【小松泰信・地方の眼力】それでもあなたは入れますか2017年10月18日
今のところではあるが、空からミサイルが突き刺さることも、破片が落ちてくることもない。代わりに落ちてきたのは米軍普天間飛行場所属の大型輸送ヘリコプター。選挙の公示を待っていたかのように、10月11日沖縄県東村高江の民有地に墜落、炎上。事故原因を明らかにしないまま、本日(18日)飛行訓練が再開された。この事実こそが国難を意味している。もちろん、わが国が植民地でなければの話だが。(写真)小松泰信・岡山大学大学院教授
◆女性に見放された安倍自民ではありますが...
毎日新聞(16日)は、衆院選を前に同紙が実施した特別世論調査の結果に取材情報を加味すると、自民党は小選挙区、比例代表とも堅調で、単独で300議席を超える可能性があることを伝えている。
調査項目の一つである「衆院選のあとも、安倍晋三さんが首相を続けた方がよいと思いますか」という質問に対して、「よいと思う」が37%、「よいとは思わない」が47%。続投を望まない声が多い。性別で見ると、「よいと思わない」は男女とも47%だが、「よいと思う」は男性の41%に対して女性が34%。女性の評価は低い。
また、「どの政党を支持しますか」という質問に対して、自民党が29%でトップ。これに立憲民主党の10%、希望の党9%が続いている。ここでも自民党支持者を男女別で見ると、男性34%、女性25%と明らかに女性の支持者が少ない。
「私は、ずっと『女性に見放されたJAに未来はない』と言ってきました」とは、中家全中会長(『家の光』10月号)の言。これに倣えば、女性に見放された現首相にも未来はないようだ。ところが、なぶり者にされても見放さず、すがりつくみっともない組織があるんだなぁ、これが。困ったもんよ。
◆農政 争点とならず。
そりゃそうでしょうよ
日本農業新聞(16日)の一面見出しは、〝選挙サンデー 党首ら支持訴え懸命 農政踏み込まず〟。リード文は「衆院選挙期間中、唯一の日曜日となる15日、各党党首が街頭演説などで支持を訴えた。農業に言及する場面は見られるが、米政策の見直しや農協改革など踏み込んだテーマでの論戦には至らず、憲法改正などの争点に埋もれる形になっている」と、嘆き節。
今選挙の最大の争点は、現政権の政治手法。もっとはっきり言えば、アベシンゾウの手口を今後4年間認めるか否かである。農政問題への国民の関心は極めて低い。ただし、前回の当コラムが指摘したように、全国農政連の推薦候補者リストが党や個々の議員の農政観などとは異なる基準で選ばれていることから、JA関係者においても、農政への関心は希薄といわざるを得ない。農業、農村、農家、JAの現状を踏まえ、農政のあり方を本気で考えていたら、これまでの政治への関わり方とは異なる行動を取らねばならないはず。農政問題への関心は希薄、といわれても仕方の無いJAグループのリーダーたちに、農政問題に関心を示さない国民を詰る資格はありませんから。
◆山陰からの問題提起
出張先で手に取った山陰中央新報(17日)は、〝'17衆院選 とわれるもの〟という企画で農業を取り上げ、多くの紙面を割いていた。「来年からはもう作らんことにした」というのは、島根県内の中山間地でコメを約1ha栽培する木村さん(77歳)。氏がコメ作りをやめる決断に至った直接的な原因は、山仕事での足首骨折。これに、生産調整(減反)の来年からの廃止がダメを押す。「コメ作りはますます厳しくなる。やめ時かもしれん」とのつぶやき。もちろん、耕作されなくなった農地の担い手にも減反廃止の影響は及び、引き受け余力の減退は想像に難くない。担い手である農事組合法人の組合長は、中山間地特有のコスト(畦畔の草刈りや獣害対策など)は減らしようがないことから、「平野部と一律ではなく、山間部の実情に沿った施策がなければ、荒廃は止まらない」と訴える。にもかかわらず、農業政策が議論の俎上に載ることが少ないことに対して、「農業はもう票にならないとみられている」という、別法人の社長の談も紹介されている。
さらに同紙が行った、鳥取、島根両県における10名の立候補者に対する政策アンケート結果が示されている。「政府が進める農業改革や市場開放の推進により、山陰両県の農業が活性化すると思うか。○思う、×思わない、△どちらとも言えない」という問いに対して、○はゼロ。自民党4議員全員が△。野党は全員×。自民党の4議員ですら△という結果は、安倍農政に失政の烙印が押されていることを意味している。
◆農業者のまっとうな見解
悩める農業者やJA関係者に、バリバリの農業者の見解を紹介する。
「安倍政権の『攻めの農業』はひどい。農家の意見を聞かないし、聞こうともしない。安倍首相の都合のいい人、自民党にとって都合のいい人からしか意見を聞きません。画一的な大規模化を押し付け、農家をつぶし、農業の本質を知らない人たちが、日本の農業を支えてきたさまざまな制度を変えてしまう。自民党は、常識的に考えて、農家が押せる政党ではありません。今回、青森県農政連は、自主投票となりました。安倍農政に審判を下すというだけでなく、農業政策で一貫してスジを通し続けているのはどこの党なのかを素直に見れば、いいだけです」(荒木茂信氏、JAゆうき青森・農政連委員長、しんぶん赤旗16日)。
「食料自給率4割を切る中、輸出に力を入れている場合では無いだろう。...規制改革推進会議に、現場を見て回った識者はいるのだろうか。農協改革も、島は民間企業や大手金融機関が出店しない背景を知っているのか疑問だ。官邸主導のてこ入れが進めば、ますます地方の生活は厳しいものになる。『攻めの農業』は聞こえは良いが、根本にあるのは人の問題。島の生産者の平均年齢は65歳を上回る。農業弱者を切り捨てず、現場の声をしっかりと聞いてほしい」(能田英文氏、愛媛県果樹同志会会長、日本農業新聞17日)。
農業やJAの現場における現農政に対する批判は、これらの見解に凝縮されている。
◆国の基の破壊者を信認するなかれ
「どうしたら、今の農政を変えることができますか」という質問を受ける。
「最も早くて最善の解決方法は、今衆院選での政権交代。次善の策は安倍退陣。安倍政権が継続すれば、1狂による1強が間違いなく1恐となり、農政に限らず形容しがたい、そして取り返しのつかない時代に突入することを覚悟しなければならない」と、答えている。脅しではない。何せ相手は、憲法無視、民意無視、国会無視の〝右の革命政権〟だ。
政権与党やそこからの立候補者への一票は、それに対する信認を意味している。
あなたの一票が、〝国の基の破壊者〟への信認に用いられないことを願うばかりである。
「地方の眼力」なめんなよ
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