【読書の楽しみ】第24回2018年3月18日
◎中島岳志
『保守と立憲』
(スタンド・ブックス、1944円)
保守とリベラルは相反すると考えられがちですが、本書が言うように本来の保守はそもそもリベラルであり、革新ほどリベラルのように新聞が書くのはおかしな話です。
保守とは進歩に反対する後ろ向き勢力のように思いがちですが、そんなことはありません。本来の保守は人間の能力を過信することなく、自分が間違っていて相手が正しいのかもしれないと考える。そして歴史の分厚い流れ(ご都合主義の一時的歴史ではなく)にこそ学ぶべきであって、だから改革はゆっくりとしたものでなければならない、という立場に立つのだそうです。著者によれば。
ということで安倍政権による解釈改憲や集団的自衛権のような立憲主義を否定する政治的立場を本書は徹底的に否定します。そして「リベラル保守」を称揚してやみません。
では本来のリベラルとは。端的に言うと多数派が少数派の声に謙虚に耳を傾けることだとか。つまり寛容な立場ということです。多様化の時代にこれこそ重要な政治姿勢で、保革を問わずできないはずはない理屈です。
リベラル保守を標榜して予想外の議席を獲得した立憲民主党の枝野幸男代表との対談も面白く、短い評論集なので読みやすい。大いに勉強になりました。
◎岡崎守恭
『自民党秘史』
(講談社現代新書、864円)
表紙に田中角栄、金丸信、竹下登、中曽根康弘の写真が並び、帯に「あの頃の政治家たちは良くも悪くも器が違ったなぁ...」とあります。
国会や議員会館だけでなく、東京の自宅(だから夫人がよく登場する)や地元、料亭やゴルフ場など、さまざまな場所における政治家の生態と発言をつづった本書は、ベテランジャーナリストの手になるだけあって、どの政治家も生き生きとしていて、エピソード一つひとつが実に面白い。
欠点の多い彼らの人間性が政治を左右してきたことを知って嫌味がないのは、成長期だったことも影響しているのでしょうか。今、政治家の器が小さく感じられるのは社会、つまり選挙民の反映なのかもしれません。
というよりも小選挙区制が政治家の幅を減らしてしまったのではないか。政治に多様性が失われていることはイコール政治の貧弱であるような気がしてなりません。一気に読める抜群の面白さですが同時に現下の政治を考えてみる良い材料になると感じました。
◎宮下奈都
『羊と鋼の森』
(文春文庫、702円)
ピアノの調律師である感受性豊かな若者の成長物語です。鋼はピアノの弦のこと、その弦を叩くハンマーのフェルトは羊毛から作られ、「森」は、ピアノに使われている松の木の森に分け入っていくイメージだそうです。
とはいえ調律はあくまで道具立て。先輩調律師たちはみな個性的だし、調律を依頼する双子の高校生姉妹が物語を引き締める。音と心を楽しむ小説と言っていいでしょう。
主人公はクラシックにさほど興味がなく、ピアノは弾けず絶対音感もない。それが親近感を抱かせますし、思わせぶりなところのない静謐な筆致も好ましく、裏方である調律師が身近に感じられるようになりました。
実はこの本、2016年に本屋大賞を受賞しています。つまり全国の書店員が「いちばん売りたい本」に選んだ本です。それが文庫化されたので、まだお読みでない方はこの機会にどうかと。映画化され6月に公開される予定だそうです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日