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一般大学の農業講義 教養の必須科目に2018年4月19日

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【川又啓蔵・茨城大学客員研究員】

 この4月から、茨城県内の私立大学で講師を務めている。同大学から声を掛けられた当初、同県内にある茨城大学の客員研究員として農業経済論や農協等について勉強させていただいているため、その分野での講義かと思った。しかし要請のあった分野は、東日本大震災と福島原発事故による被災・避難、そしてラジオパーソナリティーとして報道に携わっている経験を踏まえ、災害と人間の関わりについて、前後期各15コマ、計30コマを通年で講義するものだった。
 この私立大学は文系や看護系など4学部で構成されており、筆者が客員研究員として籍を置く大学と違い、農学部は無いが食物栄養系の学科はある。地方都市にみられる「イマドキの大学」であり、学生の多くは地元住民の子どもたちで、卒業生の多くは茨城県内に「地元就職」している。もちろん大学が公表している就職先情報には、「複合サービス事業」という業種分類で同県内にある3農協が表示されている。
 近年、教育現場のIT化は急速に進んでおり、講義内容一覧(シラバス)の入力閲覧、履修登録、出欠管理、課題(レポート)の提出など、筆者が大学生だった約25年前のように、冊子やプリント類など「紙モノに溢れた時代」とは大違いである。
 4月13日(金)、今年度前期最初の講義を行った。日ごろ行っているラジオの情報生番組は数時間単位で、90分間の授業を話すことに違和感は無いものの、曲、CM、ニュースや交通情報などを挟まない「連続一人しゃべり」を1年間続けることは、それなりに大変ことだと感じた。さらに、放送とは違い、話したことへの反応が目の前にいる学生の様子から伝わってくることに内心ハラハラさせられた。
 ところで、今般の講義内容は別として、農学系学部等を持たないこの大学で農業や農協分野(以下、「農業等分野」という)についてどのような教育がされているのか調べてみたくなり、前述のような「IT化」を活用してシラバスの内容についてキーワード検索をしてみると、農業で9科目がヒットし、農協では0科目だった。
 その7科目の中身をみたが、いずれも各科目の中で教えられることの一つのテーマでしかない。授業でテーマとなる回数は、各期15回のうち、3回が最多で1科目、他6科目は1回だった。内容はいずれも概論的であり、農業等分野の現状について深く学ぶものではなく、地域と農業等分野の関わりについて十分理解できるようなものでもないようだ。
 この大学の所在地は、都道府県中第2位の農業産出額を有する「茨城県」であるが、学生たちと話してみたところ、「農業が盛んだ」と感じている程度で、その順位までは知らず、「自分たちには関係ない話」という反応がほとんどである。このように農業等分野は、大地や食、そして地域に関わる「重要な社会的知識」であるにもかかわらず、非農学分野では「教えなければならないこと」として十分に認知されていないのではないか。
 農業・農協改革の風が吹いて久しい中、大きな問題点の一つとして、世論(側)から「農業・農協の常識は世間の非常識」を突き付けられ、農業側からは「世論(側)の無理解や無知識が原因」という声が上がっている。従来からこの問題点について、解決や双方の歩み寄りは難しいと思っていたが、今回、非農学分野の大学や学生たちと接する中で、より強いものになった。
 その半面、世論と農業の両側が「共有できる知識や考え方」さえ持つことができれば、状況を改善できる可能性があるのではないかとも感じた。そのためにも、大学等の教育機関に対し、農業側から教養としての農業等分野科目の開講について「強い売り込み」が必要なのではないか。
 そうした「売り込み」であるかどうかは別として、すでに、大学等教育機関において、農協や連合会などによる寄附講座等が行われていることは承知している。しかし、その多くは農学系分野の学部・学科向けや就職対策講座等で、非農学分野における教養としてのプログラムとは考え難いようにみえる。極端かもしれないが、「必修教養科目」への格上げを狙うぐらいのアプローチも必要だろう。
 近年、産直、農業の6次産業化、グリーンツーリズムなどが盛んに行われている。しかし、にわか仕立ての取り組みで一時的な関心を得ることはできても、互いが「共有できる知識や考え方」が無い以上、前記したような問題点の解決にはならない。

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