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【小松泰信・地方の眼力】"おしどり"イロイロ2018年2月7日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 毎日新聞(1月31日)の一面に、“これ区書”の見出しを見た時には何事かと思った。“11人は「作られ珠緒ので」”に目を転じると、あのぶりっ子さとう珠緒のことかと目が点。“県議10人ミスもコピペ”“岡山海外視察報告書”“参加13人公費1400万円”で、やっと事情が飲み込めた。

◆著作権上の問題より、その姿勢そのものが問題なんですよ

小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 同紙は情報公開請求で1600頁ほどもある 報告書を入手し、内容を精査した。
視察に参加した岡山県議の内訳は、自民11人、民主・県民1人、無所属1人。13人のうち11人は「感想」以外の半分以上が同じ文章で、全体的に独自の表現を用いていたのは1人だけ。10人は「コレクション」とすべきところを「これ区書」、11人は「作られたもので」とすべきところを「作られ珠緒ので」と、同じ間違いを犯している。無知と無恥は拡大再生産される。
 同紙の取材に対し、複数の議員が他の議員からもらった原稿を報告書に使ったり、ネットの文書を参考にしたことを認めた。「時間の節約になる」と答えた議員もいたそうだ。
 13人連名の取材への回答文書では、「報告書をまとめる際は、公表された事実を織り交ぜて作成するのが通例で、引用は許される。報告書作成について明文的ルールはなく、ルール違反の問題が生ずることはない」との見解を示したそうだ。
 山陽新聞は翌2月1日に取り上げ、視察に参加した議長が、個人の感想を除く部分を複数議員が分担して執筆し参加者で共有したことを説明し、「文章の共有に問題は無い。著作権上の問題があれば対応を検討したい」と話したことを紹介している。
 中国新聞は3日のコラム(天風録)で、宮武久佳氏(東京理科大学教授)による『正しいコピペのすすめ』から「実体験も大事。体験はコピーできない」を引用し、「視察の体験さえ自分の言葉で語れぬコピペ議員に、議場に立つ資格があろうか」と、目の覚めるような一撃を放つ。
 ところが、毎日新聞(3日)によれば、伊原木隆太岡山県知事は2日の定例記者会見で「(視察で)同じ説明を受けたのであれば、報告書が似てくるのは当たり前だ」と述べ、問題はないとの認識を示した。さらに、「報告は2次的なもの。議員がさまざまな場所で勉強してくれることが大切」との見解を明らかにした。ただし、「(視察の)原資は税金なので、県民の理解を得られるようなやり方が必要だと思う」とも語っている。だから、どっちやねん。
 最近わずか8人の受講生の採点をして驚いた。それこそ同じ講義をし、試験でどこを出すかもかなりぎりぎりまで伝えたにもかかわらず、100点から60点まで、きれいに散らばっていた。報告書もしかり。同じものを見て、同じ話を聞いても、同じ報告書にはならない。受け手側の、経験や問題意識、もちろん表現力や能力等々が千差万別だからだ。その多様さを可視化させ、次の取り組みの選択肢を少しでも多くするのも報告書の役割。知事の見解は、議員全般の不勉強とモラルの低下を助長させるだけ。

 

◆おしどりマコ&ケンに学べ

 日本共産党のネット番組『とことん共産党』(1月30日)に夫婦でお笑い芸人をしている「おしどりマコ&ケン」(以下、おしどり)がゲストで登場。芸人活動をしながら、福島第一原発事故を起こした東京電力に対する取材を500回以上も続けている、知る人ぞ知る存在である。
 メインテーマである原発関連の話もさることながら、2人が2014年から毎年講演などで訪問している、ドイツの学校(中・高・大)でのエピソードは興味深いものであった。ちなみに、訪問のきっかけは、ネットで東電の記者会見を見て、鋭い質問をするおしどりマコに興味を持った、ドイツの教会関係者の邦人妻による要請だった。
 生徒や学生たちは日本人以上に、日本における原発やメディアに関心持っていて、多くの難易度の高い質問が出されるそうだ。原発の事故調査委員会の英語版報告書を読んでいた人もいたとのこと。
 さらに、それぞれに支持政党があるそうで、そのことを「エライね」とほめた時の返しがすばらしい。
 「えっ、日本では、選挙権を持ってから考えるんですか。それって、遅くないですか?」
 メディアについては、「NHKの会長(当時のMr.籾井)、あれで大丈夫ですか?」という、驚くべき質問もあったそうだ。ドイツでは、公共放送がたくさんあって、選択肢が豊富なことを大切にしているが、「日本は一つ。それもあんなに政府寄りで大丈夫か?」と、心配していただくことも。恐るべしドイツの若者たちよ。
 なぜこんなに質問できるのかを教師に尋ねたら、「ドイツはナチス・ヒットラーを生み出したことをとても恥じている。国民は、おかしいと感じながらも、まさかと思っていたら、結果、流されてしまった。だから、最後の1人になっても、周りと違っていても、自分の考えで、自分の意見をきちんと言えること、それだけを教育の目的としている」との答え。
 ドイツでは、過去に同胞が犯した取り返しのつかない大罪を二度と繰り返さないために、その歴史上の事実に向き合い続ける姿勢を教育の軸においている。それに引き換え、歴史を捻じ曲げ、なりふり構わず"あったことをなかったことにする"わが国の支配者層とそのエピゴーネンたちの、愚かで罪深きことか。
この番組と併せて「NNNドキュメント『お笑い芸人VS原発事故マコ&ケンの原発取材2000日』」(日本テレビ、2017年2月6日)もYouTubeでご覧いただきたい。ロクな報告書も書けない県議やそれを擁護する知事も見て、レポートを書くとよい。1400万円掛けぬとも、いい勉強ができるはず。
 そうそう、同じおしどりでも、みっともないおしどりも必見。

 

◆みっともないぞ、こっちのおしどり

 みっともない方のおしどりとは、安倍晋三と安倍昭恵、ご両人のこと。
 晋三氏が目の敵にする朝日新聞(3日)によれば、森友学園の籠池前理事長が財務省と交渉した際の音声データに、昭恵氏から「電話があった」とする籠池氏の発言が記録されていたことを問われて、彼女はこう言ったそうだ。
 「私が真実を知りたいって、本当に思います。何にも関わっていないんです」
 名誉校長を引き受け、お守り役の政府職員を通じた問い合わせという名の圧力をかけ、園児たちのメッセージに感涙で応えていた人が、この台詞。天然なの、それとも天然を装う悪人なの。あきえて、ものがいえない。
 データの存在を突きつけた日本共産党辰巳議員の確認要求に応じた晋三氏は、2日の衆院予算委員会で「妻に確認したところ、そのような電話はしていないということだった」と述べた。
 夫婦そろって、ここでも"あったことをなかったことにする"つもりのようだ。みっともない。
 真実を知りたいのは、こっちも同じ。ならば、出るところに出て、真実を明らかにすべし。
「地方の眼力」なめんなよ

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