし、信用事業の行く末を案じる者は、日銀のマイナス金利政策を嘆き、員外利用規制の導入を憂える。
また、総合農協を何がなんでもあるべき姿だと考える者は、食と農を基軸にして地域社会に貢献する農協たることが必要だと力説する。
これら、意見は全て正しい認識だし方向だとも思う。今、必要なことは、これら課題に対し、優先順位をつけてさまざまな要素を関連づけ、より大きな成果を素早く手に入れる構想力や計画力、遂行・実現力が試されていることも事実である。
一方、我々の足下をみると、日本の社会構造が、戦後の高度経済成長を経て成熟社会に至り、これからは少子高齢化が急速に進む中、大都市への富と人材の集中、なかんずく東京一極集中と地方・農村の疲弊が顕著に進行していることに気づく。
※ ※ ※
それと同心円上に、東京のJAグループ総本山、つまりは全国連への富と人材の集中と地方イコール農協現場の疲弊との構図が見え隠れする。
少子高齢化の波は、恐ろしく早く進行しているが、静かな波のため、また、それぞれの「家」「集落」「まち」にやってくる波の形が異なるために、これが、どのような変化をもたらすのか、その確証がない。
確証はないが、農村に居て気づくことは、「自営」でメシを食える者が、戦後まもなくから高度経済成長末期と比較して著しく少なくなっていることだ。
例えば、生業(なりわい)として成り立っていた農業や小売りとしての様々な商店、ガソリンスタンドや自動車整備工場。更には、大工さんや左官屋さん、村の小さな土建屋さんなどである。
一方では、大きな会社に勤めて、生活を安定させ、そこでの居場所を確立し自己実現も図る。そして、ここら辺りを目指すためには、大きな会社があるところ、やりたい仕事を選ぶチャンスのあるところとして、大都市へ人口は流出する。
人生の自己実現を「自営」で実現するためには、起業資金や将来のための貯蓄や年金のこと、事業継続のためにふりかかるさまざまなリスクを考えると、「雇用」と「自営」では、格段に「自営」の方が不利な社会構造に気づく。
※ ※ ※
本来、この「農」を大本に据えた「自営業」の集団であった農業協同組合は、今や「自営」でメシが食える者は少数派で、「雇われて」メシを食う者が多数を占めている現実を、どのように解釈するのか。
農協とその連合組織の主たる構成員の変容は、より良き外部環境への適応結果として肯定した上で、新たに「自営」で農業をやってみようとする者を、発掘し育て、一人前の「自前で判断しメシが食える事業者、つまりは正組合員農家」を創り出す。
微力ながら、その力がなければ、これからの日本社会において、農協の社会的価値は低いものにならざるを得ないことを肝に銘じたい。
重要な記事
最新の記事
-
JA熊本経済連が1000トン落札 政府備蓄米 「価格下がっても500円前後か」2025年3月12日
-
JAさがは2回目も入札 政府備蓄米放出 「今年は米騒動起こさぬため」2025年3月12日
-
政府備蓄米、入札量の9割落札 JA福井県 価格低下は限定的か2025年3月12日
-
意思決定と女性参画【小松泰信・地方の眼力】2025年3月12日
-
シロアリ防除剤「メタミサルト」、蛍光性能で薬剤の存在を可視化 最速で業界トップシェア目指す ZMクロッププロテクション2025年3月12日
-
こども食堂で富山県産牛乳の体験ミルク教室を開催 JA全農とやま2025年3月12日
-
岐阜県産イチゴのイベント「ぎふのいちごおやつマルシェ」を開催 県内17の菓子店が集結 JA全農岐阜2025年3月12日
-
農協シリーズからモナカアイス「北海道ミルク」「京都宇治抹茶」新登場 JA全農2025年3月12日
-
「いわて純情米」アンバサダーにエンゼルス菊池雄星 投手が就任 JA全農いわて2025年3月12日
-
黄金の郷のこだわり りんごとトマト、丸搾りのジュースに JAいわて平泉(岩手県)2025年3月12日
-
特産のゆずがドロップに 鼻に抜ける甘酸っぱい香り JA神奈川つくい(神奈川県)2025年3月12日
-
ハマササゲの耐塩性機構が明らかに 作物の耐塩性開発に期待 農研機構2025年3月12日
-
青りんごが赤くなる不思議 眠りから覚めた遺伝子が果皮の色を変えるメカニズム判明 千葉大学2025年3月12日
-
植物栽培の生理生態情報定量的を可視化 高知大学IoP共創センターと共同研究開始 welzo2025年3月12日
-
家庭用油脂製品7%~15%の値上げ 油脂製品を価格改定 J-オイルミルズ2025年3月12日
-
グリーンコープ生協みやざき「笑顔つながるこだわりマルシェ」都城で15日に開催2025年3月12日
-
三重県カンキツ生産者研修会開く 高品質安定生産、日焼け対策などを報告 三重県園芸振興協会2025年3月12日
-
「健康経営銘柄」3年連続選定「健康経営優良法人~ホワイト500~」は9年連続認定 明治HD2025年3月12日
-
「健康経営優良法人2025」認定を取得 ヤンマー2025年3月12日
-
令和6年度省エネ月間四国地区表彰にて「四国経済産業局長表彰」受賞 井関農機2025年3月12日