(073)米国から見た農産物輸出市場としての日本2018年3月9日
2018年2月22日、米国農務省は2018会計年度(10~9月)における農産物貿易の見通しを公表した。前回の見通し(昨年11月)を多少修正したものである(注2)。
年間の農産物輸出(注1)は1395億ドル(14兆7870億円、1ドル=106円で換算。以下、同じ)、農産物輸入は約1185億ドル(12兆5610億円)である。輸出入の差は210億ドル(2兆2260億円)の輸出超過という形になっている。
表1は、2012年以降の米国の農産物輸出の推移を示したものである。少なくとも、ここ数年、総額としては大きな変化は見られない。
参考までにわが国の直近の数字を見ると、農林水産省が2018年2月9日に公表(注3)しており、輸出が8073億円、輸入が9兆3692億円である。輸出が8000億円の大台に到達したことは喜ばしいことだが、依然としてわが国は輸入が輸出の10倍以上ある構造には変わりがない。
※ ※ ※
さて、話を米国に戻すと、約1400億ドルの輸出が世界のどこに向かっているかを理解しておくことが重要である。言い換えれば、現在の米国にとって、世界の誰が(どこが)農産物輸出の顧客なのかということだ。その内容を示したものが表2である。
2017年の実績で見た場合、全体の45%がアジア、38%が南北アメリカ、9%がヨーロッパと、地域別にはこれで全体の92%を占めている。2018年度の見通しでもこの割合はほぼ同様である。つまり、米国産農産物の最大の顧客はアジア、そして南北アメリカの米国以外の国々(カナダ・メキシコが中心)ということがわかる。
アジア向け農産物輸出総額634億ドルは同じ為替レートで試算すると6兆7204億円になる。約7兆円と考えると、嫌な言い方だが、日本の農業総算出額(2016年で9兆2025億円)に近い水準になりつつあると理解した方が良いのかもしれない。
また、アジア向け輸出の76%は東アジア向けであり、東アジア向け輸出の45%を中国が占めている。日本は東アジア向け輸出の25%である。要は、中国と日本で米国の東アジア向け農産物輸出の7割を占めているということだ。
※ ※ ※
さて、2018年の見通しを踏まえるとどうなるか(表3)。
地域別には大きな変化はないが、内容が微妙に異なる。国別に見ると、米国にとって最大の顧客である中国とカナダ、メキシコの3か国、特に中国へのシフトが益々強くなる。中国は2007年の16%から2018年には22%へと増加見込である。カナダとメキシコはシェアで見た場合、日本と同様大きな変化はない。
その結果、2017年には上位3か国(中国・カナダ・メキシコ)の合計シェアが米国の農産物輸出の43%であったものが、2018年には51%へと上昇する。これに日本の8%を加えれば、全体の約6割となる。
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以上を踏まえ、最後に日本のポジションを、あくまでも米国から見た農産物輸出の金額という視点のみで簡単にコメントすると、輸出見通しの115億ドルは、中国・カナダ・メキシコに次ぐポジションだということになる。日本と同規模のポジションとしてはEU-28か国(118億ドル)、東南アジア諸国(合計が114億ドル)ということになる。
我々は、どうしても日本を中心にしてモノを考えてしまう傾向が強いが、「外から見た日本」のポジションも常に意識しておく必要があることは言うまでもない。
注1:ここで米国の数字については「農林水産物」ではなく「農産物」という表現を用いているが、その理由は、対象が穀物・飼料、油糧種子・関連製品、畜産物、綿花、種子、野菜・果樹等の園芸作物・その加工食品、砂糖・熱帯作物等に限定しているためである。
注2:米国農務省経済調査局、"OutlookforU.S.AgriculturalTrade",February22,2018.(2018年3月7日確認)
注3:農林水産省「農林水産物輸出入情報」、2018年2月9日 (2018年3月7日確認)
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