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国民を守らない政府への対処方針 ~2018年の発想の転換~2018年1月11日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 農業については、家族経営の崩壊、農協解体に向けた措置(共販・共同購入の無効化、独禁法の厳格適用、信用・共済分離への布石)、外資を含む一部企業への便宜供与(全農の株式会社化→買収、企業の農地取得を可能にした国家「私物化」特区、種子法廃止、農業「移民」特区の展開)、そして、それらにより国民の命と暮らしのリスクが高まる事態が「着実に」進行している。
 さらには、農協・漁協への大手流通業者の取引交渉力を強め、農水産物の一層の買いたたきを促進する卸売市場の形骸化、国有林の民間払下げ、漁業権を譲渡可能とする漁業権開放と漁協解体が俎上に上がっている。
 これらは「TPPゾンビの増殖」と相俟って、延長された所管官庁のトップの在任中に、一連の農林水産業の家族経営の崩壊、協同組合と所管官庁などの関連組織の崩壊に「とどめを刺し」、国内外の特定企業への便宜供与を貫徹する「総仕上げ」を敢行するという強い意思表示と理解される。
 意気込んでいる人たちには「民間活力の最大限の活用」、「企業参入」と言っているうちに気付いたら、安全性のコストを極限まで切り詰めた輸入農水産物に一層依存して国民の健康が蝕まれ、日本の資源・環境、地域社会、そして、日本国民の主権が実質的に奪われていくという取り返しのつかない事態に突き進んでいるのだということに一日も早く気づいてもらう2018年にしなくてはならない。
 一方、スイスで1個80円もする国産の卵のほうが売れている原動力は、消費者サイドが食品流通の5割以上のシェアを持つ生協に結集して、農協なども通じて生産者サイドに働きかけ、ホンモノの基準を設定・認証して、健康、環境、動物福祉、生物多様性、景観に配慮した生産を促進し、その代わり、できた農産物に込められた多様な価値を価格に反映して消費者が支えていくという強固なネットワークを形成できていることにある。
 政府が国民を守らないなら、生産者と関連産業と消費者が一体となって、自分たちの力で自分たちの命と暮らしを守る仕組みを強化していくことが不可欠である。
 日本では、国民への国産牛乳供給が滞りかねない危機に直面して、乳業メーカーが動いたことは特筆に値する。J-milkを通じて各社が共同拠出して産業全体の長期的持続のために個別の利益を排除して酪農生産基盤確保の支援事業を開始した。
 JA組織も系統の独自資金(運用益など)による農業経営のセーフティネット政策を国に代わって本格的に導入すべきではないだろうか。
 先日、農機メーカーの若い営業マンの皆さんが「自分たちの日々の営みが日本農業を支え国民の命を守っていることが共感できた」と講演後の筆者の周りに集まってくれた。本来、生産者と関連産業と消費者は「運命共同体」である。自分たちの力で自分たちの命と暮らしを支え合う共助・共生システムを強化する2018年にしたいものである。

 

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鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】

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