【小松泰信・地方の眼力】勝ち馬に乗りて敗者の道を行くのか2017年10月25日
日本農業新聞(10月23日)に、同紙農政モニターの衆院選投票行動調査の結果が示されている。政党支持と投票行動の関連性、および支持政党なし(以下、浮動票)の行方に絞って表に整理した。なお、〝支持する政党に投票する〟ことを前提として考察している。
◆農業者の投票行動から見えてくるもの
表から、次のようなことが指摘できる。
《1》支持する政党;自民党(41.7%)に、浮動票(25.7%)、立憲民主党(11.6%)、希望の党(8.4%)、共産党(5.7%)が続いている。
《2》 小選挙区;自民党5割、希望の党2割、共産党1割となっている。
(3)に各党が浮動票をどれだけ吸収したかを示している。最も吸収したのが希望の党(11.4ポイント、これに自民党(7.4ポイント)、共産党(4.2ポイント)が続いている。興味深いのは立憲民主党が5.9ポイントをどこかに供給していることである。野党系無所属の6.9ポイントの中に吸収されていると仮定すれば、立憲民主党と野党系無所属は1ポイントしか浮動票を吸収していないことになる。
つまり小選挙区において、立憲民主党系はほとんど浮動票を吸収していない。だとすれば、野党共闘における共産党との選挙協力のあり方に重要な課題を提起することになる。
《3》比例区;(5)に各党が浮動票をどれだけ吸収したかを示している。明らかなのは自民党が浮動票を吸収することができず、支持者の7.4ポイントが他党に流れていることである。もちろん公明党に流れているとすれば、政権与党内での付け替えであるが、結果として政権与党としては浮動票を吸収することができず1.3ポイントを失っていることになる。
その公明党を除いて考えると、最も吸収しているのが立憲民主党(12.4ポイント)、これに希望の党(6.2ポイント)、共産党(2.2ポイント)が続いている。比例区での立憲民主党の躍進と共産党の後退を裏付ける結果である。〝比例は共産党〟というフレーズが浸透しなかった理由を掘り下げ、比例区での共闘(選挙協力)のあり方を再検討すべきである。
なお、表には示していないが、「あなたは安倍内閣を支持しますか」という質問には、「支持する」が32.6%。これは比例区の投票率と近似している。安倍内閣の支持者だけが比例区で自民党に入れたことが推察される。また、「支持しない」が66.9%で、農業者の7割近くが不支持としている。
以上から、農業者を対象とした調査においては、自民党はこれまでのつながりや、後述するJAの推薦などもあり小選挙区においては安定した強さを示している。しかし比例区の結果は、安倍内閣不支持を反映したものといえる。
他方、野党共闘の軸となった共産党は、小選挙区での浮動票吸収率の高さから、日常的な活動や現場の要求に応えた農業政策を提起していることが少なからず評価されていることがうかがえる。共闘についての総括と方針の確立が喫緊の課題といえる。
立憲民主党については、浮動票吸収率の小選挙区での低さと比例区での高さから、どこまで評価されているか、にわかには判断できない。しかし野党第1党として、ブームで終わらせないための対応が求められている。なお残念ながら、希望の党にはコメントするだけの材料も持ち合わせていない。
◆一応勝ち馬には乗りました
〝衆院選で全国農政連会長 農業現場の声 政策に〟という見出しで、全国農政連会長が談話を発表したことを日本農業新聞(25日)が紹介している。
今回推薦した候補者215人のうち195人(90.7%)が当選した。「当選者に対しては特に、JAグループの自己改革を後押しする政策の確立や、TPP、日欧EPA問題、2018年産以降の米政策などで『万全の措置を講じてもらえるものと確信する』と強調した」とのこと。一番聞きたいのは、その確信の根拠は何か、である。そうしなければ6割を超える安倍内閣不支持の農業者は納得できないはず。もちろん当コラムも。「地方の声が具体的な政策に結び付くように、当選した議員と対話を積み重ね、信頼関係をより強める取り組みを強化していく方針を示した」とも記されているが、推薦したのは今回が初めてではないはず。これまでの声は反映されてきたのか。安倍農政でどれほど反映されてきたのか。信頼できる相手だったのか。どなたでも結構。ご回答いただきたい。
積極的賛意ではなかったとしても、JAグループは安倍政権にも安倍農政にも賛意を示し、信任した。この事実は消えない。
「たとえあなたに問題が無かったとしても、あなたへの一票は安倍政権、安倍農政を信任することに通じます。この間の経緯を踏まえれば、それはとうていできぬ相談。今回は落ちてもらいます。恨むならアベシンゾウをお恨み下さい」と、なぜいえなかった。
「白紙委任」「謙虚」「慢心」「熟慮」「おごり」「全面承認」「民意」などなどの言葉を用いて、諫言が社説などを賑わせている。取り巻きを含めて、言っても無駄であり、無理な要求。常識的な言葉が通じる相手ではない。
勝ち馬に乗ったJAグループ。しかしその手に手綱は持たされていない。行く先も告げられず、敗者の道を引き回されるだけ。
対話路線の二年間で戦う気力を削がれた組織とはいえ、飛び降りて、戦う勇気は絶対に残っている。
「地方の眼力」なめんなよ
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