対照的なあきたこまちとコシヒカリの値動き2018年3月20日
先週末、米穀業者の席上取引会が都内で開催された。コメの席上取引とはどのようなものかと言うと、この会の場合、広めの会議室に四角形のテーブルを組み、20名から30名ほどが座り、前方に場立ちを一人立て、ホワイトボードに売り買いの産地・銘柄、年産、等級、俵数、条件(持込か置場か、引き取り期限)、名乗りを上げた業者名を書き込んで、場立ちが競って成約に結び付けるという取引手法である。言って見れば昔ながらの取引手法でコメの値段を決めているわけだが、売り買いの最中に様々な条件をやり取りしなければならないので、席上取引会は各地で同じような手法で行われている。同じ場所に大勢の米穀業者が集まってこうした席上取引会を開催しているメリットはそこで実際に商取引が成立するということはもちろんだが、情報収集の場になっていることや売り手買い手の唱えでコメ相場の動向が肌で感じられることも大きなメリットになっている。
その取引会で4件1200俵が成約した。成約価格は茨城あきたこまち1等置場1万4450円、群馬雑未検持込1万3800円、千葉コシヒカリ1等置場1万5450円、栃木コシヒカリ1等置場1万5500円。関東産ではあきたこまちとコシヒカリはちょうど1000円の格差が生じている。
その前の週に開催された日本コメ市場の取引会には85卸109名が参加、上場銘柄は75産地5,556t(前回比133.3%)、上場平均価格は60kg当たり1万5283円(同101.0%)。主要銘柄の上場加重平均価格は、北海道ななつぼし1万5727円(前回比114円安)、東北ひとめぼれ1万5366円(同3円安)、東北あきたこまち1万5792円(同37円安)、関東コシヒカリ1万5870円(同455円高)、新潟一般コシヒカリ1万7175円(同593円高)となっており、コシヒカリが値上がり、その他銘柄が値下がりした。この価格は東京着価格で統一してあり、この時点で東北あきたこまちと関東コシヒカリの価格が逆転している。この東北あきたこまちと関東コシヒカリの価格逆転劇をどう見れば良いのか?
農水省のマンスリーリポート最新号に29年産米の産地銘柄別の集荷・契約・販売状況が詳しく出ている。それによると今年1月末現在で秋田県産あきたこまちは18万7400t集荷され、この内12万500tが契約済み(集荷量対比64%)、販売数量は5万8600t(同31%)になっている。前年同期の比較では集荷量は9%少ないが、契約数量は前年並み、販売数量は11%減。集荷数量は落ち込んだが、契約数量は前年並みまで積み上がった。ただ、販売進度は停滞しているという内容。千葉県産コシヒカリは3万5200tが集荷され、この内3万600tが契約済み(集荷対比87%)、販売数量は1万8400t(同52%)になっている。前年同期の比較では集荷量は18%少なく、契約数量も20%少ないが、販売進度は3%減に留まっている。茨城県産コシヒカリは5万200t集荷され、この内3万7600tが契約済み(集荷量対比75%)、販売数量は1万7800t(同35%)になっている。前年同期の比較では集荷量は12%少なく、契約数量も24%少ないが、販売進度は6%減に留まっている。栃木県産コシヒカリは9万9400tが集荷され、この内6万9900tが契約済み(集荷量対比70%)、販売数量は1万7300t(同17%)、前年同期の比較では集荷量は17%少なく、契約数量も18%少ないが、販売数量は10%減に留まっている。このデータから読み取れることは秋田あきたこまちも関東コシヒカリも集荷数量は落ち込んだが、販売進度はコシヒカリの方が進んでおり、市中の浮動玉が薄くなった結果、実勢相場の価格上昇を招いているということである。
別表は米穀機構が作成した量販店での主要銘柄の販売価格と販売量をグラフ化したものである。縦線が1kg精米当たりの価格で横線が販売比率(1000人当たりの購入比率)を現している。一番右にあるのが新潟コシヒカリで約12%の比率がある。次が秋田あきたこまち、北海道ななつぼしと続いており、売れ筋の御三家になっている。ただし、ベストテンの中に茨城コシヒカリ(第6位)と栃木コシヒカリ(第8位)が入っている。秋田あきたこまちと茨城、栃木のコシヒカリが違う点は、秋田あきたこまちは業務用には12%しか仕向けられていないのに対して茨城コシヒカリは38%、栃木コシヒカリに至っては51%も業務用に供給されていることで、その分逼迫感が増している。
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