新潟コシ 先物市場でストップ高2018年2月20日
2月16日、大阪堂島商品取引所のコメ先物市場「新潟コシ」の4月限が前日比400円高のストップ高になり1万6890円まで値を上げた。
新潟コシ先物市場で2018年4月限の売買が始まったのは昨年、2017年4月21日である。この時の発会価格は1万4220円であったので、現在の価格は2670円、率にして18.7%も値上がりしたことになる。なぜこれほどまでに値上がりするのか? 当然、米穀業者の集まりでも話題になる。「作況が12ポイントも落ち込んだのだから足りなくなるわな」という見方に集約される。
新潟県の28年産米作況指数は108の豊作であったが、29年産は一転して作況96のやや不良になっている。生産量は28年産が68万8600tであったが29年産は61万1700tと7万7000tも減少した。生産量には品種別の生産量は出ていないので、それを知るには検査数量を見るしかないが、29年産新潟コシヒカリの検査数量は12月末現在で26万8127tになっている。28年産米の検査数量に比べると9万3070t、率にして25.7%も少ない数量しか積み上がっていない。家庭用精米の売れ筋ナンバー1は新潟コシヒカリであり、量販店等のPOSデータから推計した産地銘柄別のシェアは10.7%で、年間必要量は39万tと見込まれるため現在の検査数量はこれを大幅に下回っている。
このため消費地の卸等は確実に新潟コシヒカリが買える先物市場で買いを入れ、納会で現物を受けるという手段をとり、これが価格上昇の最大の要因になっている。納会まで待ちきれない業者は「合意早受け制度」を活用して納会前に現物を手に入れる手段を取る。
実際、2月16日には2月19日渡しで8枚(200俵)の合意早受け渡しが成立している。
表は新潟コシの2月16日の取引結果と出来値を示したものだが、期近限月が高く期先限月が安いという当先が逆ザヤになっている。この要因は、現在現物市場では新潟コシヒカリが逼迫しているが30年産が収穫できる10月限以降は新米が出回るので安くなるという価格形成がなされている。新潟の生産者は新米コシヒカリの価格がわかり先物市場に売りヘッジすることで所得が確定できるため「こんなありがたい市場はない」と言っている。
平成30年産から生産数量目標の配分がなされなくなった。この意味は「生産カルテルの廃止」である。生産カルテルが廃止されるとまさに自由に生産できるわけで、その分、価格変動リスクが増大する。価格リスクをカバーするには先物市場で売りヘッジするしかない。これから作付するコメがいくらで売れるのかわからないのに作ることこそが最大のリスクである。
アメリカの大学では学生に農産物の価格変動リスクに備える手段を教える。その手段の一つにベーシス取引と言うものがある。教科書の厚さは10cmほどもあるが、そう難しく捉える必要はない。要は価格差を応用したリスクヘッジの手段だと思えばよい。格差は「時間」「空間」「品質」の3つによって発生する。コメでは、現物を1年間保管すると金利や保管料が掛かる。これが時間で、新潟から東京に運ぶと運送費が掛かる。これが空間。古米になると新古格差が生じる。これが品位格差で、もちろん銘柄間格差もそれに類する。この3つを組み合わせることによって価格変動のリスクを最小限に抑えることができる。反対にこれを活用することによって利ザヤを稼げる。
単純な例では表にあるように新潟コシヒカリの2月限と4月限では250円の順ザヤになっている。(表の後場第3節の価格を参照)2ヵ月間の金利、保管料が200円で済むなら、2月限を買って4月限を売れば50円の利益が得られる。こうした鞘取りのプロは戦前のコメ卸の中には何人もいた。
現在、ベーシス取引を活用してコメ先物市場で最も建玉を持っているのが外資系の商社である。この商社、秋田の農協からあきたこまちの30年産を事前契約して先物市場の東京コメに売りつなぐという芸当をやる。普通に考えると逆ザヤになり、そうしたことはできないはずだが、ベーシス取引によりそれが可能になる。堂島取は武道館でも借り切ってコメの生産者の参加を得て、この商社にベーシス取引のやり方について講演会を開催したらどうか。
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