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(079)GEに見る企業の盛衰:3人の胸中は...2018年4月20日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 ある説によると企業の寿命は約30年というが、日本には何百年も続く「老舗」が数多く存在する。世界の大企業ではどうか。ゼネラル・エレクトリック(GE)という会社の歴史は、現代史と照らし合わせてみると興味深い(注1)。

 小学生の頃、多くの人は「発明王」として名高いトーマス・エジソンの伝記を読んだ記憶があると思う。エジソンが蓄音機や白熱電球など、現代文明の発展と生活の利便性向上に必要欠くべからざる数多くの発明をしたことは良く知られている。
 1877(明治10)年、日本の西南戦争の年に蓄音機を実用化した31歳のエジソンが、翌1878(明治11)年に作った会社がエジソン・ゼネラル・エレクトリック・カンパニーである。1892(明治25)年、別会社と合併し、社名から「エジソン」の名前が消え、現在に至るゼネラル・エレクトリック・カンパニーとなる。
 日本ではその2年前、1890(明治23)年に元老院が廃止され、第1回帝国議会が開催、南アフリカではセシル・ローズがケープ植民地政府の首相になり「3C政策」を、米国では現在まで残る反トラスト法(シャーマン法)が成立している。
 さて、米国の株価指標として広く知られているダウ平均株価が初めて登場したのは1896(明治29)年である。この前年、日清戦争の講和として締結された下関条約にロシア・ドイツ・フランスが遼東半島を清に返還することを求めた三国干渉が行われている。GEはこのダウ平均株価にスタートから現在まで継続して残っている唯一の企業であるようだ。
 筆者が興味深く見たのは、1904(明治37)年の記述である。中学の歴史で言えば日露戦争の年、GEは東京電気という会社の株式を51%取得、特許をライセンス提供し、役員を派遣している。さらに5年後の1909(明治42)年には芝浦製作所の株式を24.8%取得し、東京電気と同様の対応をしている。
 その後もGE関連の数々の特許は日本ではこの2社が特許出願している。2社は1939(昭和14)年には東京電気無線、1945(昭和20)年には東京芝浦電気となる。言うまでもなく、現在の東芝である。
 この間、やや時代が戻るが1919(大正8)年には、GE、AT&T、ウェスチングハウス(WH)の3社が共同出資により無線電信の開発者として知られているイタリアの発明家グリエルモ・マルコーニが創立したマルコーニ無線電信会社の米国支社を買収し、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(RCA)を設立している。

  *  *  *

 さて、戦後、日本での活動を再開したGEは、1959年にはメインフレームと呼ばれる大型コンピュータ事業に参入したものの1970年には撤退している。
 1981年、有名なジャック・ウェルチがCEO(最高経営責任者)に就任し、分野1位か2位以外は撤退という大胆な改革が始まる。1986年には経営不振のRCAを買収、これは当時最大規模の買収と呼ばれたが、レコードや電化製品部門は後に売却している。
 GEは、1990年代の日本で、子会社のGEキャピタルを通じ複数の中小信販企業を買収して信販事業に参入するとともに消費者金融事業にも進出している。良く知られたところでは、1998年、経営危機に陥っていた東邦生命と米国GEキャピタルが提携し、GEエジソン生命保険を設立している。発明王エジソンの名前がいきなり生命保険会社の名前として登場し、「何だこれは?」と意外に思った人も多いのではないだろうか。
 2001年、ジャック・ウェルチが引退。2004年には米国GEキャピタルがGEエジソン生命保険の株式を、現在でも海外旅行保険で有名な米系のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)に売却し日本での保険事業から撤退、エジソンの名前はAIGエジソン生命保険となる。さらに2012年、経営破綻した協栄生命保険の事業を継承する形で業務を開始したジブラルタ生命(これは米系プルデンシャル・グループの傘下)がAIGエジソン生命保険を吸収し、エジソンの名前は再び偉人伝の中に戻る。
 さて、その後もGEは様々な分野で買収・売却・再編を続け、事業の絞り込みを実施している。近年では、「電力、航空機、ヘルスケア」をコアにした組織体に転換を目指しているようだ。
 それにしても、東芝。同社の経営破綻はWHの買収に始まると言われて久しいが、GEとの関係が極めて強かった東芝がなぜWHを買収したのか、報道されている様々な理由は今でもしっくりこない。いうまでもなく、WHはエジソンと同様、米国産業史の中でも著名は発明家ジョージ・ウェスティングハウスが事業化し大成功したかつての総合電機メーカーであり、GEのライバル企業でもある。その事業の多角化は、一方では3大ネットワークの1つCBS(現在のバイアコム)となり、他方では1950年代以降、原子力発電へと向かったことはよく知られている。
 米国の創業者であるトーマスとジョージ、さらにからくり人形や和時計を発明した田中製造所(後の芝浦製作所)創業者である田中久重は、GEとWH、GEと東芝、そして東芝とWH、これら3者(社)の現在の顛末をどう見ているのだろうか。
 
注1:以下、年代と出典はwikipedia(2018年4月14日参照)による。通常、筆者達大学教員はwikipediaを出典には使用しないが、本稿はコラムであるため活用することをお断りしておきたい。

 

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