(069)グローバル化の狭間で...文書の公と私2018年2月9日
先日、オセアニアのある国で本来は国が保管すべき文書が外部に売却された中古の棚の中から出てきて大騒ぎになったニュースが流れた。実は、文書の管理や申請手続きを正確に行うことは意外と難しい。中央官庁における文書担当課は大変な重要部門である。
それはさておき、わが国には「公文書等の管理に関する法律」(注1)というものがある。こうした法律があること自体、余り知られていないが、実は重要なことが書かれている。
例えば、第2条には「公文書等」として、「行政文書」、「法人文書」、「特定歴史公文書等」の3つが記されている。
「行政文書」とは、簡単に言えば、行政期間の職員が仕事で作るか取得した文書で、その行政機関が組織的に使用あるいは保有しているものである。これに対し、「法人文書」は、一見、民間企業の文書と思いがちだが、昨今増えてきた「独立行政法人等」の役職員が職務上作成し...同様に使用あるいは保有している文書である。また、「歴史公文書等」とは、歴史資料として重要な公文書その他の資料であり、これに「特定」がついた「特定歴史公文書等」になると、国立公文書館に移管されたものになる。
なお、行政機関や独立行政法人等が作成した文書でも、不特定多数の者に販売することを目的として発行した、官報、白書、新聞、雑誌、書籍等は「行政文書」や「法人文書」には含まれない。
正直、かなり面倒であるが、このルールを使いこなすのが官僚ということになる。
筆者も含め、現実には公文書と私文書という形で日常生活上は大まかな分類をしている。公文書は官公署が発行した文書であり、民間企業や個人が発行した文書は私文書と理解すれば良い。先に述べたように、例えば、中央官庁には大臣官房の中に文書課という課があり、地方自治体にも同様の課がある。筆者は大学に勤務しているが、宮城県庁における公立大学法人の窓口は「私学文書課」という。
※ ※ ※
さて、なぜ、このようなことを長々と書いてきたかというと、官僚ではない一般人でも文書の扱いは意外と神経を使うからだ。例えば、海外留学をする場合など、留学先の国に対するビザ申請において、受入先の証明書とともに、母国で罪を犯していない証明(犯罪経歴証明書)や、留学中に十分に授業料や生活資金があるかどうかの証明書(銀行残高証明書など)を求められることが普通である。
犯罪経歴証明書は各県の県警で申請できるが、資金の有無については口座のある銀行から発行してもらわなくてはならない。前者は公文書であるが、後者は私文書である。いずれも提出だけを求められる場合は簡単だが、その書類が本物かどうかを国が証明していること、そして日本にある留学先の国の大使館・領事館で領事認証を求められることがある。
領事認証を受ける場合には事前に外務省で証明を受けなければならず、これを公印確認という。また、相手国が領事認証を不要とする条約(ハーグ条約)締結国の場合には、アポスティーユという形で領事認証不要の証明を、これも外務省から受けることができる。
さて、いわゆる公文書の場合、それでもこうした手続きは比較的簡単だが、私文書の場合、実はここにたどり着くまでに、やっかいな手続きが存在する。私的な文書を国が認証することになるからだ。
極めて簡単に言えば、該当する私文書が本物であることを誰かが宣誓・署名し、それを公証人が認めて押印し、その上で法務局長がその押印を証明したものを持って、初めて国の証明を受けることができる。
筆者も何年か前に、この手続きを全て自分で実施したが、結構時間を使った記憶がある。現在では業務を代行してくれるところも多いため、以前でよりは楽になったと思うが、それでも手間と一定の費用はかかる。
※ ※ ※
さて、グローバル化が進んだ場合、こうした各国間での様々な文書のやり取りや認証はどうなるのだろうか? 正直なところ考えたくもない。似て異なるが、国際入札などの場合には、現在でもこうした山のような書類整備業務を淡々とこなした上でなくては先へ進まない。これは慣れた人には単純作業でも多くの一般人にとっては大変な作業であろう。
紙のサイズはようやくB版からA版が普通となったようだが、文書手続きは今後もいろいろな手間が残りそうだ。
注1:「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号)
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